サジェストについて
前回は検索の改善の具体例として0件ヒットについて触れてみました。今回はサジェストを取り上げます。
私がサジェストというものを初めて目にしたのはGoogleサジェストだったと思います。ほとんどの人がそうかもしれません。調べてみたら、2005年に日本語のGoogleサジェストが登場していました。思ったより最近だったんですね。
それから月日が経ち、いまや検索のサジェストというのはかなりのサイトで導入されています。そしてそれ以上に、まだサジェストが導入されていないサイトがあります。
サジェストというのは便利なものです。最初の数文字を入力すれば、前方一致でマッチする入力キーワードの候補や、そのワードと組み合わせられやすい複数ワードの候補などが表示されます。そしてサジェストは、今さらなる進化を遂げようとしているところでもあります。
検索におけるサジェストの本質
元々サジェストは「提案」という意味です。最初の数文字から、候補となるキーワードを提案しているということです。でも考えてみると、サジェストも実は検索に他ならないのです。実際の検索エンジンでは、サジェストは検索の一パターンとして実装されています。考えてみれば検索結果自体が「提案」だからです。とくにECではその意味合いが強くなります。
サジェストはユーザとの対話の最初のインターフェース
ECにおけるサジェストの重要な点は、そこが商品検索において最初にユーザに「何かを表示する」タイミングであるということです。旅行のようにあまりキーワードを入力しないタイプの検索ではまた話は別なので、あくまでもキーワード入力を伴うような商品検索において、ですが。
言い換えるとサジェストは「最初にユーザとECサイトが『対話』する」インターフェースであるということです。
この連載のタイトルは「ECの成長の鍵は検索にあり~あなたのサイトにもネットコンシェルジュを」というものですが、コンシェルジュにとって重要なのは対話です。一番最初に対話するインターフェースであるサジェストは、コンシェルジュという視点でも重要なものであると言えます。
進化するサジェスト
ちょっと前置きがくどくなりました。
サジェストがどう進化を遂げようとしているかについて触れてみたいと思います。まず、これからのサジェストは「前方一致によるキーワード候補の表示にとどまらない」ような進化をしていきます。GoogleのSAYT(Search as you Type=入力逐次検索)は文字が入力されるごとに検索結果画面自体をクルクルと変えていきますがこれも同じです。たとえば「前方一致しないキーワードを候補として表示する」ケースなどが挙げられます。
もちろん部分一致や後方一致などもそうですが、マッチしていないキーワードを表示することすら、有用なケースがあります。
すぐに思いつくのが「親子関係にある候補の表示」です。サジェストされるキーワードが商品名であれば、その商品のカテゴリ自体をサジェストボックスの中に出してしまうというようなパターンです。
ECモールにおいて、「ドライバ」と入力(もしくは「ドラ」や「ドライ」)された時点で、前方一致である「ドライバー」をサジェスト表示するのは当然として、その下に「カテゴリ:工具」や「カテゴリ:スポーツ→ゴルフ」というような表示をするケースです。
また、キーワードとカテゴリを分離して表示せずに、キーワード&カテゴリの組み合わせで表示するというパターンも考えられます。ドライバー[工具]とドライバー[スポーツ→ゴルフ]を併記してしまうということです。
他にも、書籍名を入力しようとしているときに、その著者の作品一覧ページをサジェストするというのも有効かもしれません。たとえば「うぶめ」と入れたら『姑獲鳥の夏』だけではなく「著者:京極夏彦」をサジェストするというようなものです。おおむねにおいて、「サジェストする商品を含むような何か」を併せてサジェストするのは、有効であるケースが多いと思います。
これが親子関係ではなく兄弟関係(たとえばドライバーにたいしてペンチなど)は、そこまで有効なケースは少ないかもしれません。兄弟関係(相関関係といってもいいですが)にあるものは、その商品がカートに追加された時点で表示するほうが親切、もしくは購入ページに同時購入リンクを出すほうが適切なケースが多いように思います。
その他、「キーワードや商品名以外の情報を表示する」というのも今後のサジェストで有効となる機能です。たとえばヒット数や在庫数をサジェストしたキーワード(商品)に併記すると、ヒット数が少なかったり在庫切れの商品への誘導を防ぐことが期待できそうです。
もし前方一致でマッチする商品がすべて在庫切れであれば、代替候補の商品を(キーワードマッチしていないですが)表示することが有効かもしれません。
サジェストの挙動はコンシェルジュの対応と同じ
このように、サジェストの挙動というのは、この連載を通して解説する検索のロジック(コンシェルジュ的挙動)と同質のものであることがわかります。しかも検索結果より先にユーザに表示されるという特徴があります。極端なことを言えばサジェストボックスに検索結果が出ても良いケースすらあるでしょう(その実装パターンの一つがSAYTであるともいえます)。
自然検索においてよりも、ECでの商品検索においてのほうが、サジェストを工夫する余地というのは大きいでしょう。ゼロスタートの提供するEC向け検索エンジン「ZERO-ZONE Search」でも、サジェストのロジックチューニングをするケースが増えてきています。これから注目のホットな分野の1つであることは間違いありません。
今回は検索改善の具体例の続きとして、サジェストについて触れてみました。次回以降も実例を挙げながら解説をしていく予定です。