概要
「SIビジネスはなくなってしまうのでしょうか?」
これまでと同じやり方では,収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし,工夫次第では,SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。その戦略とシナリオを,豊富な図解と事例とともに集大成しました。これからのビジネスを読み解くうえで不可欠なトレンド,ビジネスモデル,グローバル戦略,プライシング戦略,人材育成戦略,そして新規事業の進め方までがこれ1冊でわかります。
全60枚の図表は,すべてPowerPointデータとしてダウンロード可能,ロイヤリティフリーなので企画書や経営会議の資料としてご活用いただけます。
こんな方におすすめ
- SIerの方,IT業界への就職を考えている方,情報システム部門担当者,経営企画部門担当者
著者から一言
はじめに
「システムインテグレーションは,本当になくなってしまうのでしょうか?」
SIビジネスは,いま大きな節目にさしかかっています。人月積算に頼った収益モデルは,明らかな構造的問題を抱えています。それに加え,クラウドや人工知能の普及が工数業務を代替する流れは,ここに来てさらに加速しています。
「では,どうすればいいのでしょうか?」
その答えをお伝えするのが,本書の目的です。筆者は2014年に『システムインテグレーション崩壊』という本を刊行しましたが,同著では将来の展望を示し,いくつかの事例を紹介したに過ぎません。「そこをちゃんと説明してくれ」というご意見も多く,本書を執筆することにしました。
本書の執筆にあたっては,次の3点に留意しました。
- 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し,その具体的な対策を示すこと。
- 身の丈に合った事例を紹介し,具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
- 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。
本書では,机上の理論や精神論ではなく,実践に役立つ戦略や方法論の紹介を心がけています。そのため,クラウドシステムインテグレーションやIoTビジネスの実践に取り組む株式会社フレクトでポストSIビジネスに取り組む後藤晃と議論を重ねながら仕上げました。さらに,新たな取り組みにチャレンジする人たちにも多数インタビューさせていだき,その実践ノウハウを紹介しています。
本書をお読みいただく前に,本書で扱う「システムインテグレーション(SI)」とは何かを,明確にしておきたいと思います。
SIを含む情報処理サービス産業とは,ソフトウェア業,情報処理・提供サービス業,インターネット付随サービス業を中心とした「工数積算を前提としたビジネス全般」のことを示しています。準委任や請負などの受託開発,SES(システムエンジニアリングサービス)や派遣などもこれに含まれます。これらを「SI」という言葉にまとめてしまうことには少々抵抗もありますが,世間でシステムインテグレーター(SIer)と呼ばれる企業の多くは,これらをあわせ持って生業としているところが少なくありません。中には,SIerと自称しつつも,実態はSESと派遣が大半を占めているところもめずらしくありません。そんな現実から,本書ではSIという言葉を広義に「工数積算を前提としたビジネス全般」という意味とし,そこに関わる事業者をSI事業者として使用することとします。
また,本書は,「規模の経済」を武器にすることができない中小,中堅規模のSI事業者を主要な読者と想定して執筆しました。もちろん,大手事業者の中でも変革に取り組んでいる事例は紹介していますし,大手事業者の方にもお役に立つはずですが,そこに重心を置いていないことは,あらかじめご了承ください。
今の特需は,これから消滅します。そのときの備えは,できているでしょうか?
本書は,その答えを考える材料を提供できると確信しています。