ネットサービスと著作権のしくみ

第1回 「検索エンジン」と著作権

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検索サービスを提供する際のルール

「よしっ!ネット検索事業が合法になったのならサービス提供に乗り出してみるか!」とお考えの方は,この法律に則ってサービス内容をアレンジする必要があります。その場合,⁠できること」よりも,むしろ「できないこと」「やってはいけないこと」を確認していく必要があるでしょう。そこで,留意点として注意が必要と思われる部分をいくつかピックアップしてみます。

まず,⁠検索エンジン事業って何?」ということですが,これが政令で定義されるようです。つまり,政令で定める検索エンジン事業の基準をみたさない事業者はそもそもこの法律の対象にならないため,検索エンジンサービスを提供することができません(提供すると従来通り違法になる可能性があります⁠⁠。政令は現時点ではまだ公表されていませんので,その内容は分かりませんが,条文を読む限り,⁠情報の収集,整理及び提供」のやり方が規定されるようです。内容によっては新規参入への障壁になるかもしれませんので注意したいところです。

次に「公開範囲に制限がかかっているサイトは勝手にデータの収集をしてならない」という制限があります。例えば日記公開などで「お友達に限定」というような制限がある場合,限定公開なので勝手にロボットが踏み込んで,サイト記事を収集するのはダメ,ということです。収集したければ記事の作者の許諾を得なさい,ということが条文に明記されています。

また,検索結果を表示する際はURL(法律中では「送信元識別符号」と呼ばれています)を併せて表示することが必須となります。単に飛び先へのリンクだけを結果表示するだけではダメで,ちゃんとURLも表示しなさい,というのが今後のルールとなります。

最後に,ロボットが著作権法上,違法に作成されたデータを収集してきた場合に,検索エンジン事業者が「あ!違法データだ!」と気付いたら,そのデータは検索結果表示の対象から外さなくてはいけません。例えば,ミッキーマウスの画像を違法に掲載しているサイトがあったとして,ロボットがそのサイトのデータを収集してしまったがために,画像検索等で「ミッキーマウス/ディズニー」などとキーワードを入れて検索すると,その違法サイトが検索結果でヒットします,という場合に,検索エンジン事業者が「あ,違法サイトだった!」と気付いたら,その時点で,そのサイトは結果表示から外しなさい,ということです。

ただ,この最後のルールは正直にやろうと思っても,ちょっと無理なんじゃないかなぁと気がします。というのは,ロボットが収集してくるサイト数は何十億,何百億,何千億という途方もない数でしょうから,それをいちいち目視やパトロールで確認することは不可能ですし,そもそも違法にアップされたコンテンツなのか,許諾を得た上でアップされたコンテンツなのかは,アップした本人に聞かないと分かりませんから,検索エンジン事業者の側で自主的に事前に違法か合法かを判断することは現実的ではありません。したがって,最後のルールはおそらく,権利者側からの違法の申し立てを受けた時点で結果表示から外す,という運用になるのだと考えられます。

おわりに

この改正法は予定では来年の1月1日から施行されるようですので,まだもうすこし時間があります。法律ができましたので,一応,検索エンジンは違法の汚名を返上できたわけですが,今回ピックアップした事項以外にも,実際に検索エンジンをビジネスとして提供していくとなると,依然として色々と課題が多そうです。

Note:
例えば「キャッシュ」の取り扱いです。今回の法改正では,情報を収集することは許容されますが,収集したデータ(=キャッシュ)をどの範囲で,どういう態様なら検索結果としてユーザーに提供してよいのかまでは,⁠条文がかなり読みにくいこともあり,)私にはよく分かりません。元サイトが削除されて「リンク切れ」になった際に,あらかじめ保存されているキャッシュを代替で結果表示してもよいのか?などは依然としてビミョーな問題だと私自身は考えています。

初回からかなり細かな,いかにも「生粋の法律っ子」っぽい話になってしまってゴメンナサイ。次回は「ネットオークション」を取り上げる予定です。

著者プロフィール

保利秤(ほりこうへい)

某企業に勤めるサラリーマン。入社後,営業も経ずにそのまま本社の法務部門に配属となったため,自分の会社が何をどんなふうに売っているのか,いまだに全容を理解しきれていない。知的財産関連業務は今年で3年目。まだまだ若手気分が抜け切らない草食系メガネ男子(?)。好きな作家は村上春樹だが「小説は文庫で読む」というポリシーなので『1Q84』は未読。好きな食べ物は湯豆腐。

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