WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」

第13回CAMPAIGN PLANNING「キャンペーンプランニング」

キャンペーンはウェブサイトへの導線を強化し、到達したユーザーの個人情報を獲得するためにインセンティブを設けて実施する。キャンペーンを実施する際には獲得したいユーザーとコストを想定し、コストパフォーマンスを最大限に高める方法を考えよう。

消費者は何らかのメリットがなければ動かない。最もわかりやすいのが金銭の贈与だが、これでは何のメッセージ性もないばかりか、集客するユーザーをセグメントすることすらもできない。逆にインセンティブがとても低い賞品を提供すると、集客は減るが、モティベーションの高い消費者ばかりを集めることができる※インセンティブの設定⁠。

さらに集客を行うための媒体の選択も重要である。単に消費者のプロフィールから媒体を選ぶのではなく、その後のマーケティング活動にマッチする行動パターンを持つユーザー層を集客できる媒体を選ぶ必要がある※媒体の設定⁠。

インセンティブやハードルの設計、媒体の選択を行うことでキャンペーンの効果を目的に合わせて変えることができるのだ。

ターゲットとインセンティブの設定

キャンペーンの目的は、その後のマーケティング活動につなげるための集客である。

そのため、まずはどのようなユーザーを集客するかを設定する必要がある。もちろん、プロモーションを行う製品やサービスの購買層(または購買層に影響のある層)であることは必須である。前回の記事でも述べたが、ユーザーのプロフィールに加え、ユーザーのアクション(CGMへの参加や口コミの発生率など)によってセグメントすることもその後のマーケティングアクションに対して大きな影響を及ぼす。

また、適切なインセンティブの設定を行うにはターゲットとなるユーザーを詳しく知る必要がある。応募を受けたいユーザーがどのような生活を送り、どのようなニーズがあるか。

例えば主婦が最も必要としているものは「時間」という調査結果がある。この層に長期滞在の旅行をプレゼントしても実際に行くことができず、媒体を主婦向けに選択したら応募は増えないだろう。逆に時間を与えてくれるもの(家事代行や短期の家族旅行など)は応募されやすいのではないか? ターゲットユーザーを知り、どのようなインセンティブが登録へ誘導できるほどの魅力を持つかを見極める必要がある。

キャンペーンの効果は常に最終の獲得人数ではなく、購買やマーケティング活動に確実に役立つ「有効ユーザー」の獲得数をキャンペーン費用で割った「獲得単価」で評価するべきだ。

まずは、どのような価値(購買頻度、期間、マーケティング活用等)をもったユーザーをターゲットとし、その獲得にいくらコストをかけるかを設定しなければならない。

アセットの確認

キャンペーンを行う際にはまず常にウェブサイトやクライアントが持つアセット(資産)を確認しておく必要がある。

「プロモーションを必要としない安定的なトラフィックがどれくらいあるか⁠⁠、⁠メールを送信できる会員情報が何件あるか⁠⁠、⁠扱う製品に話題性があるか⁠⁠、⁠同時期にどれだけのメディアサポートがあるか」など、キャンペーンの成功に役立つ資産を十分に活用するべきだ。

例えば、新規のユーザーを集客しなくても既存の会員データベースからアクティブCGMユーザーを抽出すれば、発信力を持つユーザーに直接アプローチすることができるようになる。

アセットの活用例

FICCで運営を行っているランコムのキャンペーンサイト、ランコム ローズ マガジンでは既存会員に対してブロガー向けのモニターキャンペーンを通知し、登録を促した結果、1回のキャンペーンで1000人以上のブロガー会員を抽出した。一般応募のキャンペーンに比べると少ない人数だが、企業がダイレクトにアプローチできるブロガーとしては十分な数ではないだろうか?

ハードルの設定

モニター企画など特定のユーザーを選考する場合はアンケートや検索エンジンなどの特定の流入経路に制限するなどで応募へのハードルを上げることで、よりモティベーションの高い消費者を集めることができる。

ランコム ローズ マガジン内の例として店舗誘導型のキャンペーンがあるが、製品サンプルのモバイルクーポンの配布に際し、アンケートを実施している。応募は製品情報の一番下に設置したボタンのみで、アンケートは文字入力を必要とする。

このように、ハードルを設けることで製品情報を読み、購買意欲を持ったユーザーのみを店舗へ誘導する仕組みだ。

キャンペーンの応募条件

キャンペーンの応募に対して応募者に要求する条件の設定もキャンペーンの成功を左右する。通常はクイズやアンケート程度のものを設け、マーケティングに必要な情報収集や、目的のコンテンツを読ませるなどの施策を行い、応募数を最大限に確保するためにハードルを低くキープする。先に述べたようにアンケートのフォーマットによってハードルを上げる事もできるが、中にはもっと高いハードルを立てるキャンペーンも多く存在する。投稿系のキャンペーンはユーザーにコンテンツ活用できるものを投稿させることが多いが、その内容によっては全く応募がされないものも多い。簡単なコメントや文章であればその場で書くことができる。しかし、画像などの投稿となるとその場で対応することは困難である可能性が高い。応募に対して一度ユーザーをキャンペーンページから離脱させる必要があるものは転換率を大幅に下げるため避けたほうが良い。重要なのはユーザーの行動オアターンをしっかりと把握し、ハードルの設置をユーザーのセグメントやフィルタリングのためだけに設け、応募に対する無意味な障害を作らないことだ。

図1
図1

ユーザーを離脱させないために

キャンペーンへの応募はユーザーが個人情報を運営者に届ける事が出来れば成立する。その応募方法はユーザーによって異なるだろう。後のデータベース管理を考慮するとモバイル、PCに限定するべきであるが、アナログな応募を処理し、後にCRMとして活用することができるのであれば設けても良い。重要なのはユーザーが「いつ⁠⁠、⁠どこから」でも応募できる自由を与えることである。

ユーザーは離脱すれば忘れる。一度応募を検討したユーザーを離脱させないためにリマインダーを提供することも考えるべきである。PCのキャンペーンページからはモバイルのページへの誘導を設け、QRだけでなくURL、空メールも記載するべきだろう。後に応募するために自身に、知人にメールを送れ、ブックマークできるようにするのも有効だ。

図2
図2

媒体の選別

限られた媒体予算の割り振りはとても慎重に行わなければいけない。キャンペーンページの露出を確保できるアセットがなければ、媒体の選別によりキャンペーンの結果が決定してしまう。バナー、ターゲティングメール、ブログ記事、タイアップ、リスティングなどWEBの媒体には様々な種類と特性があるが、その有効性はキャンペーンによって大きく異なる。どのようにキャンペーン告知に最適な媒体を選別するべきか? WEBには豊富な媒体の数や種類が存在し、とても難しく感じる。しかし、シンプルに考えるとWEBの媒体はすべて安定したトラフィックや一定数のユーザーデータベースを持っているもので、キャンペーンを通じてその一部をこちらに取り込む(オプトインさせる)だけなのである。すなわち、ターゲットとしている層のユーザーをより多く抱える媒体の中で費用対効果を比較検討すれば良いだけである。種類の選別はキャンペーン自体の内容に合わせ、どのような露出が最適なのかを検討する。ポイントは限定された露出からいかにユーザーに次のアクションを取らせるかに加え、その媒体の選別によって二次的な効果を期待できるかである。

媒体の露出をシミュレーションし、バナー等の小さな画像での露出や、ターゲティングメールの件名だけの露出でユーザーをキャンペーンページへと誘導できるようなプランニングが必要である。

コンテンツの提供、製作費と媒体費のバランス

キャンペーンサイトへの誘導率は適切なインセンティブに加え、話題性やエンターテインメント性の提供により大幅に高まる。また、CGMで話題として取り上げやすい内容であれば、キャンペーンページへの入り口も増える。単純にインセンティブと媒体を組み合わせればキャンペーンは成り立つが、懸賞ばかりに応募しているユーザーの集客に留まりかねない。⁠有効なユーザー」の獲得にはキャンペーン自体を面白いと思ってもらえるような「中身(コンテンツ⁠⁠」が必要である。そのため、キャンペーンを企画する際は費用対効果を上げるため、制作と媒体にかける金額のバランスを取らなければいけない。

制作費をかけなければ、有効ユーザーの獲得率は低く、口コミ等による二次的な拡散も期待できない。しかし、製作費を増やし、媒体費を圧迫してしまうと集客が行えない。ある程度の製品自体の話題性やメディアサポートが期待できる案件がリッチな製作を必要とするのはこのためだ。キャンペーンの中身を考える前にターゲットの設定とアセットの確認が必要不可欠なのである。

次回は、コンテンツのソーシャル化とそのメリットとリスクについて説明する。

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