インタビュー

“人とのつながり”がもたらすコミュニティの力 ―「Start Python Club」3周年記念インタビュー

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ハンズオンへの展開は?

――いろいろなテーマに取り組んで,試行錯誤しているようですね。Stapyは毎回,講演を主体にイベントを開催していますね。アンケートを取られていますが,ハンズオンやチュートリアルをやってほしいという要望はないのですか?

阿久津:ハンズオンをやってほしいというリクエストはたくさんもらっています。ただ毎月,限られた時間の中で,限られた人数のスタッフでイベントを運営しているので,リクエストに応えきれないのが現状です。

辻:実はハンズオンにはトライしたことがあります第4回:2015年9月⁠。ただそのときは,参加者のレベル,マシンのOSや実行環境もバラバラだったため,全体をまとめきれませんでした。これは大きな反省点でした。勉強会の時間は2時間と限られているし,参加者も多いので講演形式を取っています。

阿久津:スタッフとしては常にハンズオンをやりたいという気持ちはあります。今年3月,2回目の長野の巡業イベントをやったときは,参加者を限定して,開発スプリントをやりました長野第2回:2018年3月⁠。レベルもテーマもバラバラで,自分が開発したいテーマを持ち込んでもらい,半日かけてみんなで開発を行いました。

印象的だったのは,Stapyスタッフでメンターとして参加した横山直敬さんが,中学生プログラマSくんと一緒に並んで座りながら,Djangoのプログラミングをやっていたことですね。プロのプログラマと中学生のプログラマがペアプログラミングに近い状態で,開発をやっているシーンは巡業ならではの出来事だったと思います。

「みんなのPython勉強会 in 長野」の様子

「みんなのPython勉強会 in 長野」の様子

Stapyで伝えたいメッセージ

――リアルなイベントならではの人のつながりを楽しんでいるのが伺えます。あらためて,Stapy参加者に伝えたいメッセージはありますか?

阿久津:私自身の経験として,よく勉強会で「Python学習のTIPs」として,T(Textbook:教科書⁠⁠,I(Internet:インターネット⁠⁠,P(People:人)が大切だと伝えています。

阿久津氏が提唱する「Python学習のTIPs」

阿久津氏が提唱する「Python学習のTIPs」

T(教科書)はとくに独学者には重要なリソースです。たくさんの本がありますが,玉石混交なので自分の力量や方向性にあった教科書を見つけて,しっかりと基本を身につけたい。I(インターネット)は今は学習に欠かせない鉄板のリソースです。わからないことをウェブで検索して理解することはとても効果的ですし,今ではMOOCのようなオンライン学習のコンテンツも充実しています。しかしノイズとなるムダな情報も多いので,大量の情報に溺れないよう気をつける必要があります。TもIも重要なのですが,私が一番大切だと思っているのがP(人)です。

コミュニティのイベントに行って,仲間やメンターを見つけることが,学びを広げるのにとても有効です。私のように周りに教えてもらえる人を見つけられず独学で学んでいると,わからないことがあったときに先に進めなくなって,モチベーションが保てなくなることがあります。しかし仲間やメンターがいると,気軽にわからないことについてアドバイスをもらうことができます。逆に自分が知っていて相手が知らないことがあるときは,さっと教えてあげる。そんな互助の関係を作る場としても,コミュニティに参加することは有効だと思います。

さきほどの長野イベントでの出来事はまさに好例ですよね。コミュニティで得た恩恵を,コミュニティに返すことで,エコシステムが回っていくと思います。

――コミュニティに還元するという話はOSSにも通じる考えですね。でもエンジニアには対面が苦手な人も多いと思いますが,どうすればよいのでしょう?

阿久津:それでも外に出て行って,人と会ったほうがいいと思います。もしT(教科書)とI(インターネット)だけで十分に学習ができるのであれば,それでもよいかもしれません。しかしP(人)と会って話すと,必ず自分だけでは気づかない偶然の学びがあるはずです。コミュニティはそういう偶然の学びに出会う場として,とても有効です。

3年前,『Pythonエンジニア養成読本』の読書会に参加して,鈴木たかのりさん,池内孝啓さん,関根裕紀さん,清原弘貴さん,嶋田健志さんといったPythonコミュニティのエンジニアと仲良くなりましたが,みなさんからはPythonやIT関連の技術を学んだほか,オープンソースのコミュニティの人たちとの息づかいというか,考え方や文化を学びました。みなさん技術に詳しいことはもちろんですが,知的好奇心が豊かで,フランクで明るいんですね。私にとってはとても素晴らしい出会いで,彼らにとてもインスパイアされました。

どうしても職場の固定された人間関係の中で閉じこもっていると,クローズな思考になってしまいがちです。しかしコミュニティのイベントに参加して,オープンソースの文化に触れることで,クローズな環境では得られない新しい知識が増えます。実際にハードウェア中心の製造業である私の職場には,Gitなどのバージョン管理システムや,アジャイル開発のことを知っている人は少なかったのですが,コミュニティで得た知識が自分の仕事の枠を広げるのにとても役に立っています。

著者プロフィール

阿久津剛史(あくつたけし)

Start Python Club共同設立者・代表。某メーカーのマーケティング部門に勤務。データサイエンスに関心を持って4年前からPythonを始める。縁あって辻さんと知り合い,Start Python Clubを立ち上げる。仕事,コミュニティ活動の傍ら,休日は子供のサッカーチームを指導する2児の父。読書大好き。最近ハマっている本は,エリック・リースの『リーン・スタートアップ』。

Twitter:@akucchan_world
GitHub:@takeshi-a


辻真吾(つじしんご)

Start Python Club共同設立者・技術代表。東京大学先端科学技術研究センターに勤務。ちいさな頃からコンピュータが大好きで,いろいろなプログラミング言語を使って来たが,10年ほど前からPythonに落ち着く。さまざまなことに興味があるが,最近は,生命のような複雑なシステムをモデル化できる,新たな方法論を探したいと思っている。食べることと料理することが好き。最近はまっているのは,銭湯通い。

Twitter:@tsjshg
Web:http://www.tsjshg.info


高屋卓也(たかやたくや)

書籍編集者。2002年株式会社技術評論社に入社。営業職を経て現職。入門書から専門書まで幅広く担当。 データサイエンス系の専門書を多く手がけ,主な担当作に「データサイエンティスト養成読本」シリーズなど。

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