ゲームプランナーを目指すすべての人に伝えたい就職事情

この原稿を書いているのは2021年の6月です。私は東京近郊の専門学校でゲームプランナーの教員をしています。専門学校では年度内卒業の学生たちがゲーム業界への就職活動の真っ只中で、我々教員も日々その指導に追われています。おそらく同じように就職活動に追われている学生の方もたくさんいるのではないでしょうか。また、まだ就活は先だけど、いつかはゲーム業界に入りたい、ゲームプランナーになりたいと思っている学生の方もいるでしょう。中にはゲーム業界で働きたいという夢を諦めきれずにゲームプランナーへの転職を考えている……という社会人の方もいるかもしれません。

でも、ゲームプランナーってそもそもどんな仕事なのか?ゲームプランナーになるための就活ってどんななの?と思っている人も多いのではないでしょうか。そんな「ゲームプランナー」を目指している人に向けて、最新のゲーム業界の就職事情についてお話をしたいと思います。

ゲームプランナーの仕事

さて、ゲームプランナーの就職活動の話に入る前に、まずはゲームプランナーの仕事について理解しましょう。どんな仕事をして、どんな人が求められているのかを知っておく必要があります。すでにある程度知っているという人は、この項は飛ばしてもらって構いません。

皆さんは「ゲームプランナー」と聞いて、どのような仕事をイメージしますか? ゲームのアイデアを考えて、その一瞬のひらめきをプログラマーとデザイナーに指示し、ゲームを完成に導くゲーム制作の「神」……。もし、そんな風に思っているのであれば、1割だけ「正解」で、9割「不正解」です。ゲームプランナーの仕事の大半はかなり泥臭く地道な作業で成り立っています。

自分が考えたゲームのアイデアがゲームとして商品化されるのは、出世して「ディレクター」「プロデューサー」になってからのことで、新人プランナーがイチからゲームの企画を立ち上げる機会はほぼありません。ゲーム企画のアイデア出しの仕事はプランナーの仕事のほんの一部です(常にあらゆる仕事に新しいアイデアを盛り込む必要はあります⁠⁠。仕事が細分化された海外のゲーム会社と違い、日本のゲーム会社のプランナーの仕事は多岐に渡ります。以下に、その仕事の一部を列挙してみました。

  • 企画のネタ出し、企画書(ゲームのイメージを伝える書類)の作成
  • 仕様の考案、仕様書(ゲームの設計図)の作成
  • プレゼンテーション(対クライアント、対上司、対チームメンバー、対広報…等)
  • レベルデザイン(ステージ制作)
  • ゲーム内のデータの作成(パラメータ、テキスト、スクリプト、ガチャデータ等)
  • スケジュール管理
  • デバッグ資料作成・管理
  • モニター調査アンケート作成
  • 外部部署とのやり取り(契約・特許・権利案件、マーケティング・宣伝等)
  • KPI(オンラインゲームの重要指数)分析

ゲーム制作の他の職種であるプログラマー、CGアーティスト、サウンドスタッフが確かな「技術」を元に仕事をするスペシャリストなのに対し、ゲームプランナーはそこまで高度な「技術」は求められません。使うツールもほとんどがExcelやPowerPointなどの事務系のソフトです。そういう意味ではゲーム業界の中では比較的「目指しやすい」職種と言えそうです。実際、専門学校からでなくても一般の大学から採用されるケースも多い職種です。

では誰でもなれるかというとそんなことはなく、上記のような多岐に渡る仕事をこなせるゼネラリストであることが求められます。

また、どの職種の人よりも作るゲームの内容について「考え⁠⁠、他の人に伝えられるくらいに論理的に理解している必要があります。さらにそれを人に指示、説明をすることが多い仕事なので、コミュニケーション能力や「伝える」力が求められ、かつ、それを分かりやすく書類にまとめる「書く」能力が必要です。入り口は確かに入りやすい職種かもしれませんが、その奥は限りなく深いのがゲームプランナーの仕事と言えるかもしれません。新卒採用の場合は上記全てを完璧にできる人は少ないでしょうが、⁠考える」⁠伝える」⁠書く」の素養があり将来的に成長を見込める人が採用されることになります。

ゲームプランナーの新卒採用の流れ

前項で書いたようにゲームプランナーは高度な専門的技術は求められませんが、⁠考える」能力、⁠伝える」能力(コミュニケーション能力⁠⁠、⁠書く」能力が求められます。採用時に企業の人が見ているのもまさにこの点です。

ゲームプランナーの採用の流れを見てみましょう。ゲームプランナーの採用の流れは大まかに以下の流れです。

  • ①書類審査・作品(企画書)審査
  • ②筆記試験
  • ③面接試験

それぞれを見ていきましょう。

①書類審査・作品(企画書)審査

ゲーム会社の就職活動は特徴的です。普通の企業では1次審査は書類審査(履歴書、エントリーシート)のみですが、ゲーム会社はそれにプラスして「作品提出」を求められます。

ゲームプランナーは作品として「ゲーム企画書」の提出を求められることがほとんどです。⁠企画書」は先ほど述べたゲームプランナーに必要な3つの能力、⁠考える」⁠伝える」⁠書く」を測るのに最適です。

書かれているゲームの内容で「考える」能力を見ることができ、書類に書かれた文章・構成で「伝える」能力が測れ、企画書全体の完成度で「書く」能力を確認できます。さらに、ゲームに対する情熱や本人のゲーム作りへの方向性まで見ることができる、万能の書類です。提出された書類と企画書を見て、合格をした人は次の審査に進みます。企画書は過去に書いたものを提出する場合もありますし、企業からテーマを設定されて新作する必要がある場合もあります。

②筆記試験

多くの企業は書類と作品の審査のあとで筆記試験を行います。筆記試験は一般企業の採用試験でもよく使われるSPIテストなどが用いられます。

中には独自の問題を解かせる企業もあります。例えば、方眼紙を渡されて、⁠1時間で○○(その会社のゲームタイトル)のマップを1面考えろ」というものや、⁠昨年一番よく売れたゲームタイトルについて、その売れた理由を考察せよ」といった問題が出ることもあります。これらはゲームに関する知識やゲームを制作する上での「考える」力を見ているとも言えます。もちろん、作文形式なら「書く」能力、⁠伝える」能力も見られているわけです。この辺りに対策するのはなかなか難しいので、普段からゲームをプレイするときに作り手の意図を考えたり、ゲーム業界や周辺のIT系の技術などの情報に目を通したりして、自分なりの考えを持っておくことが必要です。

③面接試験

①②をパスすると面接試験に進みます。面接試験はコロナ禍以降、大きく様変わりして、リモートで行われることがほとんどになりました。

ただ、選考の流れ自体は大きくは変わりません。1次面接では人事担当者、もしくはゲーム開発現場のマネージャークラスの社員による面接が行われ、持っているスキルの確認、人物の確認が行われます。2次面接ではさらに上の立場で現場を統括する開発責任者レベル(ディレクター、プロデューサー)の人が「自分の部下にしてよいか」という視点でチェックをし、最終面接で社長・役員クラスの人が会社に合うかどうかを判断する…という流れです。面接では「考える」⁠伝える」能力が問われています。面接の流れは他の業種の就職試験と同じですが、面接する側、される側に「ゲーム好き」という共通項があるので、⁠面接、めっちゃ盛り上がって楽しかったです」という学生の報告もよく聞きます。とても緊張する場ですが、あまり構えずに楽しんでくるくらいの感覚でいた方がうまく行くのかもしれません(もちろん最低限のマナーは必要ですけども⁠⁠。

ゲーム会社の採用スケジュール

ゲームプランナー採用の流れを見てきましたが、これらはどのようなスケジュールで行われるのでしょうか。

パブリッシャーとディベロッパー

ここでゲーム会社の種類について少しお話をしておきます。ゲーム会社は大きく分けて「パブリッシャー」「ディベロッパー」に分けられます。それぞれ就活のスケジュールが異なります。この2つの違いについて知っておいてください。

「パブリッシャー」とはゲームを開発し、販売・配信まで行う大手企業のことです。カプコン、スクウェア・エニックス、バンダイ・ナムコ、サイゲームズ、コロプラなどのような企業がこれに当たります。ここでは任天堂などのハードウエア開発を行う会社もパブリッシャーに含めて説明をします。パブリッシャーは事業規模が大きく、毎年の採用人数も多いのが特徴です。多くの学生がゲーム会社への就職というときに知名度の高いパブリッシャーを目指します。

「ディベロッパー」はソフトの販売・配信は行わず開発だけを行う会社です。会社の規模は数人から数百人と様々ですが、パブリッシャーに比べると規模の小さないわゆる「中小企業」になります。ディベロッパーはパブリッシャーに依頼されゲームを開発しますが、販売・配信はパブリッシャーが行います。そのためディベロッパーの会社名が表に出てくることはあまりありません。ディベロッパーは数百社あると言われていますが、しっかり業界研究をしていないと存在を知らないままということにもなりかねません。ゲーム会社を志望するなら必ず押さえておきたい存在です。

ゲーム会社の採用スケジュールをパブリッシャー、ディベロッパーそれぞれについて見ていきましょう。

2021年以降の採用スケジュール

2021年卒採用から「⁠⁠大学の)3年次3月に就職活動解禁、4年次6月に採用選考解禁」というような期限のルール(⁠⁠就活ルール」という経団連の取り決め)が撤廃されました。これにより採用スケジュールが全体的に早まりました。コロナ禍の混乱収束や各企業の戦略などにより今後も流動的に動く可能性はありますが、おそらく今後は以下のような流れに収まりそうです。

①卒業前年度・

採用活動はその準備段階も含めて学生の卒業年度の前年(四年制大学なら3年次)の夏ごろからスタートします。大手パブリッシャーは卒業前年度の夏ごろから短期の「インターン」という勉強会を実施し、意識の高い優秀な学生の囲い込みを始めます。⁠プロが直接指導!3日間のプランナー実習体験!』のようなインターンイベントで学生を集め、参加者をリスト化、有望な学生をチェックし、次のインターンには個別に声をかける等、本格的な採用を始める前に信頼関係を作っていきます。大手パブリッシャーに入社希望なら是非参加しておきたいイベントです。インターンを実施している企業はインターネットを検索したり、リクナビ・マイナビ等のいわゆるナビサイト等に登録したりすると見つけられます。

②卒業前年度・

大手パブリッシャーの一部や、採用に積極的なディベロッパーは卒業前年度の12月くらいから企業説明会と選考を始めているところもあります。少しでも良い学生を採ろうと企業側も必死です。就活ルールがあった頃は、説明会は3月、選考は6月にならないと始めてはいけないというルールだったので、かなりの前倒しになります。インターンでチェックされているような学生は、個別に声をかけられ応募を促されたりします。募集の状況は企業のホームページの採用ページなどをチェックしましょう。当然、行きたい会社はこの時点でピックアップしておく必要があります。

③卒業前年度・3月~

就活ルールがあった頃はここが企業説明会のスタート時期でした。ルールが撤廃された今も、ここを採用活動スタートと考えている企業(主に中堅ディベロッパー)は多いようです。一般的な学生はこの辺りから就職活動を開始しますが、すでに①②がスタートしていますから、一歩出遅れていることになります。

④卒業年度・5月~

この時期がディベロッパーの採用のピークになります。3月から行ってきた説明会に参加した応募者の選考が行われる時期で、2次、3次の説明会なども行われます。と、同時にこの辺りからいくつかの大手パブリッシャーの採用が閉じ始めます。ディベロッパーも早めに採用活動を始めた会社は枠が埋まり次第採用を終了していきます。人気が高く、かつ規模がそれほど大きくない有名ディベロッパーなどは早めに採用を閉じますので、年末ごろから注意しておく必要があります。

⑤卒業年度・8月~

夏休みです。企業も1週間の夏休みを取る時期です。この時期にはほとんどの大手パブリッシャーは採用を終了し、次年度採用の準備にシフトしています。中堅ディベロッパーはまだまだ採用を続けている企業もありますが、10月に内定式を実施するためにこのタイミングが最終募集となる会社も多いようです。

⑥卒業年度・10月~

パブリッシャーの多くは10月1日に内定式を行います。中規模の中堅ディベロッパーもこの段階では採用を閉じる会社が多いようです。これ以降は「通年採用」をしている企業(主に小規模なディベロッパー)に採用は絞られていきます。通年採用のゲーム会社は「良い人がいればいつでも採用する」というスタンスです。ただ、小さな会社は経験の無い新卒採用自体を見合わせている会社も多いので、一度問い合わせをしてみることをおススメします。

⑦卒業年度・3月~ 卒業したら―既卒・中途

さて、この時期(つまり卒業)までに就職が決まらないと、いわゆる「新卒」ではなくなってしまいます。この後は「既卒」の枠や「中途採用」の枠で探すことになります。⁠既卒」は新卒と同じような基準で採用してくれますが、そもそも「既卒」も応募するという企業は多くありません。また、⁠中途採用」は基本的に経験者を求める傾向が強いですが、未経験でも可能性が無いわけではないのでチャレンジすることは可能です。ただ、新卒での応募に比べ、ハードルが上がるのは否めません。より精度の高い作品や、強い気持ちが必要になってきます。

卒業後にゲームプランナーになりたい人のもうひとつの道は「アルバイト」です。ゲーム企業(特にディベロッパー)では簡単なスクリプト作業やデバッグ作業等を担当するアルバイトを募集していることがあります。アルバイトは正社員採用に比べ採用基準が低いので、採用の確率は高まります。アルバイトに採用されると、しっかり働いて気に入られれば社員登用の可能性がある場合もあるので(場合場合によるので、事前の確認はしておきましょう⁠⁠、⁠とにかくゲーム会社!」という人にはひとつの選択肢となります。

ゲームプランナーの採用応募の準備

採用活動の流れとスケジュールについて説明してきました。

さて、ではどのような人が内定にたどり着くのでしょうか? これがなかなか険しい道のりです。ゲーム会社自体は小規模のディベロッパーも含めると数百社あると言われていますが、毎年新卒採用している会社はその半数にも満たないでしょう。また、プランナーの採用枠はプログラマー、CGデザイナーより少ないのが一般的です。そのわりにゲーム好きな学生にとっては魅力的な職種ですし、専門的な勉強をしていなくても応募できる職種となれば競争率が高くなるのは必然です。どれだけしっかりと準備をしているかが勝負の分かれ目です。

ゲームプランナーの就活に向けて必要なものを整理してみましょう。

良質な「企画書」数点・ポートフォリオ

作品審査に必要。受ける会社に合ったものがよいので、ジャンル、プラットフォーム別にいくつかバリエーションがあるのが理想。最低でも3つ。できれば5つは作って置きたいところです。ネタの面白さも大事ですが、書類としての完成度(見栄え、見やすさ、分かりやすさ)の方が大事だったりもします。パワーポイント5-10ページ程度で、できるだけたくさん作っておきましょう。作品がたくさんある人はポートフォリオとして一覧を作っておくとベターです。学生の人はこれらを卒業年度に入る前には揃えておきましょう。専門学校では授業内でこれらを作る機会もありますが、一般の大学に通っている人は独学で学び作成する必要があります。

アタックリスト

アタックリストとは就活で受ける企業をリスト化したものです。作品があっても、どの会社を受けるかが決まってないと動きようがありません。⁠そりゃそうだ」と思うかもしれませんが、これができてない人がすごく多いです。アタックリストには社名だけでなく、採用情報(募集開始時期、応募必要書類等)も記載し、受ける順番を考えて優先順位をつけましょう。これらも作品と同じく卒業年度に入る前には揃えておきましょう。リストを準備しておかないと受けたかった企業の採用が終わってた……という取り返しのつかないことが起こりかねません。

自己PR・志望動機

履歴書に記載、面接でもほぼ必ず聞かれる鉄板質問です。自己PRは自己分析をしっかり行い、自分をPRできる部分を探しましょう。単なる自慢ではなく、⁠だからプランナーの仕事に向いている」と言えるようなアピールが望ましいです。志望動機は「私は幼いころからゲームが好きで」とか「私は貴社の『〇〇』の大ファンで」で始めるのは基本的にはNGです。単にゲーム業界への憧れを持っているというファン的な動機では「浅い」と思われます。⁠自分はゲーム業界に入って何をやりたいのか」を具体的に語り、しっかりと企業研究をしたうえで「なぜその企業じゃないといけないのか」を説明できるようになりましょう。志望動機はアタックリストに載せた全ての企業で準備しましょう。

ナビサイト系の登録

就職活動をするうえで、就職情報が集まるナビサイトへの登録はもはや必須準備のひとつです。有名な「リクナビ⁠⁠、⁠マイナビ」はもちろん、中小企業の情報も集まる「Wantedly」⁠Peatix」⁠クリ博ナビ」なども登録しましょう。これらのサイトはインターンの情報なども集まりますし、⁠ゲーム」で検索することで知らなかったディベロッパーの情報も目に入るようになります。

PREP法を身に付ける

すべての質問にPREP法で答えられるように練習しておきましょう。PREP法とは結論を先に伝え、具体例を示し、最後にもう一度結論を伝える…というテクニックです。もっとも言いたいことが伝わる構成です。履歴書の作文、課題のレポート、面接の回答……全てPREP法で答えるのが基本です。就活に限らず、仕事をするようになってからも活用できるものなので就活を機にしっかり意識して身に付けましょう。もちろん自己PR、志望動機もPREP法で準備しましょう。

物理的な準備

就活をするにあたって買いそろえないといけないものもあります。意外と就職活動はお金がかかるので少しずつ準備しておきましょう。まずは服装系です。スーツ、革靴、カバンは必須。靴下も黒か紺で準備しましょう。そして、後でも詳しく書きますが、リモートでの説明会やリモート面接を受けられる環境が必須となります。使い慣れてない人はZoomなどのオンライン会議システムに慣れておくことも必要です。

コロナ禍のゲーム業界と就活

少し話題を変えて、コロナ禍とゲーム業界、そして就活への影響についてお話をします。皆さんもご存知の通り、⁠COVID-19(コロナウィルス)の蔓延」により世の中の情勢は大きな変化を遂げました。生活様式が一変したのはもちろん、外食産業やレジャー施設が大打撃を受けるなど、経済的な影響も計り知れないものがあります。そんな中、ゲーム業界は「巣ごもり需要」の恩恵を受け、むしろ躍進した業界のひとつと言えます。スマホゲームは相変わらず堅調に推移し、⁠あつまれ どうぶつの森(任天堂⁠⁠」や「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和 も定番~⁠コナミ⁠⁠モンスターハンターライズ」など家庭用ゲームも大ヒットを飛ばし、経済的な面では業界自体は大きな影響は受けていません(※アーケード(業務用)業界は除きます⁠⁠。

ただ、働き方は本当に大きく変わりました。かつてはデータの社外への持ち出しはセキュリティの観点からほとんどの会社がNGでしたが、コロナの流行後は一気に在宅勤務(リモート)で業務を行う体制が整いました。一度この体制が整うと、通勤の手間が省け、事務所の電気代もかからないなどメリットが大きく、コロナが落ち着いた時機でもリモートを維持する会社が増えてきました。中にはオフィスが不要になり、事務所の規模を縮小する方針を打ち出している企業もあるくらいです。そして、これらのリモート化の動きは「就職活動」にも影響を与えています。

コロナ禍でのゲーム業界の採用状況

コロナ蔓延の初年度である2020年度(21年卒向けの就活)は、採用活動の動きも様々でした。いち早くリモートの体制を整え、リモートで採用活動を行う企業もあれば、体制を整えるのに時間がかかり、例年より採用活動がずれ込んだ企業もありました。また、採用を見送ったり、採用規模を縮小したりした企業も少なくありませんでした。ですが、21年度(22年卒向けの就活)はゲーム業界の求人状況はほぼ例年の規模に戻ってきている印象です。実際、20年度は採用を見送った企業も、⁠その分、21年度は頑張りたい」と気合を入れています。

全てが「リモート化」

企業の働き方がリモート化していくのと同時に、就職活動もリモートで行われることがほとんどになりました。かつての(と言ってもほんの数年前の話ですが)就職活動は、まずはその企業に直接足を運ぶ、就活イベントに参加するなどして「企業説明会」に参加することからスタートしました。これがなかなか大変で、学校生活を送りながら決まった時間に企業に足を運ぶというのは、大変なストレスでした。もちろん就活が進んで「筆記試験」「面接」を受ける場合も都度、企業に呼び出されることになります。特に地方在住の学生は、受けたい企業の説明会を受けるために上京することになり、その度に交通費や場合によっては宿泊費もかかります。これを志望する会社全てに行おうとすると大変な費用がかかっていたわけで、機会をみすみす逃していたこともあったと思われます。

コロナ禍によってこれらが全てリモートで行われるようになりました。企業説明会、面接、筆記試験も自宅にいながらにして受けられるようになったことは、学生にとっては大いに歓迎すべき状況になったと言えます(地方の学生の皆さんも応募しやすい環境になったことで競争率は高まるかもしれませんが⁠⁠。と同時に「面接」がリモート化することで新たな「就活準備」が必要になりました。まずリモート面接に必要な環境です。

  • カメラ付PC or PC+USBカメラ or スマートフォン
  • Zoom等のアプリ、アカウント
  • ヘッドセット or マイク付きイヤホン
  • 静かな環境(+無難な背景)

これはゲーム業界に限りませんが、もはやリモート面接の環境は就職活動で必須となりました。プランナーを目指す時点でPCは必須だと思いますが、若干の追加投資が必要になるかもしれません。また、リモート面接特有のマナーや注意点なども出てきました。この辺りの詳細は他のサイトに譲りますが、しっかりと練習と準備をしておく必要があります。⁠ゲームプランナー」も一社会人です。ゲームのことだけでなく、地に足の着いた社会人になる準備も大切です。


昨今のゲームプランナーの就活事情について大まかにまとめてみました。いかがでしたでしょうか? もちろんゲーム業界への就職を果たすには企画書の書き方などまだまだ学ばなければならないことは多いですが、今回書いたことを知っておくだけでも、ゲームプランナーになるための一歩をリードしたと言えます。ゲームプランナーを目指す皆さんの就職活動の一助になれば幸いです。

拙著『ゲームプランナー入門 アイデア・企画書・仕様書の技術から就職まで』では、ゲームプランナーの仕事、ゲームの面白さについての解説、アイデアの出し方、企画書・仕様書の書き方、就職活動まで網羅しました。私が19年間ゲーム業界で働いてきた経験と専門学校の教員に転職してからの5年間で得た知見の中から、ゲームプランナーを目指す学生に普遍的に知っておいて欲しいことをほぼ全て詰め込んだつもりです。ゲームプランナーに憧れているけど、具体的なところがよく分からない……という人に向けた一冊です。今回の記事と合わせ、これからゲームプランナーを目指す人に手に取っていただけたら幸いです。

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