いま,見ておきたいウェブサイト

第166回 2021年特別編 2020年の特徴,2021年のこれから

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2021年もすでに三カ月が過ぎ去りましたが,みなさま,いかがお過ごしでしょうか。⁠Lançamento - Website, What a Wonderful World!』を運営しているLançamento(ランサメント)です。

『いま,見ておきたいウェブサイト』では,2020年も国内外のウェブサイトやウェブサービスなどを紹介してきました。2021年の初回は「特別編」と題して,2020年に登場したウェブサイトやウェブサービスの背景などを振り返りながら,2021年のこれからについて,語っていきたいと思います。

特徴その1 新型コロナウイルスが変えた世界とルール

2020年を一言で振り返れば,⁠新型コロナウイルスとの闘い」と言えるでしょうか。突発的かつ強制的に変えられた環境と新しいルールによって,人々や企業はそれまでの考え方を大きく変え,新たな行動様式への対応を迫られました。

そうした日常生活で起きた,行動の変化を振り返ってみましょう。

「家庭」と行動の変化

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため,企業は在宅勤務を行いました。家庭では仕事の環境を整備する動きが生まれ,高速インターネット回線の契約や仕事用のオフィス家具の購入,仕事の環境を整備するためのDIYなど,新たな需要が生み出されました。

基本的な衣食住の需要は,人との接触を避けることが必要になったため,最低限の行動範囲・回数内で需要を満たす必要がありました。このためオンラインストアや食品宅配サービスの利用者が急増しました。

日本国内では,2019年10月の消費税率引上げに伴う需要平準化対策「キャッシュレス・ポイント還元事業」が昨年6月まで実施されたため,実店舗の購入決済方式として,キャッシュレス決済サービスの普及が進みました。とくに「QRコード決済」は,手数料の安さから多くの小売店が対応して,どこでも使える決済方式として定着してきました。

図1 コロナ禍で利用者を大幅に増やしたデリバリーサービスのひとつUber Eats

図1 コロナ禍で利用者を大幅に増やしたデリバリーサービスのひとつ「Uber Eats」

外食のデリバリーやテイクアウトも好調でした。デリバリーサービスへの対応やドライブスルーなど,人との接触を避けられる販売方法に移行できた企業は,コロナ禍であっても売上を伸ばしました。外的環境の変化に素早く対応できた企業とできない企業の差が如実に現れた一年でした。

「企業」と行動の変化

もっとも大きな影響を受けたのが,ビジネスの現場でしょう。人との接触を避ける必要性から,非常事態宣言時には多くの企業で在宅勤務が実施されました。

仕事の方法も大きく様変わりしました。在宅が基本となり,人と人とが接触する営業は不可能なことから,⁠Zoom」などのビデオ会議システムが急速に普及しました。在宅勤務中でも機密情報を扱う必要性が高まり,セキュリティの強化やVPN(Virtual Private Network)を採用する企業も多くなりました。

図2 コロナ禍で爆発的に成長したZoom⁠。Microsoft Teamsなどライバルも多いが,ビデオミーティングツールの業界標準の位置を確立しつつある

図2 コロナ禍で爆発的に成長した「Zoom」。「Microsoft Teams」などライバルも多いが,ビデオミーティングツールの業界標準の位置を確立しつつある

仕事上で不可欠だったアイテムも見直されました。在宅向けのスーツが開発されたり,ビデオ会議での映りを気にする男性向けの基礎化粧品が販売されるなど,新たな環境に合わせた仕事用アイテムやサービスが誕生しました。

事業内容も大きく見直されました。接客中心の事業を展開する業界では,対面で販売できないため,ECサイトへの投資やサブスクリプションモデルの導入,別業態のサービスとの協業などで店舗の売上低下を補っています。社員の在宅勤務で仕事効率が下がらないことを受け,都心のオフィス縮小や拠点売却を実施するなど,事業におけるオフィスの必要性を考え直す企業も出てきました。

図3 旅行や宿泊の割引と旅行先のお店で利用できる地域共通クーポンによって,観光地の消費を取り戻す事業だったGo To トラベル事業⁠。新型コロナウイルスの感染拡大で停止を余儀なくされた

図3 旅行や宿泊の割引と旅行先のお店で利用できる地域共通クーポンによって,観光地の消費を取り戻す事業だった「Go To トラベル事業」。新型コロナウイルスの感染拡大で停止を余儀なくされた

観光やビジネスでの利用が収入の大部分を占めていたため,宿泊業は需要が激減しました。政府による「Go To トラベル事業」でやや回復の兆しもありましたが,再度の緊急事態宣言発令で現在も大きな影響が出ています。

移動手段の電車や飛行機は,在宅勤務や国内外の移動制限措置で利用者が激減しました。航空業界は人員の削減や旅客機を貨物輸送便に振り替えるなどの施策で踏んばってはいますが,人の移動が自由にならない限り,会社の存続をも揺るがしかねない危険な状況が続いています。

大きな変化を求められたビジネスの現場ですが,厳しい環境下で「本当に必要なものは何か」を考えさせられた結果,今までの無用な慣習や惰性の産物の見直しが進み,変化に対応するための強い組織づくりに予算や人員を費やす一年となりました。

「趣味・エンタメ」と行動の変化

コロナ禍で増加したもののひとつが,個人の可処分時間(自由時間)です。自宅学習やゲーム,映像コンテンツの消費,趣味の時間に使う時間が増え,関連する商品やサービスへの出費も増えました。

新型コロナウイルスの影響が少ない家庭では,給付金などの余剰金を暗号通貨や株式などの金融商品などに振り向ける動きも見られました。この機会に投資活動を始める人も増え,日本ではNISA(少額投資非課税制度)への加入者が大幅に増えました。暗号通貨である「Bitcoin」も,数年ぶりに大幅な値上がりを記録しました。

図4 暗号通貨「Bitcoinv」の価格推移coindesk.comより引用⁠⁠。2020年の一年間で約5倍の値上がりを見せた。現在も価格の上昇は続いている

図4 暗号通貨「Bitcoin」の価格推移(coindesk.comより引用)。2020年の一年間で約5倍の値上がりを見せた。現在も価格の上昇は続いている

娯楽については,インターネットを通じて楽しむことが基本になりました。人との接触が避けられないコンサートやライブ,演劇などの業態では,現在も感染対策と観客の人数制限を行いながら,新しいコンテンツの提供方法を模索しています。

以上,昨年の新型コロナウイルスによる影響を振り返りましたが,新型コロナウイルスによる影響を一言で言えば,それは「需要を満たす行動の変化」であったと考えます。

変化の起きた最大の理由は,⁠人と人との接触⁠が新型コロナウイルスの感染を拡大するという事実です。多くのサービスが対面で行われていたにもかかわらず,人との接触を避けることが必須の条件となり,今までにない方法でのサービス提供を余儀なくされました。

コロナ禍でも人々の需要は減りませんでした。人との接触を避けられるサービスを利用して,今まで通りの需要を満たすように人々は行動を変化させ,サービスの提供側も行動の変化に対応した新しいサービスを提供する流れが生まれました。

「需要を満たす行動の変化」が,一過性か持続性かはわかりません。ただ少なくとも,企業には,急激な環境と需要の変化に素早く対応する柔軟性とスピード,そして新たなサービスを生み出す創造性が強く求められています。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。