キーパーソンが見るWeb業界

第12回 ライフスタイルの中でのクリエイティブとプロセスにおけるツールの役割

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プロセスにおけるツールであるべき

森田:デザインプロセスを切り分けることは,実際のプロジェクトを進めるうえでとても大切だと思いますが,ツールで切り分けられているからプロセスを分けるというのとは違うと思っています。

たとえば,SIerさんと組むような案件の場合,まず,Flexによってバックエンドを開発し,そこでできたものに合わせてフロントをデザインしてくださいというパターンになりがちなんですが,デザインとはそうことではないと思うんですよね。

本来ならば,ユーザの課題を解決するためのデザインがあるべきで,順序をいうならばUIを決めてからバックエンドを決めていくほうが正しい姿だと思っています。

また,こういう手順的なこと以外にも,現状は,Flex中心で開発を進める開発者たちと,課題解決のためのデザインを行うデザイナーとで工数感がずれるなど,ディスコミュニケーションが発生する傾向を見かけます。

阿部:今の森田さんのお話はとても重要で,フロントエンドデザインとバックエンド開発の関係性については,もっともっと積極的に話されていくべきだと思います。こうした新しいツールが出てくることは,非常に良いことでもありますが,やはり目的があってのツールであるわけですから,ツールの使い方という点については間違えないように気を付けていきたいものです。

西村:これは先ほどのライフスタイルの話にも通じるものですね。Adobe としては,デザイナーもデベロッパーもどちらも大切なパートナーとして考えています。ツールとしての切り分けによって,どちらかに比重を置くというものではありません。

森田:さらに言えば,課題を解決するには,まずプロセスを考えてからどう解決するかという考え方が大切で,プロセスを良くするにはどうすべきか,そのうえで,ツールの必然性と存在価値っていう流れなんでしょうね。

また,プロセスが見えてくることによって,どこに注力すべきかというのが見えてきますし,その結果として(いろいろなことを)考える余地が生まれてきますから。

一番大事なのはユーザに選ばれること

阿部:その点で言うと,今回発表されるCreative Suite 5というのは,プロセスをすべて網羅できる,いわば⁠全部盛り⁠のツールなわけですよね。これから,僕たちデザイナーやデベロッパーに対しては,その全部盛りの中身が,どれとどれが紐付いているのか,紐付くことによって何ができるのか,というのを説明されることが大事だと思います。

使う側にとっても,全体像をイメージしてから個別のツールの役割が見えてくるといいと思います。

森田:僕たちデザイナーはツールのユーザでもあり,また,エンドユーザから見たらサービスの提供側にもなるわけです。そのためにも,Creative Suite 5が,エンドユーザに刺さるものを生み出せるツールだというのを提示してほしいのですよね。

たとえば,製品紹介も,開発の生産性が向上する,とかだけではなくて,⁠デザイナーが思いついたものを具現化し,生活を変えることができるツール⁠というように,よりライフスタイル面から価値のある見せ方というのも良いのでないでしょうか。

西村:大変参考になるご意見,ありがとうございます。Adobeとしても,つねづね制作・開発シーンにおいて,デザイナー・デベロッパーの皆様をサポートできるツールを提供し続けたいと考えております。今回のCreative Suite 5を通じて,ようやくすべての制作フロー・プロセスを網羅できる環境が整えることができたと感じています。

また, 先ほどお話ししたOpen Screen Projectも含め,デザイナー・デベロッパー,ベンダ各社,そして,エンドユーザの皆様にとって,魅力的なコンテンツを開発するにも,体験するにも最適な環境を作ることができるように製品や技術を提供するために努力しています。我々Adobeは,制作者様,ユーザ様との密接なパートナーシップにより,新しいデジタル体験とスタイルを創っていきたいと考えています。

以上,今回は,Adobe という,Web業界ならず多くの業界にとって大事な技術と製品を提供しているベンダと,デザイナーという構図での議論が行われました。話の中にも出てきたように,革新的な技術の登場により,デザイナーの表現力を最大限に引き出す環境が出てきたと同時に,マルチプラットフォームなど,今また新たな問題にも直面しています。

今後,Adobe を含め,新しい技術を提供するベンダがどのような展開を見せるのか,また,その技術を使いデザイナーがどういったものを生み出していけるのか,大変楽しみです。

今後,西村氏が述べたように,全員がパートナーシップを作る環境が生まれ,エンドユーザのライフスタイルが向上していく世界を期待しましょう。

今回お休みの長谷川敦士氏から一言

4月の前半に,三菱電機の粕谷さん(本座談会の第7回ゲスト)とともに,アリゾナ州で開催されたIA Summitに行ってきました。僕にとって一番の收穫は,IAとして長年憧れているリチャード・ S・ワーマンに会えたことですが,参加したセッションから多くの実践的な事例なども聞いてくることができました。

都内で予定している報告会の開催後には,コンセントサイトなどでレポートを公開しますので,お楽しみに!

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著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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