キーパーソンが見るWeb業界

第17回 バカメディアに見るIAとコンテンツ

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ソーシャルメディアはキャンペーンに向いていない?

森田:荒れることも1つの特徴ではありますけどね。あと,ソーシャルメディアの予算を考えるときに伝えたいのは,そもそもソーシャルとは,クチコミが重要な要素なわけで,そう考えると短期間で結果を求めるものではないと思います。ところが,ソーシャルメディアをキャンペーンに当てはめた途端に,1週間だったり1 ヵ月だったり,非常に短期間で成果を求めがちです。仮に,1週間で結果ができないと,結局TV CMを打つなどの施策をしています。これって本末転倒ですよね。

実は,ソーシャルメディアはキャンペーンに合わせづらいメディアである意識は大切だと思います。

長谷川:もう1つ,ソーシャルメディアは個人の責任,レスポンシビリティが出てくるわけですから,そもそもとして企業が扱う必要があるかどうかを考えなければいけません。また,ソーシャルメディアを扱うことで,企業の意味が変わってしまうケースがあります。

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コントロールできないコンテンツでのタイアップの可能性

谷口:コントロールに関しては,いかに作家性を前面に出すか,というのも1つのポイントだと思っています。クライアントの要望ベースで作るとユーザをコントロールする仕組みになりがちです。そこはできるだけメディア側の世界観を通すことでできるだけ自由に使いやすくしたいですね。

ライブドアで始めているロケタッチという位置情報サービスは,ソーシャルメディアでかつ,ユーザは実際に体を動かして店舗に行くので,そんなことをコントロールしようとしても無理で,本当にそこに行きたいと思ってもらわないとはじまらない。そこはクライアントにも理解していただいていますね。

たとえば最近スタートしたローソンさんとのタイアップでは,店舗に本当に足を運んだかを店員が厳密に確認するよりも,よりカンタンにキャンペーンに参加することを重視しています。

ただ,これも1つの事例であって,将来的には,ライブドア以外でもさまざまなメディアを横断的にわたるコンテンツを作りたいですね。コントロールできないコンテンツでタイアップができるのかどうか。たとえば,昔のテレビ番組にあったような『オレたちひょうきん族』のようなライブ感を活かしたコンテンツが,Webでも実現して,システムとして回せるのかどうか,など,気になっています。

森田:ちなみに,位置情報って儲かってます?

谷口:現実的にはこれからですが,問い合わせの数からいって,かなり期待をしています。

谷口:最後にもう1 つ,私が最近個人で取り組んでいる「OL男子の4コマ書評」の話をさせてください。これは,名著を4コマ漫画で書評したらどうなるか,という企画なんですが,これも冒頭で言った,書籍という大量の情報に対してメタ情報を作る作業の1つなんですよね。

この4コマ漫画は,石原都知事を風刺した内容で人気になったのですが,そこで感じたのは「批判っておいしい」ということでした。批判をすることによって,新しいバイラルが生まれますから。ただ,私自身,武道に取り組んできたこともあり,武道の先生からは「人を批判すること」を否定されてきたので,その点で葛藤はありました。これについても,先ほど紹介した林さんから「強い相手を批判するのであれば問題ないんじゃない」というコメントをいただいて,すっきりしたところです。

森田:メディア的暴力にならなければ,まあ概ね問題ないと思います。

長谷川:そうは言っても,自分より強いからすべていいかどうかというのは議論の余地がありそうですね。

谷口:はい,とくにバカメディアとしては,批判の方向には行ってはいけないと思っています。というのも,批判を進めていくことによって悪ノリが悪ノリで収まらなくなるからです。それでも,煽り系から生まれるPVの魅力はありますけど(笑)

いずれにしても,これからもバカメディアに取り組みながら,それをマネタイズして盛り上げていくっていうのは私の仕事の方針にしていきたいですね。


今回,ゲストを含めた3名が旧知の仲ということもあり,非常に濃くて深い,そして,今のソーシャル時代にもマッチした内容で話が展開しました。谷口氏が述べている,IAという概念とコンテンツによって生み出された「バカメディア」というものが,今後Webの中でどう展開されていくのか,注目していきましょう。

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著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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