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前回からの続きで3回目です。現在のwebOSを取り上げてひと区切りとします。
webOSを手に入れたHPは,これを搭載した初めての製品として「HP TouchPad」をリリースします。これは商業的には失敗で,後続の製品もリリースされませんでした。HPは,スマートフォンやタブレット事業から撤退することになり,webOSは行き場を失います。これが2011年のことです。
webOSのライセンス事業も検討されたようですが,当時からAndroidとiOSがシェアの多くを握っていたので,あえてwebOSを使う理由が無かったのも事実です。結果としてwebOSのオープンソース化を決定し,Open webOSとして公開しました。
現在は,webOS Open Source Editon(OSE)として公開がれています。ここに来るまで,もう一波乱あるので後ほど取り上げます。
webOS OSEを試せる環境
最新版はwebOS OSE 2.13.0で,2021年8月6日にリリースされています。
オープンソースのOSは,アップデートが遅々として行われないプロジェクトもあります。webOS OSEは,小まめにとまでは行きませんが,トレンドに合わせたアップデートは行われています。
webOS OSE 2は,Raspberry Pi 4の実機で動作します。
筆者が確認した限り,バイナリが配布されていないので,自力でビルドする必要があります。ビルド環境としてUbuntuが必要で,WindowsやmacOSではビルドできないので誰でもというわけにはいきません。
VirtualBoxを使うEmulatorも公開されています。これは仮想マシンのイメージがダウンロードできるので,どうなっているか確認する程度であれば,Raspberry Pi 4よりも手軽に試せます。興味がある方はチャレンジしてください。
LGの手によって光がさす
2013年,LGがHPからwebOSを買収することで2度目の変化が起こります。
LGは,HPからwebOSのソースコード,関連文書,エンジニアング分野の人材,関連するウェブサイトを取得します。webOSに関係する知的財産は,LGに売却されずHPからライセンスを受ける形をとります。筆者は,買収を聞いた時にLGの手によってモバイル端末も復活すると期待しましたが叶わぬ願いでした。
HPは,webOSをオープンソース化した際にサポートを約束していました。しかし,公開したOpen webOSは放置されたのと同様の状態で,関わっていたメンバーの多くも退職しており明るい未来を感じることはできませんでした。
webOSは,HPにうまく活用されることなく,長らく不遇な身分に置かれていましたが,LGによる買収で活躍の場を得たことになります。先で触れたwebOS OSEはLGの手にによるものです。サイトでは,導入時やアプリ開発のガイドとなるドキュメント類が参照できます。また,コミュニティスペースも用意されており,webOSに関わる話題でやりとりができます。LGのスマートテレビには,他と比較してスムースなエンタメ体験が提供できることを差別化の要因としてあげ,webOSを搭載しています。
スマートテレビのOSといえば,最初に思いつくのはAndroid TVです。たとえば,ソニーのBRAVIAは,ほとんどのテレビに搭載されていますし,シャープのTVにも搭載されています。かつては,PanasonicのスマートテレビにFirefox OSが搭載されていることもありました。Firefox OSが開発終了になったことで,そのままの搭載はなくなりましたが,Firefox OS派生としてMy Home Screenがパナソニックのスマートテレビに搭載されています。
セットトップボックスまで広げると,Apple TVもtvOSと名付けられていますが元はiOSです。こうしてみると,スマートテレビにはモバイルOSが多く採用されているので,欲しい機能とフットプリントのバランスが良いのかもしれません。
モバイルに歴史あり
Palmが関わったPalmOS,そして,webOSにフォーカスして3回に渡り紹介してきました。モバイルも当たり前のものとなり,自分が使っている端末の歴史に興味を持たなくなりましたが,紆余曲折のあった歴史を知れば,普段使っているスマホやテレビがまた違った見え方になるのではないでしょうか。
今週は,このあたりで,また来週。