キッカケもらって大暴れ!
オイラのまわりにはいろんな人がいる。バンドマンもいれば芸人さん、小説家、カメラマン、映画監督……才能に溢れた人たちばかりと思われるかもしれないが、いたって普通だ。みんな、まともな生活を送っている。
世の中的にクレイジーと思われている人に限ってクソ真面目だったり、きちんとしている。ノーマルもアブノーマルもない。そんなボーダレスな時代に生きている。
バカをやりながら家賃を払って、光熱費や税金を払って、メシを食うって、キッチリとした人間ではないと不可能だ。プロのバカ。
昔、泉谷しげるさんにインタビューでお会いしたときに泉谷さんが言っていた。「俺はキッカケを出してもらってムチャクチャやってるんだもん。キッカケ待ちで暴れてる。」
正確には覚えていないが、こんなことを話していらっしゃった。ネタバレみたいで申し訳ないけど、そんなもんなんだと思う。
オイラも自分のバンドのライブでとんでもないことをしているかもしれないけど、それに近いものがある。プライベートからブッ壊れていたらただの危ない人間だ。
それを“やり方”というのだろう。
趣味が高じて会社社長へと
○○マニア、○○ヲタクという人間がいる。限られた世界に関して異常なまでの思い込みがある人たち。オイラは美しいと思う。
1つのことに夢中になれるというのは才能だ。なかなか、そういったことに出会うのは難しい。「特に趣味は無いです」なんて人だらけ。ま、そういった人たちをあーだこーだ言うつもりはないけれど……。
コスプレでも何でもいい、自分が本気になれるものを持っている人間は強い。そして、それは本人が思っている以上にいずれ自分を助けてくれることとなる。
会社員時代のことだが、編集部の先輩にレコード収集家がいた。とにかく、レコードが好きで給料のほとんどをレコードに注ぎ、年に何回も海外に行ってはレコードを大量に購入していた。
ダンボールで何箱分も購入。もちろん、空輸するわけだが、限界ギリギリの枚数は手で持ち帰る。その結果、何度も税関で止められたらしい。「何をしてる方ですか?」
そりゃそうだ(笑)。不審者。
編集部にいても、ほっとんど仕事をするわけでなくずっと海外に電話をかけていた。それがバレて部署を変えられた。
それでも懲りずに海外へと電話をかけ続け、最終的には会社をヤメることに。
先日、偶然、高円寺の街で会ったのだが、今ではレコード会社の社長になっていた。海外レコードの原盤を買い取って日本でリリースするレコード会社。
大きな会社ではないけれども、立派な社長である。好きこそものの何とやら。
趣味が哲学となり仕事となる
レコードでもDVDでも本でも何でもいい。ある程度の数字を超えると、それは仕事(作品)となる。中途ハンパな数字ではダメだ。
レコード100枚、1,000枚程度では普通。でも、それが10,000枚、100,000枚となれば新しい世界が見えてくる。
ピリオドの向こう側。単なる趣味の次元だったモノが作品となりお金を生む。
オイラも偏ったDVDが好きで収集していた(あまり自慢できるモノではないけれども)。それが3,000枚、5,000枚となってきた頃から、それをネタに仕事が増えてきた。
1つのジャンルのモノを一般の人が想像できる以上の数を収集すると、それに関して自分なりの話ができるようになる。すると、それはゲンコーになったり、イベントにもなったりする。
DVDに使った金額は都内でマンションを購入できるくらい。今となっては貯金していればと……いやいや、そんなことはない。
そういった活動の末、オイラはDVDの監督もした。新しい出会いもあった。良い経験。そして、それがネタとなり、また違う仕事も発生する。恩返し機能。
天才という言葉について
発明王・エジソンはこう言った(実際に聞いたわけじゃないけど)。
『天才は1%のひらめきと99%の努力』
ま、これにはいろいろな解釈がある。オイラには未だに、この真意がわからない。そもそも、天才って何だろう? ってな話だ。
肉体的な優劣はわかる。だって、オリンピック選手とかってスペシャルな存在だと思うから。生まれついてのポテンシャル?
でも、日々の鍛練でそういったスポーツ記録的なことも変わるのであろう。ま、身長が2メートル近いバレーボール選手とかは別だろうけど。身長3メートルのバスケット選手がいたら無敵だ(いないけど)。
オイラのまわりには天才などいない。でも、自分の好きなこと、興味のあることにバカみたいに本気になっているヤツはいっぱいいる。
そのことをオイラは誇りに思っている。どいつもこいつもアホンダラだ。でも、愛おしいヤツらばかり。
人間、ある程度の年齢になれば多くのことを諦める。でも、100日に1日くらい、こんなことができればおもしろいんじゃねーか? なんてアイデアが降ってきたりする日もある。
でも、それを年齢や生活のせいにして実現化しなければ、それは妄想でしかない。99日をダイナシにしても重大な1日に気付いて、それを99日全うすれば奇跡は起きる。
愛こそすべてだ……
前回の叫訓の続きになるけれど、今年の1月15日に9年ぶりのアルバムを2枚同時発売した銀杏BOYZの峯田和伸はインタビューでオイラにこう言った。
印象的な言葉だったので、本稿で使わせてもらう。
『映画評論家とか、週5で映画観てる映画ファンが良い映画監督になれるかっていったら違うじゃん? でも、俺はいっぱい音楽聴いて、音楽めっちゃ好きなヤツで、それなのに良いロック歌手になる。俺はタランティーノになる(笑)。ただの音楽ヲタクが良いものを作るっていう。天才にはなれないけど、普通の奴が良いものを作る。そういうのをやる。』
名言だ。「天才にはなれないけど、普通の奴が良いものを作る」か……素晴らしい。オイラはそういった人間が作り上げたものをこよなく愛する。
普通の奴が良いものを作ったとき、その普通の奴は天才と呼ばれるんだろう。それだけの話だ。天才なんかじゃない。この世に天才などいない。天才と呼ばれるだけだ。
もし仮に天才がいるのならば、それは……。
“1%の偶然と99%のLOVE”
音楽が好きだから、それを仕事にする。当たり前の話だけれども、そうでもない自称・アーティストもいる。
この数ヵ月、売れたいという自称・アーティストと仕事をした(過去形)。でも、彼らから好きな音楽の話を聞くことはなかった。予算の話とプロモーション展開の話だけ。
きっと、彼らが売れることはないだろう。
叫訓58
天才なんてこの世に存在しない
普通の人間による思い込みの積み重ね