マーケティングには、優れたコンテンツが不可欠です。どんなに素晴らしい広告も、メディアの魅力的で有益なコンテンツ無しには見てもらうことができません。消費者はいつの時代も広告ではなくコンテンツを求めています。
しかし、今や企業はデジタルを通じて消費者に直接コンテンツを届けることができるようになりました。メディアに依存せずに、消費者との直接的な関係の構築・維持が可能なのです。
マーケティング施策の現在
現代の消費者は自分のニーズに合ったコンテンツを無数のチャネルから積極的に収集し、多くのデジタルコンテンツを消費します。企業が効果的にターゲットにリーチするためには、メディアに広告を載せるだけでなく、自らコンテンツを作り発信していかなければなりません。これには立ち上げ時に多くの企業努力を必要とし、投資をメディアから人員、制作、そして配信へと切り替える必要があります。しかし、その投資対効果は通常のマーケティング施策とは異なり、時間とともに累積的に改善するため、対応が急がれています。
大企業のマーケターもソーシャルメディアの効果を最大化するために、積極的にマーケティング予算をコンテンツへとシフトさせています。アメリカでは既にB2Bマーケティング予算の26%がコンテンツに投資されているといいます。また、コカコーラなどの世界的な企業もコンテンツマーケティングへの本格的なシフトを発表しています。しかし、コンテンツマーケティングに必要とされるのは大きなメディア予算ではなくクリエイティビティであるため、このような企業にとっても大きな挑戦であることは違いありません。
コンテンツマーケティングを行うために
コンテンツマーケティングは従来のマーケティング施策とは異なり、「売る」のが目的なのではありません。有益なコンテンツを無料で提供し続けることで、より多くの潜在顧客との関係を構築し、維持するのがゴールなのです。このため、現代のマーケターは新商品の発売時だけでなく、常にコンテンツを作り、配信し続ける編集者のような立場へとシフトする必要があります。コンテンツを通じてターゲットを教育し、信頼を獲得すること。様々なニーズに応え、リーチを広げ、リードを獲得すること。そして、関係を構築した消費者とエンゲージメントを続けていくこと。コンテンツオーサリングの力は、これからのマーケターにとって不可欠なものとなるはずです。
消費者自らが求め、消費するコンテンツはブランドにも大きな影響を与えます。優れたコンテンツはストーリーを伝え、ブランドイメージを表現し、競合との差別化を実現し、消費者の記憶に留まるのです。ブランドがコンテンツマーケティングを成功させるためには一般的なコンテンツを配信していてはなりません。有益であり、人に伝えたくなるブランド独自のものが必要です。
コンテンツの作り方
では、ブランドはどのようにコンテンツをつくり、配信すれば良いのでしょうか?
6つのステップに分けて考えてみましょう。
1.ターゲットユーザーを知る
有益なコンテンツは誰かが何かを学んだり、活用したり、楽しむことができるものです。対象となる相手を知らなければそれを実現することはできません。潜在顧客の中でも最も一般的なユーザー像を定義し、抱えている問題や、一番必要としているもの、積極的に求めているもの、重要なトレンドなどをリストアップします。利用しているSNS、読んでいるブログ、いいね!をしているページなどのインターネット上での行動を定義します。そのターゲットユーザーが商品を購入する前に一番調べることは何であり、どのように商品を購入し、他人へ勧める購買行動も定義します。
既にコンテンツが豊富なWebサイトが存在すれば、ユーザーの行動から、求められるコンテンツやその効果を知ることができます。ターゲットユーザーの特性を詳細に定めることで、効果的なコンテンツの制作や配信はより簡単になります。
2.コンセプトを決める
ブランドが配信するコンテンツは消費者が抱くブランドイメージに大きな影響を与えるため、一貫したコンセプトが必要となります。単にユーザーのニーズに応えるだけでなく、ブランドの価値観や理念に共感できるものであれば、一つ一つのコンテンツの積み重ねがユーザーとの関係をより強固なものにします。
ブランドはユーザーのニーズを解決することで、どのように社会に貢献しようとしているのでしょうか。また、ブランドが掲げる理想は何であり、コンテンツの配信はどのようにその理想の実現に役立つのでしょうか。ブランドの本質的な部分をコンテンツのコンセプトとすることで、ブランドを強化することができます。
これには、中小企業のビジネスに役立つコンテンツを配信するアメリカンエクスプレスのOpen Forumや、より良い住環境作りに役立つコンテンツを配信するP&GのHome Made Simpleなどはブランドを強化するコンテンツマーケティングの良い事例です。他にもファッションを楽しむKate SpadeのブログやMr. Porterのエディトリアルコンテンツ、アスリートやアクティビストが情報を発信するPatagoniaのThe Cleanest Lineなどたくさんの優れた事例が存在します。
3.トーン&マナーを決める
ブランドが配信するコンテンツはその内容だけでなく、トーン&マナーもブランドのパーソナリティにマッチする必要があります。独自性を表現し、競合との差別化を実現するために、すべてのグラフィックやテキストのトーン&マナーを事前にキーワードで定義します。
4.コンテンツを精査する
ターゲットユーザーやコンセプト、トーン&マナーを決めてもすぐに新しいコンテンツをつくるべきではありません。まずは社内にある既存のコンテンツを収集し、活用できるものを選定します。過去数年に制作されたコンテンツをすべて集め、それぞれの種類、目的、内容、ターゲット、反響などをスプレッドシートにまとめます。この際に新規に必要となるコンテンツもリストアップしましょう。
既存のコンテンツを精査することによってターゲットユーザーのニーズに応え、ブランドを伝えるために必要な新規のコンテンツや、編集、制作作業などが明確になります。
5.コンテンツを分類する
コンテンツマーケティングには主に3種類のコンテンツが存在します。ターゲットユーザーを集客するコンテンツ(アクイジション)、メールアドレスやソーシャルメディアでのフォローを獲得するコンテンツ(コンバージョン)、そして、継続的なエンゲージメントを獲得するコンテンツ(リテンション)。コンテンツの内容によって、適した目的に分類し、フォーマットや配信方法などを設定します。
- アクイジション:ブログ記事、ランディングページなど
- コンバージョン:e-Bookなどのダウンロード可能なコンテンツ
- リテンション:メールマガジン、ソーシャルメディア投稿
6.スケジュールを立てる
コンテンツマーケティングは単にコンテンツの配信頻度よりも、その品質や独自性を重視すべきです。しかし、マーケティング活動であるため、数値的な目標は必ず存在し、定期的な配信は必要です。
目標のリーチ数やレスポンス数などから逆算し、発信すべきコンテンツの量と頻度を設定しましょう。スプレッドシートなどでスケジュールを引き、いつ、何のコンテンツを、どのフォーマットで、誰に向けて配信するかを最低でも向こう3ヶ月以上設定しましょう。
まとめ
6つのポイントを詳細に記しましたが、簡単にまとめるとこのようになります。
- ターゲットを詳細に定め、ニーズを理解する。
- ブランドの価値観や理念からコンテンツのコンセプトを決める。
- ブランドに適したトーン&マナーを決める。
- 既存のコンテンツを精査し、必要な施策をまとめる。
- コンテンツを適したチャネル毎に分類する。
- そして、コンテンツの制作と配信のスケジュールを立てる。
もちろん、コンテンツの制作だけで成功する訳ではありませんが、これらのポイントを守ればコンテンツマーケティングの効果は実感できるはずです。重要なことは自らの力でコンテンツをつくり始めることです。
ソーシャルメディアやデジタルマーケティングが直近の課題であっても、何を伝えれば良いかがわからず、ネガティブな反応を恐れ、消極的なブランドは多く存在します。しかし、コンテンツマーケティングへの積極的な取り組みを躊躇する間に、現実に消費者とのつながりは薄れていきます。
ブランドにとって、いち早くコンテンツマーケティングに取り組むことは必ずブランドの強化につながるのです。