新春特別企画

LibreOffice/Apache OpenOffice ~2012年の出来事と2013年の新バージョンリリース~

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LibO vs AOO ラウンド1

というわけで昨年はAOOもリリースされたわけですが,プロジェクト云々はさておき※9オープンソースのオフィススイートとしては対立しているわけで,わかりやすく数字が出ている昨年1年間のダウンロード数で比較してみましょう。

とはいえ,AOOはほぼSourceForgeのインフラからのダウンロードがすべてで,ダウンロード数の把握が正確にできますが,LibOはそうではないのでそもそも不利です。もちろんLinuxディストリビューションに含まれている分は数にありません。LibOは古いバージョン(3.3や3.4)を使い続けている人が多いということも考えられます。それに,直接利益に結びつくわけではないのでダウンロード数が多くても特にメリットはありません。いくらダウンロードする人が多くても,プロジェクトに参加する人が少なければプロダクトはよくなりません。それよりもプロジェクトに参加する人(直接的にはコードをコミットする人)が多い方が優れたプロジェクトであるという見方もできるわけです。

さらに前述のとおり古いOOoではアップデート通知が表示されているため,ユーザーベースや知名度を考えるとこれだけでもかなり有利です。

……と,ここまで予防線を張ったのは,ダウンロード数という数字では次のとおり圧倒的な大差がついたからです。

  • LibO:1,500万ダウンロード
  • AOO:3,000万ダウンロード

数字の根拠は,LibOはブログに掲載されたグラフAOOはメーリングリストへの投稿です。

LibOは15バージョン,AOOは2バージョンをリリースしてこの結果なので,個別のバージョンのダウンロード数は圧倒的大差がついていると予想できます。

ちなみに窓の杜もダウンロード数を公開しており,倍では済まない差がついていますが,正直なところ理由は推測できません※10⁠。

※9
各プロジェクトの人たちの間ではたまに舌戦が繰り広げられています。ある意味面白いのですが,不毛なので今回は紹介を省きました。みんな喧嘩好きね……と思ったのですが,喧嘩好きなのは誰とは言わないものの一名だけの気もします。
※10
直感的に思いつくのはAOOのWebサイトだとダウンロードするのが手間で,LibOだとそうではないということですが,たぶんそんなことはないでしょう。また,Googleなどで検索すると窓の杜が上位に表示されるから,というのもなさそうです。

2013年の新バージョン

Microsoft Office 2013

本題とは全く関係ありませんが,今年はMicrosoft Officeに触れないわけにはいきません。執筆段階では発売日は明言されていませんが,第一四半期にMicrosoft Office 2013が発売予定です。Microsoft Office製品マーケティングブログを見ると,原則としてアップグレード版がない※11にもかかわらず値下げはなしということで,かなり強気の価格設定です※12⁠。LibO/AOOから見た新バージョンの魅力はODF 1.2をサポートしていることでしょうか。

※11
何故かProfessionalだけ数量限定のアップグレード版があります。
※12
あくまで筆者の見立てですが,ボリュームライセンスやプレインストールだと関係ありませんし,個人や中小企業ではOffice 365への移行を促したい価格設定なのではないかと思いました。

LibreOffice 4.0

LibO 4.0は2月の第2週にリリース予定で,これまでのことを考えればさほどの遅れもなくリリースされるでしょう。バージョニングは3.7の予定でしたが,タイムベースリリースだと4.0にするのに適切な時期はないということで4.0になりました。新機能が搭載されるからバージョンを上げるということではなく,古いAPIの削除など互換性を損なう変更を入れる※13のでバージョンを上げるという,どちらかと言えばネガティブな理由です。新機能の実装などはこれまでと変わらないのでユーザーにはあまり関係しませんが,古いMicrosoft Officeのファイルフォーマット(95以前)の保存ができなくなったのはメリットだと思います※14⁠。

LibO 4.0の新機能の解説はSoftware Design 2013年3月号(2月18日発売予定)のUbuntu Monthly Reportで行うことを予定しています。

翻訳は,対象となるビルド※15のリリースが遅れてベータ2まで持ち越しになったほか,筆者も多忙なので遅れていますが,いつものごとくユーザーインタフェースについては何とかなるのではないかと思っています※16⁠。

※13
具体的にどういう変更があるのかはリリースノートをご覧ください。
※14
というのも,OpenOffice.orgの頃から95以前の形式で保存すると文字化けしてしまい,復旧方法もないため,誤って保存した場合は再作成するしかありませんでした。そのため,これはメリットと考えていいと思います。今更こんな古い形式を使うことはないですし。
※15
正確には,翻訳の基準となるビルドで,これ以前はいろいろと理由があって翻訳するのに問題となるバグがありました。
※16
ヘルプは後回しになるほか,それでも人手が全く足りないのでご協力いただけますと幸いです。詳しくはメーリングリストをご覧ください。

Apache OpenOffice 4.0

11月1日に,AOO.Next IBM Prioritiesという興味深いメールが投稿されました。次のAOOのバージョン(まだ4.0と決まっていませんでした)でIBMが優先的に取り組む機能を紹介しています。Windows版での差分アップデートやサイドバーフレームワーク,Writerの目次の改善など,確かに実装されたらうれしいものが多いです。これらのほか,4.0に実装される予定の機能がWikiにまとめられています。Microsoft Officeの古いバイナリフォーマットとの相互運用性も向上するほか,ついにアプリケーション名が⁠Apache OpenOffice⁠になるなど※17⁠,全部実装されたらかなり魅力的なものになりそうです※18⁠。

リリースは4月予定とのことですが,個人的にはやや楽観的かなと思います。ただ,競争上あまりずるずると延ばすことも考えにくいため,適切な時期にリリースされるのではないでしょうか。

※17
今までは,アプリケーション名はあくまで⁠OpenOffice.org⁠でした。Windowsのスタートメニューにも⁠OpenOffice.org 3.4.1⁠として登録されていることからもわかります。
※18
もちろんかなりの確率で大部分が実装されることでしょう。

まとめ

今更いうまでもなく,来年2014年にはWindows XPとMicrosoft Office 2003の延長サポートが終了します。Windows7ないし8がインストールされたPCに買い換えるのと同時に,オフィススイートをどうするかを決めるには遅いタイミングとなりつつあります。多くの日本企業ではMicrosoft Officeであることが重要で,価格は二の次といったところではなかろうかと思いますが,経済状況の厳しい昨今,そうもいってられない事情もあるかもしれません。となるとLibOやAOOは充分に検討に値します。これまで述べたとおり,予定どおり実装されたとしてサイドバーを採用し,差分アップデートが可能なAOO 4.0は候補の筆頭に入る気もします。しかし,Office 2003がなくなるということはOOXMLに移行するのと同義であり,この形式で保存できるLibOが有利という見方もできます。そして,AOOの機能がLibOで使えるようになる可能性も高いです。

昨年は結びに「来年にはこの混沌としている状況がもう少しどうにかなっているといいのですが」と言及しましたが,結局のところ状況は特に変わりがないどころか,むしろどちらも魅力的なオフィススイートでどれにすべきか実に悩ましいです。いろいろ検証してどちらがベストなのかを判断してくださいという無難なまとめになってしまいますが,いずれにせよ自由に使用できるオフィススイートが注目されるのは筆者にとってうれしいことです。

お知らせ

この場を借りてお知らせがあります。オープンソースカンファレンス2013 Tokyo/Springの特別企画でLibreOffice日本語チームがLibreOffice Japan mini Conferenceを開催することになりました。LibOを含めた自由に使用できるオフィススイートに興味がある方は,是非ともお越しください。

著者プロフィール

あわしろいくや

Ubuntu Japanese Teamメンバーで,主として日本語入力関連を担当する。特定非営利活動法人OpenOffice.org日本ユーザー会。LibreOffice日本語チーム。ほか,原稿執筆も少々。