インタビュー

“人とのつながり”がもたらすコミュニティの力 ―「Start Python Club」3周年記念インタビュー

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『Pythonスタートブック[増補改訂版]』の注目ポイント

――ところで辻さん,「Pythonスタートブック」の増補改訂版が2018年4月に発刊されましたが,だいぶ厚くなりましたね。かなり追記されたのでしょうか?

辻:はい。ウェブとデータ解析の章を追加しました。初版は2010年に発行しましたが,それから8年の間にだいぶPythonの仕様やそれを使う実行環境が変わってきました。とくにPython 2系から3系へのシフトが大きな変化点でしたので,第2版ではすべてのサンプルコードをPython 3系に揃えました。

――初版は2010年だったんですね。辻さんはかなり前からPythonに触れていたようですが,いつごろからPythonを使ってきたのでしょうか?

辻:Pythonを使い始めたのは2006年でした。当時はPythonの生みの親,Guido van RossumがGoogleに勤務していて,Google App Engineなどのサービスを開発するためにPythonを使っていました。PythonはGoogleとNASAが使っているということで,プログラマの間では注目されていたので,私も使ってみたのですが,ウェブ系のライブラリが揃っていて便利でしたし,なによりもコードが読みやすいので,ハマりました。

――改訂版ではウェブフレームワークについても触れているのですか?

辻:いいえ。スタートブックは,Pythonの標準ライブラリに入っているモジュールを使うことを基本コンセプトとしているので,ウェブフレームワークは使っていません。ただし本格的なウェブアプリを開発するときはウェブフレームワークを使ったほうが便利なので,その点だけ10章の最後の方に書いておきました。

――データ解析の章はどんな内容ですか?

辻:データ解析を扱うと,とても1章だけでは書き切れません。改訂版ではSQLの紹介も兼ねて,turtleモジュールのカメを動かして,ヒストグラムを描くという題材を載せました。実はクラスの継承の話題も入っているので,最後の章にふさわしい難しさになったかなと思います。

阿久津:改訂版ではだいぶ内容が追加されていますが,個人的には付録が充実したと思います。困ったときに参考にすべき,書籍や標準ドキュメント,Stack Over Flowなどが紹介されていて,とても参考になりました。

Stapyのこれから

――最後にこれからStapyでやっていきたいことをお伺いします。

阿久津:Stapyは草の根コミュニティなので,この活動を継続していくことが大切だと思います。私自身はプロのプログラマでもなければ,データサイエンティストでもありませんので,特定の技術分野について詳しいわけではありません。Pythonを軸としながら,いろいろなIT技術についてキュレーションをするような感覚で,イベントを企画しています。特定の分野に縛られないから,人的なネットワークが広がり,コミュニティの参加者も増えているのだと思います。長野のGeekLab.Naganoや理研AIP,つくばの研究機関とのコラボは,まさに草の根的な活動だからこそ実現できたと思います。ほかのコミュニティや団体との異文化交流が,人と人の新しいつながりを作ります。それが何か新しいイノベーションやコラボレーションなどの具体的な行動につながることを期待しています。

辻:エンジニアやプログラマではない人でも気軽に参加できるコミュニティを続けたいですね。初心者向けのプログラミング勉強会という形でStapyを始めましたが,これほど多くのニーズがあるとは思いませんでした。多くの方々のが参加してくれるニーズがある限りはこのコミュニティを続けていきたいと思います。

最近はAIがブームになっていて,ちょっとデータ解析ができると,会社の上司に「じゃあAIの仕事をやってみてよ」というムチャぶりをされて,どうしたらよいか困ってStapyに来る方もいます。IoTとかブロックチェーンとか,新しい技術がどんどん出てくるなかで,それらにうまくキャッチアップできるよう,Stapyが受け皿になれるといいと思います。

阿久津:それから私はとくに若い人たちをエンカレッジしたいです。Stapyのイベントは基本的に学生は無料で参加できるようにして,意欲のある学生の参加を応援しています。毎回,懇親会のとき,自由に参加者にLT(ライトニングトーク)をしてもらっているのですが,技術的に面白いLTを何回もやってくれる常連がいます。私は密かに彼らを「LT王子」と呼んでいるのですが,初代LT王子の山田聡さんはPyConJP 2016でBottleのチュートリアルを務めた実力派のエンジニアですし,二代目LT王子の横山直敬さんはLTをするために一生懸命に新しい技術を習得して,発表ネタを作るという「LT駆動学習」という新しい造語も作ってくれました。今は修士課程2年生の藤武将人さんがDeep Learningネタで三代目LT王子として大活躍しています。彼らのように高いモチベーションを持っている若い人には,発表の場をできるだけ提供して,自分のスキルをアピールしてもらいたいと思っています。勉強会に出て,新しい情報を聞くインプットはひとつの学びになりますが,自分の学んだことをアウトプットすることはより大きな学びになりますし,何よりも自信につながります。私はStapyに来てくれた人の中から,いずれ世界で活躍する人が出てくることを期待しています。

Stapy共同設立者の2人。『Pythonスタートブック[増補改訂版⁠⁠』を手に

Stapy共同設立者の2人。『Pythonスタートブック[増補改訂版]』を手に

著者プロフィール

阿久津剛史(あくつたけし)

Start Python Club共同設立者・代表。某メーカーのマーケティング部門に勤務。データサイエンスに関心を持って4年前からPythonを始める。縁あって辻さんと知り合い,Start Python Clubを立ち上げる。仕事,コミュニティ活動の傍ら,休日は子供のサッカーチームを指導する2児の父。読書大好き。最近ハマっている本は,エリック・リースの『リーン・スタートアップ』。

Twitter:@akucchan_world
GitHub:@takeshi-a


辻真吾(つじしんご)

Start Python Club共同設立者・技術代表。東京大学先端科学技術研究センターに勤務。ちいさな頃からコンピュータが大好きで,いろいろなプログラミング言語を使って来たが,10年ほど前からPythonに落ち着く。さまざまなことに興味があるが,最近は,生命のような複雑なシステムをモデル化できる,新たな方法論を探したいと思っている。食べることと料理することが好き。最近はまっているのは,銭湯通い。

Twitter:@tsjshg
Web:http://www.tsjshg.info


高屋卓也(たかやたくや)

書籍編集者。2002年株式会社技術評論社に入社。営業職を経て現職。入門書から専門書まで幅広く担当。 データサイエンス系の専門書を多く手がけ,主な担当作に「データサイエンティスト養成読本」シリーズなど。

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