プログラマに優しい現実指向JVM言語 Kotlin入門

第2回開発環境の構築

第1回では導入としてKotlinの概要や特徴について解説しました。今回はKotlinで実際に開発を始めるための環境を整える方法を紹介します。

開発環境を準備する

前回の記事でKotlinの魅力を知っていただけたでしょうか。それではコードを実際に書いて、遊んでみませんか。今回は、Kotlinを実行する開発環境として次の方法を紹介します。読者の皆さんの用途に合わせて利用してください。

  • Webブラウザで利用できるエディタ
  • シンプルなCLIコンパイラ
  • IntelliJ IDEA

Webブラウザで利用できるエディタ

先に挙げた中でもっとも手軽で簡単な方法がWebブラウザ上で開発する方法です。JetBrainsが提供するKotlin Web Demoを利用します。Webブラウザから次のURLにアクセスしてください。

アクセスすると図1のような画面が表示されます。

図1 Kotlin Web Demo
図1 Kotlin Web Demo

中央にコードを編集するエリア(=エディタ)があり、最初のアクセス時にはHelloWorldコードが入力された状態になっています。ここに入力されているコードを実行するには画面右側にある再生マークの実行ボタンをクリックします。コードが実行されると、その結果がコンソールに出力されます。

エディタはシンタックスハイライト機能はもちろんのこと、コードの補完機能まで備えています。コードの補完機能を有効にするために画面右側の[Type checking]のところで[Server]を選択します図2⁠。これでコードの補完機能が有効になりました。試しにエディタにlistOf(1, 2, 3).と入力します。最後の.を忘れないでください。ここで[Ctrl]キーと[Space]キーを同時に押してください。するとアクセス可能なメンバの一覧が表示されます。

図2 コードの補完
図2 コードの補完

シンプルなCLIコンパイラ

手持ちのマシンの上でコマンドからコンパイルを実行する方法です。皆さんが現在使用されている任意のエディタでコーディングできます。

コンパイラを入手するには次のURLよりKotlin公式サイトへアクセスしてください。

公式サイトへアクセスしたら[Download compiler]をクリックしてください。Githubのページが開くので「kotlin-compiler-0.10.195.zip[1]⁠」をクリックしてZIPファイルをダウンロードします。

ダウンロードしたZIPファイルを展開すると、kotlincファイル[2]としてKotlinソースファイルをコンパイルするためのスクリプトが得られます。皆さんが使用されているPC環境に合わせて、ここへのパスを通しましょう。

コンパイラの準備は以上です。次にコンパイラを使用して、Kotlinソースファイルからclassファイルへコンパイルしてみましょう。

リスト1の内容を記述したファイルをHelloWorld.ktとして任意の場所に保存します。拡張子ktはKotlinのソースファイルのための拡張子です。

リスト1 デフォルトパッケージのHelloWorld
fun main(args: Array<String>) {
  println("Hello, world!")
}

ターミナルを起動し、カレントディレクトリをHelloWorld.ktが保存されているディレクトリに変更します。そして次のようにコマンドを叩きます。

$ kotlinc HelloWorld.kt
$

行頭の$は便宜上、プロンプトを意味する記号とします。メッセージが出力されることなく次のプロンプトが表示されればコンパイル成功です。lsコマンドなどで同ディレクトリ内にclassファイルが作成されているのが確認できます。

コンパイルで得られたclassファイルを実行するにはjavaコマンドを使用します。ただし実行に際して、Kotlinランタイムkotlin-runtime.jarが必要です。また、実行対象のclassファイルは_DefaultPackage.classです[3]⁠。次のようにクラスパスを指定してjavaコマンドを実行してください[4]⁠。Hello, world!と画面に表示されれば成功です。

$java -cp $KOTLIN_HOME/lib/*:./ _
DefaultPackage
Hello, world!
$

IntelliJ IDEA

最後に紹介するのはIDE(統合開発環境)であるIntelliJ IDEAを使う方法です。このIDEをダウンロードするには次のURLへアクセスしてください。

無償版であるCommunity Editionをダウンロードします。ダウンロードが完了したらお使いの環境に合わせてインストールしてください。

IntelliJ IDEAを起動すると図3のような画面が表示されます。

図3 IntelliJ IDEAの最初の起動
図3 IntelliJ IDEAの最初の起動

まずはKotlinプラグインを導入しましょう。画面右下の[Confi gure⁠⁠→⁠Plugins]からプラグインの設定画面を開きます。

プラグイン設定画面を開いたら下部にある[Install JetBrains plugin...]ボタンをクリックします。インストール可能なプラグイン一覧が表示されるので、検索用テキストフィールドに「kotlin」と入力してプラグインを絞り込みます。Kotlinプラグインを見つけたら右側の[Install plugin]ボタンを押してプラグインをインストールします。プラグインのインストールが完了するとIntelliJ IDEAの再起動を促されるので再起動します。そうすると、ふたたび図3のような画面が表示されます。

次はKotlinプロジェクトを作成して開発を始めましょう。⁠Create New Project]をクリックしてプロジェクト新規作成ウィザードを開きます。このウィザードの質問に適切に答えていき、プロジェクトを作成します。

途中、Kotlinランタイムの設定をする図4のような画面があります。⁠Kotlin runtime][Create...]をクリックし、表示されたダイアログをそのまま[OK]をクリックするようにしてください。

図4 Kotlinランタイムの設定
図4 Kotlinランタイムの設定

プロジェクトを作成し、ウィザードが消えてエディタが表示されたら、Koltinソースファイルを追加します。srcディレクトリを選択した状態で、右クリックをし、Kotlinファイルを選んでソースファイルを作成します。ファイル名を聞かれるので「HelloWorld」としておきましょう。ソースファイルを作成するとすぐさまエディタ上に開かれるのでリスト1の内容を記述します。コンパイル&実行するにはメニューバーから[Build⁠⁠→⁠Run...]を選びます。すると実行対象を選択するダイアログが表示されるので[_DefaultPackage]を選んでクリックします。うまくいけばコンパイルが実行され図5のように出力結果が表示されます。

図5 実行結果
図5 実行結果

まとめ

今回はKotlinの3つの開発環境とその導入方法、使い方を紹介しました。

Webブラウザ上で手軽に利用可能なKotlin Web Demoはちょっとした実験コードを試すにはうってつけです。基本的にはIntelliJ IDEAを使用してKotlinプログラミングを進めていくことになると思います。こだわりのエディタがある人には、シンプルなCLIコンパイラがおすすめです。

次回はKotlinの基本的な文法/機能を解説します。Kotlinの興味深い機能である、クロージャやNULL安全、拡張関数などを学習するための助走が狙いです。

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