低予算でも効果を得るためです。
ここで、具体的な企業のバナー広告活用事例として、「エイチ・アイ・エス」のバナー広告戦略を紹介します。
エイチ・アイ・エスでは、新商品やフェアの告知の際にYahoo! JAPANのブランドパネル※2を利用しています。ブランドパネルでは、ユーザ属性ごとにクリエイティブを出し分けることができるため、たとえば、関西の地域属性を持ったユーザに、関西発着の商品を見せるなどの露出を行っていました。
これにより、商品の認知度を高めています。一方で、問い合わせや予約など実利につなげる目的で、旅行への関心が高いユーザが集まるYahoo!トラベル内への掲載も行っています。
エイチ・アイ・エスでは、「インプレッション重視のプロモーション」、「コンバージョンにつなげるプロモーション」としてバナー広告を活用し、実際にオンラインの売上は飛躍的に伸びているようです。
※2)ブランドパネルとは、Yahoo! JAPANおよびYahoo! BBのトップページに掲載される、注目度の高い広告枠。
リターゲティング広告
リターゲティング広告は、1度Webサイトへの訪問があったユーザにコンバージョンに至るまで何度もメッセージを投げかけ、再来訪を促すものです。しかし、ただ同じ広告を打てばいいというわけではなく、効果を検証してより訴求力のある広告を出稿し続けます。
たとえば、リターゲティング広告を使えば、在庫切れで一旦離脱してしまっていた顧客に対し、「お客様の欲しいものがそろいました」という広告を発信することができます。ユーザが入力した検索ワードごとにリターゲティングできるので、より細かいセグメントが可能なことも特徴の1つです。
具体的な企業のリターゲティング広告活用事例として、「TBC」のリターゲティング広告を紹介します。
TBCでは、従来よりリスティング広告を出稿していましたが、よりコンバージョン獲得数を高めるため、Googleのリターゲティング広告を使い露出を行っています。TBCではさまざまなサービスを展開していますが、その中でも主力サービスへ訪問したユーザをリスト化し、リマーケティング広告を配信しています。脱毛関連のページに訪問したユーザには「脱毛」の広告、シェイプ関連のページに訪問したユーザには「ダイエット」の広告を表示させるなどです。
その結果、クリックスルーコンバージョン率(クリック後のコンバージョン率)は、同社のディスプレイ広告に比べ約5.9 倍、クリックスルーコンバージョン(コンバージョン1件あたりにかけた費用)は4分の1以下となるなど、大幅改善しました。
リスティング広告(検索連動型広告)
リスティング広告は、広告主が「広告を表示させたい検索キーワード」を購入すると、ユーザがそのキーワードで検索した際の検索結果に、自社の広告を表示することができます。ユーザへの接触が特定のキーワードに依存するため、「能動的なユーザ」にアプローチでき、売り上げに起因しやすいのですが、リーチ数に限界があるため大量の売上にはつながりにくいと言えます。
また、指定した検索キーワードの人気によりクリック単価が変動するので、キーワードによっては、「競合が多い」「商品やサービスから派生するキーワードが少ない」「客単価が高い」などの理由から、クリック単価が高騰します。(例「ローン」「保険」など)
競合が少ない「スモールワード」は検索回数が圧倒的に少なくなりますが、その反面、検索内容がユーザのニーズにマッチしている確率が高まるためコンバージョン率は高くなります。ターゲットを特定し、自社の戦略に合ったキーワードは追加していくようにしましょう。
「全売り上げの80%は全商品の20%の品種の売上によって占められており、ニッチな8割の商品がメジャーな2割の商品を超える売り上げをもたらす」と言われているように、スモールワードの網を張っておけるかどうかで集客力が決まってきます。
具体的な企業のリスティング広告活用事例として、「日本航空」のリスティング広告を紹介します。
近年、オンライン経由での航空券販売に注力してきた同社では、リスティング広告を「顧客誘導のためのツール」として活用しており、季節要因や顧客層、エリアごとの露出など、積極的な展開を行っています。
全世界の航空券・航空関連サービスを探している個人・法人の顧客をターゲットとし、エリアやニーズごとのデータをもとに効果測定やPDCAサイクルを回しています。同じキーワードで検索しても、その地域ごとに異なる結果が表示される『地域別配信』を使用し、航空券販売に関するキーワードを網羅、圧倒的な集客力とコスト削減効果があったようです。
アフィリエイト広告
アフィリエイト広告とは、あらかじめ設定したコンバージョンが満たされなければ、費用がかからない「成果報酬型」と呼ばれる広告です。成果報酬型というのは、ブログなどのWebサイトから通販サイトや企業のWebサイトへリンクを張り、消費者がそのリンクを経由して当該企業のWebサイトで会員登録や商品購入、サービスの予約をした場合に、リンク元Webサイトの運営者に報酬が支払われるというものです。
リスティング広告のように関心のあるユーザをピンポイントで獲得するのではなく、「潜在的に関心を持つユーザ」に露出するため、より低単価で、かつ幅広く訴求することが可能です。
アフィリエイト広告を実施することにより、ウェブ上での認知を向上し、結果的にリスティング経由、自然検索経由でのユーザ数にも影響を与えます。報酬単価、報酬の発生地点、プロモーションの詳細内容が企業の戦略に合っているもの、オウンドメディアとも相関性のあるものを利用するようにしましょう。
オウンドメディアとオンライン広告のプロモーション設計
オンライン広告の種類、特徴や事例を紹介してきましたが、問題視されていることもあります。オフライン広告に比べ出稿費用が安価なオンライン広告は、企業規模を問わず出稿が可能なため、オンライン上に情報が氾濫し、年々消費者に認知してもらうことが困難になっています。
こうした状況では、露出すればするほど費用がかかるオンライン広告に頼るのではなく、誘導させてから認知してもらうオウンドメディアのクオリティを高める事が重要です。
オウンドメディアのクオリティを高めるには?
まずオウンドメディアで発信する情報は、企業が発信したいメッセージではなく、「消費者が必要とするメッセージ」であることを意識しなければなりません。たとえば、通販事業で商品購入を促したい場合、消費者のプロフィールや価値観、興味や関心、さらには購買行動のどの段階にあるか、商品をどんな悩みを持った人に使ってもらいたいのか、商品を使ってもらうことでどんなHAPPYを与えたいのかを意識した情報が必要です。
そして、企業がターゲットとする消費者像を細かく絞り込みします。ターゲットは絞り込めば絞り込むほど、オンライン広告の成果が出やすくなるのです。
オウンドメディアのクオリティを高めるにはペイドメディアとともに「デザインテスト」を行うことが最も重要です。最低でもキャッチコピーのテストは行っておいたほうが良いでしょう。弊社では4~6つのキャッチコピーを作り、低予算で広告出稿しテストを行っています。その中でクリエイティブが一番良かったものを起用し本番の広告出稿に活用しています。本番前にこのテストを実施していない企業を多く見受けられますが、結局成果につながっていません。
回りくどく感じるかもしれませんが、本番前には必ずテストを行うようにしましょう。
たとえば、弊社でキャッチコピーを考案する際に留意していることは、「消費者に商品やサービスのメリットが伝わるようなキャッチコピーにする」「商品やサービスを使用する具体的なシチュエーションを含めたキャッチコピーにする」「あえて数字を入れたキャッチコピーにする」「ユニークな情報だと感じられるキャッチコピーにする」「悩みが解決できると感じられるキャッチコピーにする」「パラパラ漫画のように続きが気になるようなキャッチコピーにする」などです。
Webサイトではデザインだけで評価しがちですが、収益に結び付けるためには、キャッチコピーを念入りに考案する必要があるのです。
また、クリエイティブのレスポンス率はキャッチコピーだけではなく、構成、写真、デザインの組み合わせも影響があります。より精度を高めるためには、キャッチコピー、写真、構成、デザインの組み合わせを分解して、クリエイティブのテストをします。
オウンドメディアとオンライン広告との相関性があって初めて、「収益に結び付くプロモーション」となります。ですので、オウンドメディアのクリエイティブだけ、オンライン広告のメディア選定だけではなく、広域な観点で設計する必要があることを覚えていてほしいと思います。
以上のようにオンライン広告単体では、事業の収益に結びきません。
潜在顧客の掘り起こしにつなげるオンライン広告と、消費者の理解につなげるオウンドメディアを相互させることで、中長期的な収益につながるのです。
以前のような「企業が発信したいメッセージだけを訴えるオンライン広告」は、嫌がられ廃れていくと考えられます。情報過多の時代に求められていることは、消費者の欲求や関心により沿う形での制作やプロモーションでなければいけないのです。
- 参考文献
- http://adwords-ja.blogspot.jp/2010/12/google-roi-tbc.html