OSSデータベース取り取り時報

第73回新刊オープンソースの教科書』、MySQL Autopilotリリース、 PostgreSQLは関連セミナーとマイナーリリース

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

新刊『オープンソースの教科書』

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OSS全般を扱った入門書が久しぶりに刊行されました。以前に比べるとOSSはすっかり普通のものになりましたが、OSSのライセンスやコミュニティなど、OSS固有の点を理解するための情報源はまだまだ必要です。この本はオープンソースとは何か、歴史、ライセンス、オープンソースを利用したビジネス、オープンソースの事例などの概要がわかる1冊です。OSSデータベースについても第8章の中で、MySQL、PostgreSQL、その他にNoSQLのいくつかが紹介されています。印刷された単行本の他にPDF版も販売されています。またオープンソースカンファレンスの書籍プレゼントにも入っています。

[MySQL]2021年8月の主な出来事

2021年8月のMySQLの製品リリースは、MySQL for Visual Studio 1.2.10のみでした。MySQL for Visual StudioはMicrosoft Visual Studio 2019および2017での.NETアプリケーション開発を支援するパッケージです。MySQLサーバー内のオブジェクトをVisual Studioに直接統合し、サーバー エクスプローラーからテーブルの作成や検索、データの変更などを行えます。

MySQL Database Serviceの新機能として、運用やチューニングを自動化する「MySQL Autopilot」がクエリ・アクセラレータのHeatWaveに追加されました。

MySQL Autopilotによる自動化

MySQL Autopilotはデータベース管理者によるHeatWaveの設定や運用を自動化します。8月10日深夜に開催されたオラクルのオンラインイベントOracle Liveにて発表されました。自動化の裏側では機械学習による学習と予測が広く活用されています。MySQL Autopilotで提供される自動化の機能は以下の通りです。

自動プロビジョニング (Auto Provisioning) HeatWaveノードのメモリ上にMySQLサーバーから展開されるデータ量の見積もりを最小のサンプリングになるように自動調整して時間を短縮し、最適なクラスタサイズを予測
自動並列ロード (Auto Parallel Loading) MySQLサーバーからHeatWaveノードへのデータロードに最適な並列度をテーブルごとに予測し、ロード時間とメモリ使用を最適化
自動データ配置 (Auto Data Placement) HeatWaveにロードするテーブルをパーティショニングのために利用する列「データ・プレイスメント・キー」を予測
自動エンコーディング (Auto Encoding) テーブル内の文字列型のレコードの格納方式をHeatWaveノードに格納するか、MySQLサーバーノードのメモリー上に格納するかについて、実行されたクエリからどちらの形式が最適化を予測し推奨
自動クエリー計画改善 (Auto Query Plan Improvement) 実行されたSQLからの各種統計情報をHeatWaveノードが学習し、以後のHeatWave内での実行計画を改善
自動クエリー時間予測 (Auto Query Time Estimation) クエリの実行時間を実行前に予測し、ユーザーが処理時間の長いクエリを実行するかの判断を支援
自動変更伝播 (Auto Change Propagation) MySQLサーバー内で行われた変更点をHeatWaveノードのスケールアウト・データ管理レイヤーに反映するタイミングを学習結果から決定
自動スケジューリング (Auto Scheduling) 実行前のクエリについて実行時間が短いものを優先して実行に移すことで、全体的な処理待ちの時間を短縮
自動エラーリカバリ (Auto Error Recovery) HeatWaveノードの障害時に自動的にノードとプロビジョニングにして復旧

このMySQL AutopilotはHeatWaveの標準機能で追加費用は一切不要です。MySQL Autopilotによりさらにクエリ処理性能が向上し、機械学習を活用した予測によって性能向上のためのテーブル定義の変更にかかる時間を精度高く見積もることができます。

MySQL Database Service以外のクラウドデータベースでは類似した機能さえ提供されていない、機械学習の活用した先進的な機能となっており、他社のサービスと比較して分析処理性能が高く運用効率の良いクラウドデータベースをより安価に利用可能となっています。

[PostgreSQL]2021年8月の主な出来事

8月は既存のバージョンと次期メジャーバージョンのベータ版のマイナーリリースがありましたが、その前に、7月末に開催されたオープンソースカンファレンスからPostgreSQL関連セッションを紹介します。

オープンソースカンファレンス2021 Online KyotoでのPostgreSQL関連セッション

オープンソースカンファレンス(OSC)がオンラインで開催されるようになってから約1年半になりました。例年は猛暑の京都で開催されていた夏のOSC7月30日と31日に2度目のオンライン開催となりました。PostgreSQL関連でいくつか興味深い発表がありましたので紹介します。OSCでの発表は資料や動画が公開されているものが多くありますので、詳しく知りたい方はご利用されるとよいでしょう。OSSデータベース以外も含めた全体の開催レポートも公開されました。

知っておきたい時系列データベースTimescaleDB入門(資料あり、動画あり)

この連載でも2年前に紹介しましたが、TimescaleDBはPostgreSQLに拡張機能を導入して膨大な時系列データを扱いやすくしたものです。たとえばIoTセンサーからの計測値データやZabbixの様な監視ツールのデータなどが時系列データの代表でしょう。SRA OSS Inc. 日本支社の佐藤さんによるこのセッションでは、TimescaleDBのインストール方法から、実際に使う場合の入門的なノウハウまでをわかりやすく説明されています。

”爆速!”を実現するPG-Strom v3.0の新機能(資料あり、動画あり)

PG-Stromは、GPU(Graphics Processing Unit)の並列処理能力と、NVMe(Non-Volatile Memory Express)などの高速ストレージ技術を最大限活用してPostgreSQLを超高速化する拡張機能です。PG-Stromの開発者であるヘテロDBの海外さんによるこのセッションでは、なぜ高速化が実現出来るのかの技術の基礎や高速化のチャレンジの経緯などが説明され、技術が大好きな方にお薦めのセッションです。

その他に

「DockerでPostgreSQLを使ってみよう」では、DockerでPostgreSQLを動かす方法や 拡張機能の導入方法について、日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)関西支部から発表されました。

「PgMulti(PostgreSQL用マルチメインDBツール)の検討と構築」では、PgMultiというPostgreSQL用ミドルウェアの開発状況について、MyDNS.JPのT.Kabuさんから発表されました。PgMultiは、物理的な距離がある(遅延の大きいネットワークを介した)複数のPostgreSQLサーバそれぞれがメインとなるデータベースを持てるようにするツールとして開発が進んでいるそうです。

既存バージョンと次期バージョンのマイナーリリース

8月12日に既存バージョンのバグ修正リリースと次期メジャーバージョン14の新しいベータ版が揃ってリリースされました。

PostgreSQL 13.4、12.8、11.13、10.18、9.6.23

既存の全てのメジャーバージョンに対するバグ修正リリースになります。セキュリティの脆弱性への対応と、その他の多数のバグ修正を含んでいます。リリースのお知らせではセキュリティ修正は1点(CVE-2021-3677)が記されていますが、日本PostgreSQLユーザ会の記事によると、もう1点のセキュリティ修正(CVE-2021-3449)も含まれているとのことです。

CVE-2021-3677:特定のクエリでのメモリ開示

バージョン 11〜13 が影響を受けます。特定のクエリがサーバメモリの任意のバイトを読むことができる問題がありました。

CVE-2021-3449:TLS/SSL再ネゴシエーションに関する問題

TLS/SSLの再ネゴシエーションは以前のバージョンですでに無効化されていましたが、クライアントから要求があった場合に再ネゴシエーションが行われる場合がありました。

次期メジャーバージョン14のベータ3がリリース

5月に最初のベータ版がリリースされてから3つ目のベータ版です。このベータ3では、マルチレンジタイプのunnest関数の修正といくつかのバグ修正がなされています。いよいよ正式リリースが近づいてきた様子が感じられますが、予定ではベータ版に続いて最低1回はリリース候補版が出されてから、正式リリースとなるようです。

PostgreSQL 14検証報告

まもなく正式リリースとなるPostgreSQL 14のベータ版を使って、実際に稼働させてみた検証報告が、SRA OSS Inc. 日本支社から発表されました。リリースノートだけではわからないような点、たとえば性能向上がどの程度なのかなどについても報告されています。また、コマンド実行手順も詳細に記載されていますので、実際に新機能を確認されたい方のガイドブックにもなります。60ページを超える大作です。

なお、この検証報告はベータ版に基づいていますので、正式リリース版では状況が変わる部分があるかもしれません。また、このレポート自体も8月中に更新がされているようで、今後も更新される可能性がありますので、ときどきWebサイトをチェックされるのが良いと思います。

2021年9月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動

Apache Cassandra 1.0-2.0系 Upgrade Information

日程 2021年9月2日(木)15:00~15:40
場所 オンライン開催
内容 Apache Cassandraの新バージョン4.0が公開されましたので、1.0系 , 2.0系をご利用中の方を対象としたアップグレードに関する情報をお伝えするセミナーです。
主催 INTHEFOREST(インザフォレスト)

Apache Cassandra トレーニング 基礎編

日程 2021年9月30日 ⁠木)10:00~17:00
場所 オンライン開催
内容 Cassandraとはどのようなデータベースなのか、Cassandraを使うメリットやデメリット、用語、基本動作を理解する基礎編です。本トレーニングは有償セミナーです。
主催 INTHEFOREST(インザフォレスト)

オープンソースカンファレンス 2021 Online/Hiroshima

日程 2021年9月18日(土)10:00~18:00
場所 オンライン開催(ZoomおよびYouTube Live)
内容 オープンソースカンファレンスは、オープンソースの「今」を伝える総合イベントとして、東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで全国各地で開催しています。例年は広島で開催されていたこの回も今年はオンライン開催となりました。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

SRA OSS Inc. PostgreSQL / PowerGres ハンズオンセミナー

日程 2021年9月9日(木)15:00~17:00
場所 SRAグループ池袋オフィスビル
内容 PowerGresの全体像を理解しつつ実際に機能を体験いただくコースです。ノートPCを持参すると、インストールや設定を行うことができます。
主催 SRA OSS, Inc.

PostgreSQLカンファレンス2021

日程 2021年11月12日(金)10:00~18:00
場所 AP日本橋(東京都) ⁠東京駅より徒歩5分)
内容 ユーザ会(JPUG)主催の、PostgreSQLの総合カンファレンスです。午前は基調講演 を含む2講演を予定、午後は3トラックにて12 講演程度が予定されています。スポンサーとスタッフ募集中です。参加チケットは9月15日から発売開始予定です。
主催 日本PostgreSQLユーザ会

MySQL Cloud Day Japan 2021

日程 2021年9月中旬(日程調整中)
場所 オンライン(Zoom)
内容 MySQL Database ServiceとHeatWaveの最新技術動向を学べるオンラインイベントです。このイベントではMySQL Autopilotでの機械学習が支える自動化による運用効率向上のポイントや、MySQL Database ServiceおよびHeatWaveの新機能による拡張性について解説いたします。HeatWaveを導入されてコスト削減とシステムの運用向上を実現されたお客様から導入の経緯や効果についてお話しいただきます。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

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