Android Weekly Topics

2019年9月第4週HUAWEI、5Gモデム統合SoC、GMSなし端末、制裁回避の既存モデル扱いと多彩な動き

HUAWEI、5Gモデム統合SoC、GMSなし端末、制裁回避の既存モデル扱いと多彩な動き

5Gモデルを搭載するKirin 990がリリース

少し前の話ですが、9月6日、IFA 2019オープキングキーノートで、HUAWEIのコンシューマー・ビジネスグループCEOのリチャード・ユー氏が5Gモデムを統合したSoC「Kirin 990」と、これを搭載するフラッグシップスマートフォン「Mate 30シリーズ」を発表しました。

Kirin 990は、2Gから5Gに対応するモデム、8コアCPU、16コアGPU、省電力コアが追加されたNPU、オーディオ処理プロセッサ、4K HDR対応の映像処理プロセッサ、LPDDR 4xメモリ、UFS3.0などがワンチップに収められています。製造は7nm+EUVプロセスで行われます。

HUAWEIは、端末のAIとクラウドのAIが非同期で動作していた状態を「Mobile AI 1.0」時代と言い、Kirin 990では、端末上のAIリソースだけでなく、5Gモデムの速度を活かしてクラウド上のAIリソースもリアルタイムで活用できるので、Mobile AI 2.0の時代になると宣言しています。また、SoCに5Gモデムを統合しているので、Snapdragon 855と5Gモデムの組み合わせと比較して、5G通信時の消費電力が44%抑えられているのも特徴です。

そのAI処理を行うNPUは、この2年間で12倍ものパフォーマンスが向上しており、Kirin 990ではパワフルな処理をする「Big-Core」と、消費電力を抑えて処理をする「Tiny-Core」を組み合わせて動作する「Da Vinci」と呼ぶアーキテクチャを採用しています。このおかげてエネルギー効率は24倍までに高まっています。

スマホ向けのSoCは、GPUとモデムにはじまり、AI処理やイメージ処理、オーディオ処理用のコプロセッサを搭載するのがトレンドです。この流れは当面変わらないはずで、スマホで新たなトレンドが起きると、新たなコプロセッサを搭載したSoCが登場することになりそうです。

SoCは、毎年更新されており新たなトレンドには追従しやすいと思いますが、新たなコプロセッサが搭載されると電量消費が増えるので、省電力化もポイントになりそうです。

HUAWEI Mate 30がリリース

自慢の「Kirin 990」を最初に搭載するスマートフォンが、Mate 30 Proです。

Mateシリーズは、例年であれば10月に発表されますが、今回は1ヵ月前倒しして発表されました。これは、Mate 30にはGoogle Mobile Services(GMS)が搭載されておらず、HUAWEI独自のHUAWEI Mobile Services(HMS)が搭載されているので、アプリデベロッパに対してHMSへの参加を呼びかけるのと、ユーザへの周知期間と考えているようです。 また、HMSへ参加するデベロッパ向けには、総額で10億ドルもの支援を行うとしています。金額で判断するのは浅はかですが、HMSへにかける意気込みは読み取れます。

発売日は例年通り11月でヨーロッパからです。これは、ヨーロッパ圏ではGMSが有料化されていることも関係しているはずです。

HUAWEIは、2018年には2億2,000万台のスマートフォンを出荷しており、プラットフォーマーとしての動きを取る下地は整っています。HMSの取り組みは、1年では結果は出ないと思いますが、2022年までには現在の勢力図が大きく塗り替えられている可能性はあります。

New HUAWEI P30 Proがリリース

GMSを搭載しないMate 30シリーズをリリースしたかと思えば、GMSを搭載するNew HUAWEI P30 Proもリリースしています。

新しいP30 Proは、Android 10を搭載していますが、ハードウェアスペックには大きな違いはなく、既存モデルのマイナーチェンジ扱いで米国の制裁回避仕様とも言えます。唯一、背面のデザインが2トーン仕上げで、カメラのある上部3分の1が光沢塗装、手が触る下部3分2はマット塗装に変更されました。

HMS搭載のMate 30とGMS搭載のP30 Proが混在し、節操がないともいえますが、これがHUAWEIの強みとも言えるかもしれません。

今週は、このあたりで、また来週。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧