キーパーソンが見るWeb業界

第17回 バカメディアに見るIAとコンテンツ

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IAとUX

森田:ちなみに,今現在は存在しなくても,5年後には存在するかもしれない,そういう情報を考えるのはIAに含まれると思いますか?

谷口:情報量が多すぎる時代にはメタ情報が慢性的に不足します。なので5年以内に新しいタイプのメタ情報が多く登場するとは思いますね。

長谷川:そう考えていくと,最近よく同一に取り上げられるUX(ユーザ体験)とIA ってまったく別物なんです。IAは情報をどうデザインするか,UXは経験をどう提供するかなわけです。おそらく,エディトリアルデザインとプロダクトデザインぐらい違いがあります。

ただし,IAでは抽象度の高いデザインをするために,実際の業務としてシナリオを考えたり,UXまで意識するケースがあるのだと思います。

森田:たしかに,UXデザイナーというのはアートディレクターに近いですね。現実的な落とし所をきちんと目指しているというか。UXは理想的な体験を純粋に突き詰めていくだけのものではないです。

ですから,よく言われるような,何かのロール→IA→UXデザイナーというキャリアパスは,僕はあまりないかなと思っています。

長谷川:コンセントでも,IAのパスと,UXデザイナーのパスは違っています。キャリアパスといえば,谷口さんのようなIAをリクルートしたいですね(笑)

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企画の出しやすさ

谷口:うちも人材を探しているんですよ(笑⁠⁠。キャリアパスの話で言うと,今,私がライブドアにいる理由は,制作会社と違ってメディア企業にいることで,メディアでの露出が確保できるのでさまざまな企画を実験しやすい,悪くいえば失敗しやすい環境だからということです。私個人としては,制作会社が作るクリエイティブと,メディアが作るクリエイティブを比較すると,メディア側のもののほうが規模が小さいと思います。言い換えれば,小粒なものをたくさん作るチャンスがあります。

長谷川:たしかに。それは,失敗しやすいというよりは,ケーススタディを貯めやすいのがメディア側ですね。

森田:メディアは自分のところでプロジェクトをやれますが,プロダクションは相手(クライアント)のところでプロジェクトをやりますから,その違いは大きいですね。

人の雇い方

谷口:ところで,キャリアパスの話から,私は個人活動をしながら会社員としても働いているわけですが,お二人は経営者として働いていますよね。何か,働き方について考え方ってありますか?

森田:経営者ではありますが,僕が意識しているのは「インディペンデント(独立して⁠⁠」で働けるかどうか,ですね。経営者の立場としてはそれが重要です。ただし,実際の業務として考えた場合,考えるだけではなくて手を動かす人も重要なわけで,それが従業員に求める部分だと思います。

長谷川:企業・組織という形態を取るメリットには,大きく2つ,つまり「システムで(体系的に)できること」「頭を使って十分に考えられること」があると思っています。Webサイトのコミュニケーションを考えた場合,頭を使うだけではなく,仕組みによって量を担保することが求められます。ですので,私は,一人じゃなくて,会社を立ち上げようと思ったわけです。当然ながら,システムとして,仕組みとして機能させるには,それなりの規模が必要となります。

森田:僕も,ビジネス・アーキテクツ時代,とくに後半は経営として会社の仕組みづくりをしていました。しかし,今のツルカメでは,現実としてそういうものはまだあまり必要ないんですよね。何年後かに100人規模,などそういう計画があるならともかく。一緒にツルカメを作っていくという意志のある社員が何人かいたら,仕組みづくりと実際の運営とがもっと噛み合うだろうなと思っています。

バカメディアは儲かるのか

谷口:なるほど。私は会社員でも自分に100%向いているところにいたいと思っています。ですので,広告企画のグループで珍しい案件ばかり請け負うようになっているのですが,それは,自分が常に新しい企画をしたいのでそういうふうになるように仕向けた部分(意識した部分)もあります。

中でも,この3年間,バカメディアをどうやってマネタイズするかを考えてきました。そこで,ようやく今年のエイプリルフールでタイアップ企画を受注することができたのですが,これは,先ほど話しにも上がった『バカ日本地図』をはじめ,バカメディアに対する(クライアントの)理解度が深まったからだと思っています。

ソーシャルメディアの時代には,かっこいい広告よりも,話のネタになるコンテンツのほうが話題を呼びやすい。なのでバカに対する扱いは『バカ日本地図』を開始した時期に比べて,大きく変わっています。そもそも「バカ」という言葉自体が,以前はタブーだったように思っています。

ところが,ソーシャルメディアの時代に移ってきてから,クライアント側としても,メディアをコントロールすることは難しいというのを認識しはじめました。大きなシフトですね。

今は,バナーなどの純粋な広告ではない,コンテンツだけれども広告としても成果がでるものを画策しています。

森田:たしかにソーシャルメディアはコントロールできない領域ですし,いくつかあるソーシャルメディアの広告事例は,たまたまサイトの性質を持っているということが言えますね。

そういえば,こういうソーシャルメディアに対する投資や予算って,どこから捻出するのが良いのでしょう?広報?宣伝?

谷口:難しいところですね。コントロールできない分,先が読めないわけですから。1つ大事なのは,スタートさせるときに「ユーザをできるだけコントロールしないけど,荒れないように意識する」ことでしょうか。それを考えているかどうかでマネタイズしやすくなるように思います。

たとえば,デイリーポータルZの林さんにお話を聞いたとき,自身の知見から「荒れない経験則」というのをお聞きして,ソーシャルメディア上でも応用できると感じました。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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