OSSデータベース取り取り時報

第75回 Project Tsurugi(劔)報告会,MySQL 8.0.27リリース,PostgreSQL 14最新情報をオープンソースカンファレンスから

この記事を読むのに必要な時間:およそ 5 分

[PostgreSQL]2021年10月の主な出来事

前回「PostgreSQL 14はリリースされた?」と思わせぶりなタイトルを付けてしまったPostgreSQL 14ですが,めでたく9月30日に予定通りの正式リリースとなりました。9月と10月に開催されたオープンソースカンファレンス(OSC)ではこの新バージョンを取り上げたセッションが行われていました。また,新バージョン情報以外の関連セッションも合わせて紹介します。

「PostgreSQL 14がやってくる」

これは9月に開催されたOSC 2021 Online/Hiroshimaでの日本PostgreSQLユーザー会(JPUG)の発表です。発表者はこの連載でも紹介させていただいたQiitaの「PostgreSQL 14がやってくる」の執筆者である原田登志さんです。Qiitaの記事と同様にベータ版を使った動作検証の結果を中心にして,PostgreSQL 14の新機能や改善点を説明されています。発表の様子はYouTubeのOSPN.jpチャンネルでアーカイブ配信されています

「PostgreSQL 14 最新情報解説 ~PostgreSQLスペシャリストがPostgreSQLの概要から最新バージョンまで解説~」

10月22日〜23日に開催された通算⁠約⁠200回記念の「OSC 2021 Online/Fall」でのSRA OSS 高塚遥さんの発表です。こちらもPostgreSQL 14の代表的な新機能をいくつかピックアップして解説されています。上記の原田さんとはあまりかぶらずに,次の点を取り上げてくれています。

  • Btreeインデックス肥大化防止
  • 高速なデータ圧縮格納
  • ロジカルレプリケーションのストリーミング対応
  • グラフデータに使える再帰問い合わせ新機能
  • 参照専用システムロール

発表では特徴を示すだけでは無くて,実際に稼働させて効果を測定した結果を報告されています。Btreeインデックスの肥大化を例にすると,PostgreSQL 13ではautovacuumオフだと2倍以上に肥大化するケースにおいて,PostgreSQL 14では同じくautovacuumオフでも肥大化を抑えている様子がよくわかります。

このセッションの発表資料ですが,本記事執筆時点ではOSCのWebサイトには載っていないようですが,SRA OSSのセミナー資料のページには掲載されています

その他のPostgreSQLセッション

新しいメジャーバージョンのリリース直後ですので,どうしてもそちらへの関心が高くなりますが,その他にもPostgreSQLの有益な,または興味深い挑戦の発表もありました。⁠OSC 2021 Online/Fall」では会期の2日間に,全部で4つのPostgreSQLの発表がありました。

「PostgreSQLモニタリングの基本とNTTデータが追加したモニタリング新機能」は,DBの安定運用には欠かせないモニタリング(監視)についての技術情報の発表です。PostgreSQLが持っているモニタリングのための機能,pg_stat_database,pg_stat_activity,pg_stat_statement,pg_locksなどがひととおり説明されました。後半はNTTデータが開発して新バージョンのPostgreSQL 14に取り込まれているモニタリングのための新機能が紹介されました。

「PostgreSQLをK8s上で活用するためのOperator入門」では,Kubernetes(k8s)上でPostgreSQLを稼働させるのに有益なOperatorの総まとめ的なレクチャーでした。PostgreSQL用のOperatorが複数あることは知られていますが,それらの特徴や違いについてよく整理して発表していただいたので,これから選択する際には有益な情報源となります。

「PostgreSQLとArrowとGPUで楽々大量データ処理」は,GPUを使ったPostgreSQLの処理を高速化するPG-Stromを開発されているHeteroDB海外さんによる発表です。このPG-Stromは最近のOSCでは常連のセッションで,これだけでも技術好きには興味深いものですが,今回はさらに列指向データストアであるApache Arrowを組み合わせたチャレンジを発表されました。

今回記事の冒頭でも紹介したProject Tsurugiもそうですが,DBを劇的に速くする工夫は,実はまだまだ可能性がたくさんあることがよくわかりますし,実際に取り組まれている方の発表は良い刺激を受ける機会になります。

OSCの発表は,資料や発表動画が事後に公開されるものがたくさんあります。ただ,今回紹介したOSC 2021 Online/Fallは開催から日数も浅いので,記事執筆時点では未掲載のセッションが多数あります。興味を持たれたセッションがあれば,ときどき「OSC 2021 Online/Fall」のWebサイトをチェックされると良いでしょう。

2021年11月以降開催予定のセミナーやイベント,ユーザ会の活動

PostgreSQLカンファレンス2021

日程 2021年11月12日(金)10:00~18:00
場所 AP日本橋(東京都)(東京駅より徒歩5分)※会場での通常開催です。インターネット配信の予定はありません。
内容 ユーザ会(JPUG)主催の,PostgreSQLの総合カンファレンスです。午前の基調講演と午後の12セッションで構成され,それらのプログラムが公開されています。チケットは現在販売中です(早期割引は終了しています⁠⁠。また,検討中だった懇親会ですが今年も開催は見送りとなった様です。懇親会も含めての完全な開催は来年を楽しみにしましょう。
主催 日本PostgreSQLユーザ会

Oracle Cloud Days 2021

日程 2021年11月9日(火⁠⁠~12日(金)
場所 オンライン(Zoom)
内容 本イベントでは,既存のITシステムのModernizationを実現された事例,データの利活用によりビジネス・イノベーションやDXを実現された事例,さらには最新のクラウドテクノロジーを活用してビジネスの成長を実現された事例などを紹介いたします。
MySQL関連の事例講演として,11月9日にはトヨタ自動車様の先進モビリティ・サービスに関するセッションで「MySQL HeatWaveでの車両データ解析の検証結果」をご紹介いただきます。
また11月11日には「Amazon AuroraからMySQL Database Serviceへの移行」事例として株式会社りらく様がご登壇。さらに最終日には「基幹データベースとしてAutonomous Database & 分析基盤としてMySQL HeatWave」を採用された株式会社ファンコミュニケーションズ様に他のクラウドからの移行の理由と効果をご講演いただきます。
主催 日本オラクル株式会社

関西オープンフォーラム KOF2021

日程 2021年11月13日(土)10:45~18:00
場所 オンライン開催
内容 「オープンソースならびにコミュニティが元気に交流できる場を関西でも作ろう」と有志が集まり2002年にスタートしました。関西各地のオープンソースを始めとするさまざまなITコミュニティ,企業,行政が集まり,関西以外からも参加者が多数来場するお祭り的なイベントです。2021年の開催はコロナ禍のため,YouTube等を使ったオンライン配信を予定しています。オラクルのMySQL Community Teamが協賛に加わっておりセミナーも予定しています。
主催 関西オープンフォーラム実行委員会

db tech showcase Tokyo 2021

日程 2021年11月17日(水⁠⁠-19日(金)09:30~18:15
場所 オンライン開催
内容 国内最大規模のデータベース技術カンファレンスです。今年は,これまでのデータベースの技術セッションに,AI/機械学習,クラウド,IoTなどのセッションが加わっています。OSSデータベース関連ではオラクルのMySQL Community Team,EnterpriseDB,SRA OSSなどが協賛しています。MySQLやHeatWave,PostgreSQLをはじめ,数多くのセミナーが予定されています。
主催 株式会社インサイトテクノロジー

オープンソースカンファレンス 2021 Online/Fukuoka

日程 2021年11月20日(土)10:00~18:00
場所 オンライン開催(ZoomおよびYouTube Live)
内容 オープンソースカンファレンス(OSC)は,オープンソースの「今」を伝える総合イベントとして,東京だけでなく,北は北海道,南は沖縄まで全国各地で開催しています。例年は福岡で開催されていたこの回もオンライン開催となりました。セミナープログラムは近日公開される予定です。OSSデータベース関連のセミナーについては公開されるプログラムをご参照ください。2021年のOSC開催はこれが最後です。2022年は,1月にオンライン大阪,3月頃にオンライン春の回が計画中とのこと。OSCは,まだもう少しオンラインでの開催が継続しそうです。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

MySQL 最新セキュリティセミナー(MySQL 8.0入門セミナー ~セキュリティ基礎編~)

日程 2021年11月26日(金)15:00~17:00
場所 オンライン(Zoom)
内容 今回のセミナーでは,MySQL 8.0が備える基本的なセキュリティ機能(暗号化・監査・認証・データマスキング・ファイヤーウォール⁠⁠,基本設定およびその確認方法を解説します。MySQL8.0のデフォルトで安全な設定,変更すべき設定などを確認することができます。
後半は,外部からの攻撃や情報の悪用からデータを保護し,規制遵守するためのMySQLの高度なセキュリティ強化機能やセキュリティ強化策,最新のアップデートについても掘り下げてご紹介します。データベースセキュリティに関心のあるエンジニアの方,データベースセキュリティの基礎的な知識を確認したいシステム管理者の方に必見の内容となっています。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

MySQL 8.0入門セミナー レプリケーション編(4)MySQL InnoDB ClusterSet

日程 2021年12月9日(木)午後開催予定
場所 オンライン(Zoom)
内容 今回のセミナーでは,MySQL 8.0.27で加わったMySQL InnoDB ClusterSetについてアーキテクチャの解説や構築手順,障害発生からの復旧などについて解説予定です。Oracle Video HubのMySQLチャンネルではMySQL 8.0入門セミナー レプリケーション編でMySQLのレプリケーションの基礎からInnoDB ReplicaSetおよびInnoDB Clusterのセミナーをあわせて公開中ですのでぜひご覧ください。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

Oracle Developer Days 2021

日程 12月17日(金)13:00~17:45
場所 オンライン開催(Zoom)
内容 Oracleテクノロジーの最新情報を入手し,システムのインフラストラクチャとアプリケーションデザイン,オペレーションの最適化に向け,Oracle Developer Dayをぜひ活用ください。MySQL関連では「チューニング不要でSQLを高速化するHeatWaveとは?」と題してMySQL HeatWaveの最新アップデートをご紹介予定です。
主催 日本オラクル株式会社 Developer Marketing

MVCCの詳細とPostgreSQLのトランザクション処理 ~その1~

日程 2021年11月10日(水)12:05-12:45
場所 オンライン開催(Zoomウェビナー)
内容 PostgreSQLは,MVCC(Multi-Version Concurrency Control)とよばれる機構を使って,並列実行するトランザクションが相互に邪魔することなく動作できるようにしています。MVCCの原理,PostgreSQLでどのようにこれが使われているのか,これによってトランザクションの並列実行,ひいてはアプリケーションがどのような恩恵を受けているのかを説明します。
主催 エンタープライズDB株式会社

著者プロフィール

梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。


溝口則行(みぞぐちのりゆき)

TIS株式会社

OSSコンソーシアム副会長兼データベース部会リーダ。他に,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons),日本OSS推進フォーラム(JOPF)にも参画。また,OSS推進活動の他に,日本のIT業界がDX(デジタルトランスフォーメーション)の波の藻屑とならないように,DX推進と変革に微力ながら勤しむ。