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2021年6月第1週巻き返しのときがやってきた、Wear OS by Googleのテコ入れ(後編)

前回に続き、Tizenとの統合で皆の期待が高まる新しいWear OSを見ていきます。

GoogleのWear OSとSamsungのTizenが統合して、新たなWear OS(以降TizenWear OSとします)となることが発表されました。ざっくり言えば、OSのコアがTizenに切り替わり、UIはWear OSになりますが、公開されたUIのモックアップは、Galaxy Watchに搭載されているOne UIのテイストと似ているので、誤解を承知で書けばSamsungがスマートウォッチ用のTizenをGoogleに託し、これをWear OSにリブランドしたとするのがわかりやすいかもしれません。

2021年後半リリース予定のTizenWear OSは、コアがTizenになったことでパフォーマンスが30%向上し、バッテリ駆動時間を長時間化しています。Samsungの新しいスマートウォッチは、そのTizenWear OSと5nmで製造されるプロセッサを搭載すると言われています。Galaxy Watchの新型は毎年8月末に発表されているので、これに従えば新型も8月末に発表されることになり、一番登場のTizenWear OSの端末となりそうです。

今のWear OS搭載のスマートウォッチを扱うFosillやMobvoiもTizenWear OS搭載の端末をリリースするはずですが、先行するSamsungよりは少し時間が必要になるはずです。たとえば、今のスマートウォッチはセンサの塊なので、これらを制御するドライバは作り直しになるはずですし、UIが変更されることで内蔵アプリも手直しが発生するためです。

手間の割にメリットが少ないのか……

さて、筆者はGalaxy Watch Active 2を所有しており、これの扱いが気になっていました。Samsungは、向こう3年間はサポートを継続するとしているので、今の端末がすぐ使えなくなることはなさそうです。

Galaxy Watchには凝ったデザインの文字盤が多くあり、有料のものをいくつか購入するほど楽しんでいます。ただ、アプリの数は多くはなく、Samsung純正以外のアプリで常用しているものはありません。これは、デベロッパの数が多くないのも要因の1つです。

とは言え、Wear OSにも多くのデベロッパがいるわけではないので、Googleと手を組んでもすぐさま解決しません。しかし、TizenWear OSが魅力的なプラットフォームとなれば、この向こうにはAndroidデベロッパがいるので、TizenWear OS向けにアプリを開発するデベロッパが増える可能性を十分にあります。

事実上、TizenはWear OSに吸収されたことになります。

自社でハード・ソフトの両方を手がければ、統合度の高い製品が開発できますが、似たことができるスマートウォッチが3,000円台から購入できる状況では、自社で基盤開発を続けても手間を上回るほどのメリットがないのと、ブランドイメージが確立できていないTizenを手土産に、Googleサービスとの結び付きが強いWear OSとGoogleのブランドを手にした方がメリットはありそうです。

スマートウォッチの販売に伸び代がある前提ですが、Tizenで得たノウハウを活かして、TizenWear OS搭載端末でスタートダッシュを切ることができれば、当面のシェアは確保できます。しかし、ハードウェアを売るだけでは、今のスマートフォンと同じで中国勢から猛烈なプレッシャーを受けることは明白です。たとえば、Samsungは自社のハードウェアを活かすサービスの展開は行っていません。今回の動きは、戦略転換のシグナルなのかもしれません。

スタートダッシュが切れなければ、初期のAndroid Wearのように1世代で終了の可能性もあります。となれば、Samsungに継続できるネタがあるのかわかりませんが、スマートウォッチから完全撤退となれば、Apple Watchに対抗できるスマートウォッチが存在しなくなるので是が非でも頑張って頂きたいです。

たとえ、今回が不発に終わったとしても、Googleは事業を継続する体力はありそうですが、今回は期待が大きいだけに、3度目になる仕切り直しもコケたとなればユーザ離れは加速しそうです。まずは、先陣を切るSamsungに期待がかかります。新型を期待して待つことにしましょう。

今週は、このあたりで、また来週。

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