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第2回先駆者、Sony Reader「PRS-T1」振り返る

専用端末は先細り?

前回ご紹介したように、2012年の後半から楽天KoboやAmazon Kindleなどの専用端末が複数リリースされました。このリリースラッシュは、国内に限った話で、世界的な動きに目をやると専用端末の需要は陰りが出ていると言われており、2011年の出荷台数2,320万台と比較すると、2012年の出荷台数は、36%減の1,490万台と予想されています。また、2013年の出荷台数は、さらに落ち込み1,090万台と予想されています。

この理由は、タブレット端末が進化するたびに、軽量・小型・薄型化されているためで、これで読書が楽しめるのであれば、用途が限られた専用端末を購入するよりも、汎用的に使える、タブレット端末を選ぶという流れが強くなっているからです。先行している国では、端末需要が一巡したとも言えるかもしれません。

かくいう筆者もGoogle Nexus 7に「Kindle」「ソニーの電子書籍 Reader」アプリをインストールしており、こちらを使うこともあります。かつて、各社がワープロ専用機を販売していましたが、PCに変わっていったような現象が、電子ブックでも見られるのか分かりませんが、国内では専用端末が出そろったところなので、しばらくは動向を見ていくことになります。

専用端末で3年先行するSony Reader

今回取り上げるSony Readerは、専用端末を2010年から国内販売をしており、他と比較すると3年程度先行しています。端末も3世代目を向かえており、2012年9月21日にリリースされた「PRS-T2」は、読みやすさを追求してさらなる改良が加えられています。筆者は、この前身である、PRS-T1を1年間使って来たので、これまで使ってきた環境とともに端末を振り返ってみます。

一年間使ったPRS-T1を振り返ります
一年間使ったPRS-T1を振り返ります

意外に知られていない高機能ぶり

PRS-T1には、本体に保存した音楽データを再生できる機能があります。イヤフォンを接続すれば、音楽を聴きながら読書が楽しめるというワケです。サポートしている音楽フォーマットは、MP3、AACとなっています。

ほとんど使われてなかったようで、PRS-T2では省かれています。⁠筆者も使うことはありませんでした)ウォークマンと連携するなど、もう一歩踏み込んで作り込まれていれば、大化けしたかもしれません。

一度も使うことがなかった、PRS-T1の音声再生機能
一度も使うことがなかった、PRS-T1の音声再生機能

存在を気にすることはないバッテリ

先でも触れたように、1年以上PRS-T1を使っていますが、前回の充電はいつだったか忘れてしまうほど充電頻度が低く、存在を気にする必要がありません。PRS-T2では、一回の充電で2ヵ月使えるとしているので、PRS-T1の5週間よりも省電力設計になったことがわかります。

こうした部分が専用端末の魅力であり、特化しているがゆえに得られるメリットです。世界的には、専用端末の需要に陰りが出ていますが、日本では長い通勤・通学時間が当たり前なので、専用端末の良さがフォーカスされる可能性もあります。

書籍購入はパソコンが主

PRS-T1には、Wi-Fiが搭載されています。

使い始めるまでは、PRS-T1からReader Storeへアクセスし、書籍を購入する使い方がほとんどで、パソコンで書籍を購入することはないだろうと考えていました。最初は、面白がってPRS-T1でReader Storeへアクセスしていましたが、使い込んでいくうちに、操作する度にちらつく画面や描画速度の遅さが苦痛に感じ、パソコンで購入することが多くなりました。3G回線を内蔵した端末であれば、事情が変わったかもしれません。

端末でReader Storeにアクセスした様子。画面がちらついたり、描画遅いのが難点
端末でReader Storeにアクセスした様子。画面がちらついたり、描画遅いのが難点

さて、パソコンで書籍を購入する手順は、WebブラウザでReader Storeにアクセスして書籍を購入。後に、ダウンロードした書籍を、パソコン用の電子書籍転送ソフト「eBook Transfer for Reader」を使って、USB経由でPRS-T1へ転送する使い方になります。書籍は、読み終えるまでに時間がかかるので、頻度の高い作業ではありませんが、はっきり言って面倒です。もっと頻度が高ければ、早々にPRS-T1を使うのを止めていたと思う程です。

購入はパソコン、ダウンロードは端末を使う方法もありますが、わざわざ端末で、ダウンロード操作をする必要があるならば、USBケーブルを接続して、⁠eBook Transfer for Reader』で転送しても、手間は変わりがないので、この使い方で落ち着いています。

eBook Transfer for Readerの画面。iTunesのような物を期待してはいけない
eBook Transfer for Readerの画面。iTunesのような物を期待してはいけない

Reader Storeの蔵書点数は、日々増加しています。

なにがなんでも専用端末で読書する必要はないので、蔵書点数は、購入当初からあまり気にしていませんでした。それよりも、Reader Storeでは、話題作の特集や作家・シリーズ特集、映画・ドラマの原作特集がWebサイトで組まれるところが気に入っています。書店で、意外な本に出会えたのと同じようなことが、Webサイトでも得られるのと同時に、売り手・造り手の想いが伝わって来る感じが気に入っています。

頻繁な改良が行われている

Android用のReaderアプリが登場してからは、これで読書をすることもあります。出張などに出かける時は、電池残量を気にする必要がないPRS-T1を使って、自宅ではGoogle Nexus 7という使い分けをしています。

こうなると気になるのが、片一方で読み進めた時の処理です。当初は、ページ同期機能が無かったので、切りの良いところで読むのを止めて、別の端末で読む場合は手でページを移動していましたが、最新のファームウェアを使えば自動で行われるので、面倒な使い方をする必要がなくなりました。

PRS-T1は、発売から1年以上が経過していますが、まめにアップデートが行われているために商品価値が下がっていません。

正直、Sonyは、これ程面倒見の良いメーカだったのかと再認識させられました。Sonyがじっくりと熟成させながら、良い端末の開発を進めていると思わせる1年でした。

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