はじめまして。株式会社博報堂の熊谷です。
筆者は広告会社の黒子として広告やマーケティング,
このたび
数理モデリングとは何か
そもそもタイトルにある
現象を理解するために立てる数理的な仮説を数理モデル,
また数理モデルを立てることを数理モデリングと言います
と定義しています。では,
筆者は
たとえば,
なぜ筆者はグラノーラを食べているのでしょうか。理由は栄養素でしょうか,
なぜパンや白米ではなくグラノーラを選んだのでしょうか。一緒に食べるのがなぜ牛乳ではなくヨーグルトなのでしょうか。筆者の朝食にもう一品提案するとしたら何が良いでしょうか。チーズ,
筆者はこれから何日間グラノーラを食べ続けるのでしょうか。1週間でしょうか。1ヵ月でしょうか。半年でしょうか。生涯グラノーラを食べ続けるかもしれません。いつになったら飽きるのでしょうか。飽きるきっかけがあるのでしょうか。飽きたら次は何を食べるのでしょうか。
このように,
モデリングにまつわる2つのエピソード
「数理モデリングとは何か」
1つ目はとある分野の第一線で活躍する先輩研究者が披露していた
- ※)
- この画像は,
クリエイティブ・ コモンズ・ 表示・ 継承ライセンス3. 0のもとで公表されたウィキペディアの項目風神雷神図 - Wikipediaを素材として二次利用しています。
彼の主張は,
- 昔の日本人は天候の変化を
「雨や風は風神の風袋によって引き起こされる」 「雷は雷神の太鼓によって引き起こされる」 だと信じていた - これは彼らなりに気象現象を
「風神」 と 「雷神」 という, 直接観測できない要因 (これを専門用語で潜在変数latent variableと呼びます) 2つを用いてモデリングしていたのである - とはいえ現代の我々は風神も雷神も存在せず,
雨風や雷が彼らによるものではないことを知っている - その代わり,
さまざまなセンサーによって計測されるデータに基づいて 「どのように気象現象が発生するか」 をモデリングしている - これは気象だけでなく,
自然言語やマーケティング, 金融といった他の領域にも言えることだ - まとめると
「どのような要因や構造によってその現象が発生しているのか」 を考えることがモデリングであり, 研究である
というものです。
筆者のモデリングに対する考え方は,
しかし,
新卒で配属された職場では,
2つ目は夏目漱石の小説
数々の国宝や重要文化財を残した鎌倉時代の仏師である運慶。彼が仏像を彫る姿を見ていた主人公と見物人が以下のやりとりを行います。
若い男は,
すかさず, 「あの鑿と槌の使い方を見たまえ。大自在の妙境に達している」 と云った。 運慶は今太い眉を一寸の高さに横へ彫り抜いて,
鑿の歯を竪に返すや否や斜に, 上から槌を打ち下おろした。堅い木を一ひと刻みに削けずって, 厚い木屑が槌の声に応じて飛んだと思ったら, 小鼻のおっ開いた怒り鼻の側面がたちまち浮き上がって来た。その刀の入れ方がいかにも無遠慮であった。そうして少しも疑念を挾んでおらんように見えた。 「よくああ無造作に鑿を使って,
思うような眉や鼻ができるものだな」 と自分はあんまり感心したから独言のように言った。するとさっきの若い男が, 「なに, あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋っているのを, 鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」 と云った。 自分はこの時始めて彫刻とはそんなものかと思い出した。はたしてそうなら誰にでもできる事だと思い出した。
- ※)
- 青空文庫
『夢十夜』 より引用。底本: 『夏目漱石全集10巻』 ちくま文庫, 筑摩書房, 1988 (昭和63) 年7月26日第1刷発行, 1996 (平成8) 年7月15日第5刷発行。底本の親本: 『筑摩全集類聚版夏目漱石全集』 筑摩書房, 1971 (昭和46) 年4月~1972 (昭和47) 年1月
筆者はデータに基づく数理モデリングの多くはこのような作業ではないと考えています。これは先ほどの話とは矛盾するように聞こえるかもしれません。
多くの人々
しかし多くの場合,
そのため,
では,