秋なのに夏のような暑さになったと思ったら、すぐに急激な冷え込みが始まり、「秋を通り越して冬が来たのではないか」と勘違いしてこたつを準備してしまった今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
デザインは、人工知能で変わる
無料でホームページが作成できる「Wix.com」による新しいサービス、「Wix ADI」を紹介したウェブサイト、『Create Your Stunning Website with Wix ADI. It’s Easy.』です。
「Wix ADI」という名前につけられたADIとは、Artificial Design Intelligence(直訳:人口デザイン知能)の略です。その名の通り、人工知能を利用した「Wix ADI」では、ユーザーの入力したさまざまなデータを人工知能が解析し、コンテンツに最適なデザインの提供が行われます。
提供されたデザインに対して、ユーザーがコンテンツを追加・変更する場合は、「Wix.com」で提供しているドラッグ・アンド・ドロップベースのツールを使って、簡単に行えるようになっています。
人工知能でデザインは変えられるか?
ここ数年で、ウェブサイトを自動的に構築してくれるサービスが数多く登場してきました。中でも“人工知能”を使って、アクセス解析の結果を考慮しながら、レイアウトや画像の最適化を自動で行う機能を提供するサービスが次々と登場しています。
こうした人工知能を売りにしたサービスは、どの程度の実力を持っているのでしょうか。この連載でも2年ほど前に、“人工知能”を利用したサービス「The Grid」を取り上げました。「ユーザーが画像とテキストをアップロードすれば、ページの配色や画像のトリミングが行われ、自動的にコンテンツに最適なウェブサイトを構築する」というサービスを実現するということで、当時、大きな話題となりました。
「The Grid」は、先日ようやく正式なサービスが開始されたのですが、お金を払って利用しているユーザーの評判はあまり良くありません。サービス自体のアップデートは頻繁に続いているものの、“人工知能”によって生み出されたというレイアウトや画像の最適化によって構築されたウェブサイトを見る限り、ユーザーの要求を満たすには程遠いレベルだと言わざるを得ません。
こうした中、コンテンツに合ったレイアウトやページ構成をユーザーが選択・決定する、既存のウェブサイト構築サービスも大きく変化しています。「Ameba Ownd」や「Squarespace」といったサービスでは、使い勝手やテンプレートの数・種類だけでなく、デザインの質でも勝負しており、“人工知能”より望ましい結果を生んでいる事例もあります。
“AI”や“人工知能”という言葉を、毎日のニュースでも頻繁に聞くようになりましたが、実際にウェブサイト構築サービスに生かされるかは、まだまだ未知数の部分が大きいと思います。ただし、これからのウェブサイトの制作・運用を考えれば、“人工知能”を生かした、ウェブサイト構築の自動化は、さらに進んでいくことでしょう。「Wix ADI」が、こうした疑念を吹き飛ばすような、素晴らしいサービスとなることを期待したいと思います。
世界中が熱中するコンテンツ
2016年7月6日に配信が始まった、スマートフォン向けアプリ『Pokémon GO』のウェブサイトです。
『Pokémon GO』は、現実世界を舞台に、ポケモンを捕まえたり、交換したり、バトルしたりできるゲームです。スマートフォン向けのAR(拡張現実)技術を利用したゲーム「Ingress」で有名なNiantic, Inc.が制作を担当しており、「Ingress」同様、位置情報を活用したゲームとなっています。
生み出される、新しいコンテンツ
約2週間後の7月22日、日本でも公開された『Pokémon GO』は、アプリのダウンロード数やアプリにおけるユーザーの滞在時間の長さに注目が集まりました。また、最初のアプリ配信時に問題のあった機能を、アップデート時にバッサリと削除する“潔さ”などは、アプリを制作している人たちにとって、有用な事例となったのではないでしょうか。
個人的に面白いと感じた事例としては、『Pokémon GO』から影響を受けた、新たなコンテンツが生み出されているということです。その例として、アメリカのデジタルエージェンシー「R/GA」に所属する、Duncan HogeとGene Luによるプロジェクト、「Pokémon Nike iD」が挙げられます。
「Pokémon Nike iD」は、NIKEのシューズカスタマイズサービス「NIKEiD」を使って、ポケモンをイメージしたシューズをデザインするというプロジェクトです。Tumblr上に公開されているカスタムシューズをクリックすれば、「NIKEiD」経由で購入も可能です。
こうしたインターネット上の動き以外にも、日本では地方の町おこしや店舗の集客への利用や、「レアポケモンがゲットできる」として人々が殺到したため、自殺がなくなった名所(東尋坊)、伊勢神宮や広島平和記念公園のように『Pokémon GO』の利用が禁止される施設や場所ができるなど、日常生活でもさまざまな影響を与えています。良い悪いを含め、今後も社会全体にどのような影響をあたえていくのか、次々と追加されるであろうアプリの新機能を期待しながら、注目していきたいと思います。
日常生活を変える、音声デバイス
Googleのイベント「Made by Google」で正式に発表された、家庭用の音声アシスタント端末、「Google Home」のウェブサイトです。
「Google Home」は、搭載されている対話型音声アシスタント「Google Assistant」でユーザーの音声を判別して、天気やニュースの確認、検索や質問に対する返答、「Chromecast」の操作などが行えるデバイスです。
音声入力で拡大する、インターネットの世界
最近では、家の中のさまざまな機器をインターネット経由で接続し、スマートデバイスなどから自由に操作できる「コネクテッド・ホーム」関連の製品が話題となっています。Appleも同様のデバイスを発表するのではないかという噂も出ていますが、こうした流れは、2014年末にAmazonが発売した音声認識によるアシスタントデバイス、「Amazon Echo」のヒットがきっかけと言えるでしょう。
「Amazon Echo」は、Amazon独自の音声アシスタント「Alexa」を搭載したデバイスで、インターネットに接続すると、音声での質問に返答します。また、各種音楽サービスをコントロールできる音楽スピーカーとなるだけでなく、サードパーティの開発したskill(スキル)と呼ばれるアドオンを追加することで、各種ウェブサービスとの連携を行い、ピザの注文やホテルの予約、タクシーを自宅に呼ぶといったことも可能になります。
“一人に1台”というレベルで、普及の拡大が続く便利なモバイルデバイスですが、タッチやスワイプといった操作方法やアプリのUIを使いやすくしても、まだ十分にインターネットを使いこなせない人もたくさんいます。こうした人にもインターネットを活用してもらおうとした場合、日常で使用している言葉(音声)をインターフェースとして使うことは、実に自然なことです。
現在では、「Google Home」に搭載されているGoogleの「Google Assistant」を始め、Appleの「Siri」、Amazonの「Alexa」、Microsoftの「Cortana」、IBMの「Watson」など、多くの企業が自然言語処理を活かした音声認識に力を入れています。
ベンチャーキャピタルのKleiner Perkins Caufield & Byersのパートナー、Mary Meekerによるインターネットトレンドレポート「INTERNET TRENDS 2016」では、“2020年には音声によるウェブ検索が50%を占めるようになる”と予測されています。近年では、若者を中心にキーボードを使用せず、スマートデバイスから直接音声で検索するという流れも始まっています。2014年のGoogleによる調査では、すでに“10代の若者の半数以上が、音声検索を毎日利用している”というデータもあり、10代の若者たちは、すでに“音声検索の恥ずかしさの壁”を超えているようです。
インターネットの恩恵を十分に受けていないユーザーにとって、音声アシスタントデバイスの登場は、生活が一変する可能性を秘めています。個人的には、音声で操作・検索する行為には若干の恥ずかしさを感じますが、自宅であれば、周りを気にせず、安心して利用できます。 誰もが自由自在にインターネットを利用できるという流れが、さまざまな領域に広がっていく面白い時代になってきたようです。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。