キーパーソンが見るWeb業界

第3回 プロモーションにおけるWeb(前編)

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手を動かす,動かさない

――Webプロモーションという考え方が認知され始め,企業がWeb媒体をどう用いるか,という考え方が変化してきたことで,実際の業務はどのように変わっていったのでしょうか。広告代理店,Web制作・デザイン,それぞれの立場でのコメントをいただきました。

螺澤:現在,自分はコミュニケーション・デザイン・センターのインタラクティブ・ソリューション室というところでアートディレクター(AD)をやっています。

森田:IC局のADって,実際に手を動かしてデザインをしたりするんですか?

螺澤:自分の場合はここ数年,意識的に手を動かすことをやめるようにしてます。理由の1つは,1日は24時間しかないので,自分で完結するのではなく,人の力をきちんと借りて作業をしたほうが,結果的には良い仕事になると気付いたからです。

それから,仕事は1人ではできないですし,複数のメンバーでやれば自分の予想の範囲とは異なるもの,ときには(100点満点で)50点のクオリティのものしか上がってこないこともあれば,100点を超えるクオリティのものも出てきます。この予測できないおもしろさが,今の仕事の醍醐味なのかな,と。だから,チームメンバーでコミュニケーションを取ることに重きを置いて,自分はディレクションに専念しようとしているのが現状です。

森田:徹底してディレクションに専念できるのは良い環境ですね。 Web制作ではADというロールで立ち回る人間が,実際にはデザイナー(D)の業務も兼務することがありますし。

長谷川:実質的にAD+Dということは多いですね。

螺澤:もちろん,自分で手を動かしたほうが効率的にも品質的にも良いと思うときもあるのですが,自分ひとりで仕事を完結してしまうと,自分が考えられなかったもっといい方法があったんじゃないか?と考えてしまったりします。なので,今の自分に与えられた役割を意識すると,ディレクションのほうに軸足を置くことが多いです。

それから,時間を有効に使うという意味では,仕事の整理,効率的な仕事の仕方というのを考えるようになっていますね。

阿部:わかります。たいてい僕たちのようにプロデューサやディレクターのようなポジションになってくると,昼間には会議が多く入りますよね。そうすると必然的に自分の仕事をしようとすると夜になってしまう。結果として,たとえばメールの対応は深夜過ぎ……,という状況も普通にありえるわけです。

そうなると,結果として手を動かす仕事よりも,人に仕事を任せる,つまりディレクションのような仕事が必然的に増える環境でもあるわけですよね。

情報収集の仕方

――ディレクションに専念することが増える状況の中,一方で,指示を出す,仕事を任せるためにはさまざまな能力やスキルが求められます。その1つが情報収集能力でしょう。

森田:時間的制約が大きくなり,ディレクションに専念する状況が増えてきているとは言っても,自分で必ずしなければいけないことってありますよね。たとえば,情報収集とか。

僕はニュースってきちんと知っておかなければいけないと思っているのですが,新聞を読む時間がない。かといって,ニュースサイトを見ると自分でピックアップしてしまい偏りが出てしまう。そこで利用しているのがHDDレコーダですね。非同期ではありますが,ニュースを客観的にキャッチアップできます。

阿部:僕も意識的にテレビを見るようにしていますね。世の中のはやり廃りを反映しているメディアの1つですから。それから,CMなんかはそれだけ見てもおもしろいと思いますし。CMスキップ機能のあるレコーダではなく,CMだけを録画できるレコーダが欲しいくらいです(笑⁠⁠。

森田:これはベースメントファクトリープロダクションの北村さんの話ですが,彼は1週間のドラマを録画してすべて観ているそうです。その理由が「TVドラマは,時代の感覚や時代背景,世相を反映していて,ちょっとした部分からさまざまなエッセンスが読み取れるから」だそうです。たとえば,景気が良いときは富裕層をターゲットにした内容だったり,経済活動が沈滞しているときは同情を促す内容が受けたり,といったことです。

螺澤:たしかにTVから得られる情報の重要性はわかります。4年前かな,ちょうどアテネオリンピックが始まる前に,当時私が持っていたTVが壊れてしまって,2004~2005年の間,TVを見ることがほとんどなくなった時期があったんです。そのときわかったのが,社会的に大きなニュースはTVを見ていなくても自然に自分に入ってくる。でも,バラエティ番組とかで人気になっているタレント情報はとたんに疎くなりました。

ところが,ここ最近の3年くらいの間にそれが大きく変わりましたよね。そう,YouTubeの登場です。今だったら,ちょっと気になる番組やCMなど,細かなものまでYouTubeで探し出すことができます。

時代に見るプロモーションの変化

――YouTubeをはじめ,動画共有サイトの登場は情報収集に関して大きなインパクトを与えました。では,プロモーションの観点から見た場合,どうなのでしょうか?

阿部:ようやく本題なのですが(笑⁠⁠,こうした時代の移り変わりにおけるメディアや情報収集手法の変化に伴って,プロモーションってどのように変わってきているのでしょうか。また,作り手の意識はどうあるべきだと思いますか? 一般的に僕たちWeb制作をする人間はWebの専任って見られがちですが,本当なら他のメディアを含めてトータルで考えていく必要があるわけです。また,TV CMを制作している方には,逆にWebについてもっと知っていただき,連携する必要があったりするわけですよね?

螺澤:2003年くらいまでのWebは,いわゆる「below the line⁠⁠,つまりチラシと同じような販促メディアとして見られていたんですよね。ところが,最近であれば,ユニクロのUNIQLOCKなんかはとてもおもしろい例だと思うのですが,Webが単なる販促メディアではなく,ブランドを知る入り口であったり,ブランドイメージを作りあげたりするファーストメディアとして認知されてきています。

つまり,きちんと考えてきちんと実践すればブランドコミュニケーションを担ううえでの要所となるメディアとして認められてきていると思うんです。そして,世の中全体も気付き始めている。2008年の今になって,ようやくという感はありますね。

ただ,自分自身Webに軸足を置いてはいますが,ブランドを作ったり,メッセージを出すときにWebだけでやれば良いとは思っていません。良いものがあればどんどん取り入れるべきですし,企業はそうしていくべきだと思います。