キーパーソンが見るWeb業界

第11回 Web業界を目指す皆さんへ(前編)

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市民権を得たWeb

阿部:今の2人のお話を聞いてみて,⁠テレビや雑誌などの報道にあるような)⁠いまどきの若者はネガティブだ」という面が見えないことに驚きました。今は景気も悪いですし,座談会を始める前は,もっとマイナス思考かと思っていたんです(笑⁠⁠。

ただ,夢はもちろんのこと,実際にWeb業界で働くということがどういうことか,今日はそのあたりをうまく伝えていきたいと思っています。

森田:2人の観点は,どちらかというとWebの中でもWebサービス側の観点ですよね。先ほどの世界に向けてということで言えば,Webデザインの領域では,たとえば⁠中村勇吾⁠さんのような世界に誇れる日本人のデザイナーがいて,勇吾さんに続け的な感じでWebデザインを始めた人たちもたくさんいるわけですけど,世界に向けて発信していきたいという気持ちを持つのは素晴らしいと思います。

サービスにせよデザインにせよ,Webというのは自己表現をするために手っ取り早い場所であったわけですが,今は自己表現の場だというよりは,人と人が繋がるための場になってきているんですよね。しかも,世界中の人と繋がれるという点においてコストがかからないという大きなメリットがありますから,その気持ちを実現する場としてのWebというのは,とてもしっくりくると感じます。

長谷川:私はこれまで仕事をしてきて,この10年で,Webというメディア/ツールそのものが,だいぶ市民権を得たと感じています。10年前であれば,Webに取り組むこと自体が実験的と思われることも多く,商業クオリティとして必要な基準もありませんでした。私たちはそのマーケットをつくってきたと思っています。今ではあたりまえのようにWebをつくりたい,使いたいというニーズがあるわけですが,当時はまだおまけ扱いでしたからね。

阿部:たしかにそれは感じますね。2人の世代だと,いわゆるデジタルネイティブになっているわけですよね。ちなみにいつからインターネットに触れていますか?

紫竹:私は中学生のころからインターネットを使っていました。2ちゃんねるなども見ていましたし。

片山:私はテレビと同じように,気付いたときにはWebに触れられる環境にいました。

紫竹:インターネットが素晴らしいなと思ったのは,時間が経っても(物理的に距離が離れたとしても)相手と繋がっている感覚が得られる点です。高校時代の友達とは今もマイミクとして繋がっていて,実際には顔を合わせることは少ないですが,日記を見たりレビューを見たりすることで近況がわかって,緩く繋がっていられます。

長谷川:だとすると,私たちとは感覚が違うのでしょうか? ここまで話してみてギャップは感じないです。どうですか?

紫竹:同じく,まったくギャップを感じていません。失礼かもしれませんが,感覚が似ていると感じています。

森田:今の話はWebの利用者という視点での話だと思いますが,話を戻して,仕事という観点でWebを見たときに,長谷川さんがおっしゃっていたように,10年前はWebの商業クオリティの基準はなく,クオリティの善し悪しは属人的な部分に依存していたわけです。今は,基準として「このぐらい」というのは肌で感じられているようになってきていて,だからこそ利便性も享受できる世の中になっているのだろうと思います。

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なぜWeb業界に?

阿部:Webに触れてきたと言うことですが,なぜこの業界で働こうと思ったのですか?

紫竹:私自身は何かWebサービスをつくりたいという気持ちが強く,それを実現するために今の会社を選びました。入社する会社は,インターネット広告代理事業とインターネットメディア事業の両方を併せ持っていて,なおかつ配属される部署はエンジニアなどの専門職が集まる部署になります。元々好きなWebに関して,仕事として開発に関われるということが一番の理由ですね。

片山:以前からWebは好きでしたが,具体的な行動を起こしたのは,大学2年時にWebサービスを企画する授業を受けてからでした。授業では企画までだったので,その後の実装やリリースをしてユーザに使ってもらうところまでどうしてもやりたくなって。その後すぐにインターンをさせてもらえるWeb企業を探し,mixiで1年間インターンとして働いて,Web業界で働きたい気持ちがさらに高まりました。4月からはクックパッドでアルバイトさせていただく予定です。

森田:僕はゲーム好きが高じてゲームクリエーターの専門学校へ行ったのですが,そのとき,ゲームは自分でつくるよりも人がつくったもので遊んだほうが絶対に面白いと思ってしまいました。それで,ゲームの世界には行けなかったのですが。

ところが2人の話を聞いてみて,Webは,⁠Web自体を)空気のように使ってきた人が仕事として選ぶとさらに詳しくなってもっと楽しめる,噛めば噛むほど味が出るようなものなのだな,と気付かされましたね。

阿部:2人ともWebサービスの企画・開発を目指しているとのことですが,制作側に行かかったのはなぜ?

片山:理由はいろいろあるのですが,理由の1つには,言われたことだけをしたくないいう気持ちがあったからです。

長谷川:その気持ちは働いてみると変わるかもしれませんね。制作サイドでも事業サイドでも,作業としての仕事と自分で問題解決をする仕事とがありますからね。

制作会社はさまざまなクライアントの問題解決に取り組むことで,より専門化を進めていくことができます。事業会社は,その事業の成功が目的となります。こういった観点が大きく異なります。

阿部:たしかに言われたことをやりたくないという気持ちもわかりますが,事業規模やWebサイトの規模が大きくなればなるほど,言われたことをこなす,オペレータの役割をする人の重要も大きくなります。これはWebサービス開発でもあり得る話です。そこは忘れないでほしいですね。

森田:2人とも実際に若いので言いますが(笑⁠⁠,若いうちはなんでも吸収して思いっきり働くのがいいかなと。言われたことも,言われてないことも。経験を重ねて自分の仕事を考えていくことで,何をしたいかが変わるなり,もっとはっきりするなりすると思います。

阿部:それは言えますね。現在の日本のWeb業界の多くは,9時5時と言われるような定時での業務スタイルは一般的ではありません。ですから,身体的にも精神的にもいろいろな意味で負荷が大きくなることもあります。親心ではないですが,そこでつぶれないように気を付けてほしいです。

紫竹:今のお話を伺って,ますますWeb業界で働いてみたいと思いました。今は自分でつくるという気持ちが強いですが,働いてみて何かを感じられるような気がします。

(4月2日公開の後編に続く)

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著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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