OSSデータベース取り取り時報

第51回 「企業ITシステムのモダナイゼーションとデータベース最新状況」報告,MySQL 8.0.18リリース,PostgreSQL 12リリース

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[MySQL]2019年10月の主な出来事

2019年10月はMySQLサーバー8.0.18をはじめ,商用版およびコミュニティ版のほぼ全ての製品のマイナーバージョンアップが行われました。10月3日には,ゲーム業界向けのMySQLセミナーが開催され,MySQLの最新動向に加えてOracle CloudやGraalVMのご紹介,事例としてスクウェア・エニックス,グリー,f4samurai, LINEという豪華ラインナップのイベントでした。

SSLライブラリのOpenSSLへの統一

10月にリリースされたMySQL 5.7.28と5.6.46のコミュニティ版はTLS/SSLライブラリとしてOpenSSLのみがサポートされることとなりました。これまで利用されてきたyaSSLを使ってのコンパイルはできなくなっています。なお,MySQL 8.0では8.0.4 RCからコミュニティ版のMySQLサーバーに同梱されるライブラリがyaSSLからOpenSSL に変更され,スタティックリンクからダイナミックリンクとなりました。

商用版は以前のメジャーバージョンからOpenSSLを利用していましたが,コミュニティ版はGPL v2とOpenSSLライセンスの互換性の問題からyaSSLを採用していました。OpenSSLの採用に伴い,コミュニティ版のライセンスはOpenSSLに関する例外条項付きのGPL v2となっています。

MySQL 8.0.18の新機能

MySQL 8.0.18の主な新機能は下記の通りです。

ハッシュ結合(Hash JOIN)のサポート
複数のテーブルのインデックスのない列どうしの等価結合の際に選択されるアルゴリズムとしてHash JOINがサポートされました。特に対象のデータ量が大きい場合にネステッド・ループ結合と比較して処理性能の向上が期待できます。
ハッシュ結合の利用にあたってはJOINバッファのサイズを設定するMySQLサーバーのパラメタ join_buffer_size が重要となります。結合するテーブルのうち最小のものの列のハッシュ値をメモリ上に格納し,他のテーブルのレコードのマッチングをメモリ上で完結させます。しかしハッシュ値となったデータのサイズがJOINバッファのサイズを超えてしまうと,JOINバッファに納まらなかったデータはディスク上に置かれるため,性能面で不利になります。
ヒント句(HASH_JOIN または NO_HASH_JOIN)でハッシュ結合の利用の有無を指定することもできます。
EXPLAIN ANALYZEの追加
オプティマイザによる実行計画の詳細を確認できるEXPLAIN ANALYZEが追加されました。クエリのコストや推定される結果行数に加えて,最初と最後の結果が戻されるまでの推定レイテンシ,イテレーターやループの情報などが出力されるようになります。

ゲーム業界向けのMySQLセミナー

こちらのイベントで登壇された,オンラインゲーム展開する4社の事例をご紹介します。

株式会社スクウェア・エニックス 野島 貴英様
「MySQL 8へのバージョンアップの愛をアジアのコミュニティで叫んでみた」というテーマで,スクウェア・エニックスのスマートフォン向けやPCブラウザ向けのオンラインゲームのインフラをMySQL 8.0にバージョンアップする過程をご紹介いただきました。あわせて野島様を含めた同社のインフラエンジニアの方々がOracle OpenWorldや台湾のCOSCUP, シンガポールのFOSSASIAなど海外イベントで講演された経験を共有していただきました。
グリー株式会社 瀬島 貴則様
「InnoDBのすゝめ 」のテーマでゲームインフラ向けのMySQL活用ノウハウを多数ご紹介いただきました。ゲームインフラを長年支えてきたからこそのTipsや,カジュアルにMySQLサーバーのソースコードレベルでの話になるなど瀬島様ならではのディープなセッションで,30分ではカバーしきれない幅広い話題が印象的でした。
株式会社 f4samurai 松野 洋希様
オルタンシア・サーガ -蒼の騎士団-マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝などが代表作の株式会社 f4samuraiからはCTOの松野様が登壇。オルタンシア・サーガのサーバーサイドの設計をご紹介いただきました。MHAとMySQLのレプリケーションに加えて,memcachedをキャッシュとして組み合わせた構成,サーバーサイドのプログラムはJavaベースとなっています。なお,同社ではサーバーサイドをはじめとしてゲームプランナーやデザイナーなど幅広い職種で人材募集中とのことでした。
LINE株式会社 大塚 知亮様
このイベント最後の事例セッションは大塚様による「LINEにおけるMySQLのスケール戦略とコスト最適化」でした。LINEゲームのインフラには600台を超えるMySQLサーバーが稼働中で,5.5のサーバーはより新しいバージョンへの移行プロジェクトが進行中とのことでした。独自の監視ツールのご紹介もあり,MySQLの稼働監視ツールmyStatusgoはオープンソースとしても公開されています。大塚様が開発されているツールで,MySQLのクライアント・サーバー間の通信パケットからクエリを抽出して負荷テストや動作検証を行うためのMySQL Query Replayerを,このイベントに合わせてオープンソースとして公開されました。

こちらのイベントの資料はmysql.comからダウンロードできます。

[PostgreSQL]2019年10月の主な出来事

PostgreSQL 12の正式リリースがトップニュースです。

新メジャーバージョン12が正式リリース

新メジャーバージョンのPostgreSQL 12が,10月3日に正式リリースされました。バージョン12の概要については,本連載47回で概要をまとめています。また,前述のOSC 2019 .EnterpriseでもSRA OSS北山さんがわかりやすく解説され資料も公開されていますので,それらをご参照ください。

ここでは,バージョン12の新機能の抜粋を列挙しておきます。

  • JSON path
  • 生成列(式を使って計算される列)
  • 大文字小文字を区別しない比較
  • インデックスの機能追加・性能改善
  • パーティショニングの改善
  • プランナのWITH句の最適化
  • MCV拡張統計情報
  • ページチェックサム改善
  • 認証処理の拡充
  • テーブルAMインタフェース追加
  • その他にいくつかの仕様変更点

JPUG PostgreSQL Conferenceのテーマは「PostgreSQLは生き残れるか?」

日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)主催のPostgreSQLの総合カンファレンス,「PostgreSQL Conference Japan 2019」が開催されます。注目する講演やテーマをいくつかピックアップします。

  • Project Tsurugi(劔)の状況:第3回OSSデータベース比較セミナー「Tsurugi」の名称が初めて発表されましたが,基調講演にてその次世代DBMS開発プロジェクトの状況が説明されます。
  • GIS(地理情報システム⁠⁠,IoT,Kubernetesでの利用など最新技術動向のセッションが設けられています。
  • ユーザ事例の発表もあります。
  • 新バージョンPostgreSQL 12についてのセッションももちろんあります。

OSS-DB認定者数上位企業発表

OSS-DB技術者認定試験は,LPI-Japanが実施するPostgreSQLの技術力認定試験です。この認定試験の2つのランクであるGoldとSilverについて,所属企業別の認定者数ランキングが発表されました。PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)などで活動している企業が多くランクインしていますが,その他にもPostgreSQL技術者の育成に取り組んでいる企業が見受けられるのが興味深い点です。

2019年11月以降開催予定のセミナーやイベント,ユーザ会の活動

オープンソースカンファレンス 2019 福岡/東京

日時 福岡:2019年11月9日(土)
東京:2019年11月23日(土⁠⁠,24日(日)
場所 福岡:九州産業大学 12号館
東京:明星大学 日野キャンパス 28号館
内容 福岡では日本MySQLユーザ会と日本オラクルのMySQLチームによるMySQLに関する講演とブース展示,JPUGによるPostgreSQLに関する講演とブース展示が予定されています。また,OSSコンソーシアムも出展します。東京では日本MySQLユーザ会によるMySQLに関する講演とブース展示(土曜のみ)が予定されています。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

MySQL Innovation Day 2019

日時 東京:2019年11月7日(木)11:00-17:00(10:30受付開始)
大阪:2019年11月8日(金)14:30-19:30(14:00受付開始)
場所 東京:富士ソフトアキバプラザ アキバホール
大阪:日本オラクル株式会社 西日本支社 関西オフィス
内容 MySQLの開発チームやプロジェクトマネージャーが来日してMySQLの最新情報をお届けするMySQL Innovation Dayが1年ぶりに東京と大阪で開催。初来日となる高可用性担当のプロダクトマネージャー Kenny Grypからは,MySQLユーザー待望のクローンプラグインをはじめとしたInnoDB Clusterの最新機能を解説します。
主催 日本オラクル MySQL GBU

PostgreSQL/PowerGres ハンズオンセミナー

日時 2019年11月14日(木)15:00~17:00他
場所 SRA グループ池袋オフィスビル
内容 PowerGres の全体像を理解しつつ,実際に機能を体験できるコースで,ノートPCを持参すればインストール・設定までを行うことができます。
主催 SRA OSS Inc.

PostgreSQL Conference Japan 2019 ~ PostgreSQL は生き残れるか? ~

日時 2019年11月15日(金)
場所 AP品川(東京都港区)⁠品川駅」高輪口より徒歩3分
内容 PostgreSQL の総合カンファレンスとして,PostgreSQL 自体の進化とコンピューティング環境の変化への対応をディスカッションできるイベント。チュートリアルトラックもあります。参加にはチケット購入が必要です。懇親会への参加券も発売されています。
主催 日本PostgreSQLユーザ会 ⁠JPUG)

MySQL Technology Cafe #6

日時 2019年12月18日(火)
場所 日本オラクル株式会社 本社 13F
東京都港区北青山2-5-8
内容 オラクルのテクノロジーに限定しない,開発者による開発者のための開発者向けコミュニティ Meeutp セミナー「Oracle Code Tokyo Night」の企画として開催されているMySQL Technology Caféの第6回開催。内容はMySQL 8.0で強化された地理情報システム(GIS/Geographic Information System⁠⁠,詳細が決定次第Oracle Code Night のページにて公開予定です。
主催 Oracle Code Night

著者プロフィール

梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。


溝口則行(みぞぐちのりゆき)

TIS株式会社

OSSコンソーシアム副会長,オープンソースビジネス推進協議会(OBCI)副理事長。その他,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons),日本OSS推進フォーラムなどにも少しずつ関与。勤務先メンバに,PostgreSQL,Zabbix,Ansibleやコンテナ技術などに強みのある癖のある芸人を抱え,タレントマネージャ業が中心になりつつある。