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第8回マネジメントのための算数

荒井尚英先生による算数の授業では、連結事業構造から見た対お客様との関係理解と、マネジメントに必要な時間とお金の管理の仕方について解説されました。

会計学から見る、お客様との関係理解

荒井尚英先生
(株式会社パンアジア・パートナーズ、
元・株式会社アイ・エム・ジェイ取締役)
荒井尚英先生(株式会社パンアジア・パートナーズ、元・株式会社アイ・エム・ジェイ取締役)

同じ予算2,000万円でも、その仕事で制作するサイトの種類によって、予算金額の意味するところはまったく違ってきます。⁠連結事業構造から見た対お客様との関係理解の典型的な例として、ECサイトの構築を予算2,000万円で受託したと想定します。この予算は発注側の資産から原価として出ています。これは納品物がどういった意味を持つのかということを理解するのに、非常に大切です。たとえば、2,000万円の予算で構築したECサイトの売上が初年度1,000万円だとして、1,000万円の赤字が出たと考えるのは間違いです。2,000万円の減価を償却する期間を5年と想定して、毎年400万円ずつの原価計上すると考えるのが正解です。この場合、毎年の売上高から400万円の減価償却費を引いた額が経常利益となります。

この構造がわかっているだけで、2,000万円の予算が大きいのか小さいのか逆算ができますし、発注側の事業規模からして、それが安く見積もられた結果出た額なのか、本気度が高いのかを計ることができます⁠⁠。

この視点を知ることは、サイトリニューアルの案件のときに提示された予算の意味を知ることにもつながります。サイトのリニューアルは、それが5年以内のリニューアルである場合、発注側も残りの減価償却費分の損を抱えることになるので、リニューアル後の売上が大幅に上がらない限り、利益が出ないことになります。⁠リニューアルによって利益が大幅に上がるという目算があるということは、それまでのサイトがあまり良くないものであったか、もっと良い制作会社に安く発注できるようになったという背景があると予測できます。そういった知識があるだけで、コンペなどでの提案内容や支払い方法なども手心を加えた提案ができるはずです。こちらに体力があるなら、支払いを分割にすることで発注側の減価償却のリスクを減らす提案もできるでしょう⁠⁠。

安く見られない自分の演出

数理から離れたところでのお客様との関係理解もマネジメントにおいて重要となります。⁠受託側が留意すべきこととして、まずはお客様のビジネスをきちんと勉強して、そのビジネスの中であなたに発注した案件がどれだけ重要なのか、どのような役割を持つのかということを理解することが大切です」と荒井氏は強調します。制作の現場にいる人にとって、ネットの特徴と限界を知っていることは大きな武器となります。それらをわきまえた上で、クライアントの仕事の全体像を理解し、彼らに伝わる言葉に翻訳して伝えることが大切です。

また、⁠安いと思われない立ち居振る舞いや服装は、結構大切です。見た目による評価は常にされていると考えてください」と荒井氏は語ります。これはクライアントとの打ち合わせの際に、常にスーツで行かなくてはならないということではありません。持っている個性や場合によっては、砕けたファッションで見た目と中身のギャップを演出するという方法もあります。

「安く見られない自分というものを演出してどれだけリアルに作っていくのかということが大事なのだと思います。個で立つということは世の中的にもテーマとなっていますが、その本質はこういうところにあると思います⁠⁠。

人件費原価のパフォーマンスで見る組織の価値マネジメント

算数の講義の後半は、人件費原価のパフォーマンスで見る組織の価値マネジメントに関する解説でした。たとえば社内や業務委託で仕事の遅いスタッフがいたとします。マネジメントの方法論としては、人件費が一定の常勤雇用の場合には、トレーニングをする、評価報酬にするなどの方法が考えられますが、一番大事なのは「t値(境界値)が小さいほど優秀である」といったように組織内での職能定義を明確にするということです。一方業務委託の場合には、許容できるt値を決めて、発注額で固定化するという方法が考えられます。いずれにしろ、評価軸を明確にしてマネジメントをするということが重要となります。

t値を下げることと同時に会社としての品質責任を保つためには、お客様の要求水準と内容を正確に把握することが大切です。重要な案件を安心して任せられるエリートチームを社内に作るのも1つの方法です。そのチームの評価を出していくことで、周囲で見ているほかの社員たちも、どのような方向性の仕事が何を基準に評価されていくのかを見て学ぶことができるからです。また、グラフなどビジュアルで解説して、社内での観念を共有した上で指導していくことは、会社としての品質責任を保つためにも必要なこととなります。

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