自分の証明と持続的な学びがこれからのDX人材の鍵を握る ~A-BANKが考えるDX人材バンクの在り方とは

2020年11月、新しい無料会員制DX人材バンク事業を立ち上げた株式会社A-BANK(エーバンク)の庄司直久社長に評価・育成・紹介の一体型人材紹介事業に至った経緯や現状認識、今後の展望などについてお話を伺いました。

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庄司 直久(しょうじ なおひさ)
Founder & CEO/A-BANK。

大学卒業後、旧財閥系大手メーカ勤務を経てオーストラリアに留学。国連開発計画ニューヨーク本部/マレーシア、Appleジャパン、トランスコスモス株式会社事業企画開発本部、ビートレンド株式会社最高執行責任者などを経て独立。

中国中央政府系アセットマネジメント会社の日本代表を務め、日中クロスボーダー投資ファンドの設立メンバーとなる。一方、音声認識、VDBMS、リコメンデーションエンジン、オンライン決済等多数のシリコンバレー・ベンチャーに投資、多くの日本法人の設立にも携わる。アメリカと中国双方のビジネスに精通。

立教大学法学部。オーストラリア・モナッシュ大学大学院開発経済学修士。

Instagram:https://www.instagram.com/naohisa_shoji
株式会社A-BANK:https://automatist-bank.ai

DX人材の定義から熟考したA-BANKの立ち上げ

――これからのDX人材の育成と紹介をサポートするA-BANKはとてもユニークな仕組みで設計・開発されていると聞きました。とくに、登録すれば誰でも人材バンクの会員になれるわけではない点が特徴的です。どのような仕組みなのでしょうか?

庄司氏:はい、登録希望者はまず仕事を求めているDX分野での基礎力テストを受けてもらいます。たとえば、AI分野の場合、エンジニア・ビジネスパーソンを選択して基礎力診断を受けてもらいます。登録希望者は、スマホから10分程度の診断を受ければ完了です。 A-BANK側でABC判定をし、A、B判定者の方々がA-BANKの会員になれます。C判定の方は準会員としてオンラインで面談を行いながらB判定以上になっていただくよう「学びのアドバイス」をします。そして再テストを行い、正会員を目指してもらいます。

 A-BANKの診断フロー
図 A-BANKの診断フロー
――「学びのアドバイス」という仕組みはいいですね。A-BANKへの登録申し込みや診断は有料ですか?

庄司氏:いえ無料で、希望者はどなたでも診断を受けられます。

A-BANKで提供する診断テストは専門家が設計したもので、レーダーチャート化された結果が提供されるため、ひと目で理解力が不足している項目がわかるようになっています。A-BANK会員あるいは準会員となった方は、レーダーチャートで顕在化した弱点を効率的に補強していけば良いのです。

また、A-BANKのもう1つの特徴として、診断結果に基づいたオンライン講義を用意しています。これは有料ではありますが、A-BANKの専門家ネットワークを活用した内容の講義となっており、会員・準会員どちらの立場の方にとってもスキルアップのショートカットになるので効果的です。

――会員になった方々の育成についてもう少し詳しく教えてください。

庄司氏:A-BANKでは引き続き応用力や実装力を試すテストを受けてもらいます。そして最新テクノロジ動向にキャッチアップしているかどうかも継続的にテストします。それらをデータとして採用活動を行っている企業会員に提供することで、データ分析の上での人材マッチングへつなげていきます。また、企業会員の関連部門の社員の方々にも同様のテストを受けていただき、社内人材との比較を行っていただきます。これにより、⁠採用を行う)企業会員の立場からも、A-BANK会員の企業ごとの評価が行えるのが特徴です。

――会員の中には応用力テストで良い結果が出ない場合も考えられます。その場合もサポートは継続されるのですか?

庄司氏:もちろんです。応用力テストではさらに詳細なデータが出ますから、オンライン面談を行いながら、スキルアップを目指す方にはテストのアウトプットに基づいたオンライン講義を受けてもらうことになるでしょう。A-BANKからプッシュで送られるキャッチアップ・テストの評価が低い場合は、モニターすべき国内外のメデイアや書籍をお伝えします。応用力テスト、キャッチアップテストともに再テストをしてご自身のアップグレードを証明していただきます。

DX人材とは「立ち止まることなく持続的に学ぶ人」

――A-BANKが考えるDX人材の一端が見えたような気がします。

庄司氏:はい。私たちが考えるDX人材は「学ぶ持続力」を持つ人材です。その理由は?と問われれば、皆さんがお気付きのようにAIをはじめとするDX分野のテクノロジーの進化と変遷が非常に激しいという事実を挙げたいです。

もちろん、過去の学歴、資格や経験、コンペなどでの実績などはとても大切な定点的なプロフィール・データです。でも、⁠今」はどうなのか? ブレークスルーにキャッチアップしているのか? ということを評価しないと競争力あるDX人材とは言えないと思います。どんな優れた人でも、持続的に学ばなければならず、そしてそれを自分で証明して行く時代なのだと思います。無事転職に成功してA-BANKの企業会員に入社された後も、ぜひ持続的に学んでいただきたいと思います。

――DXと言っても多様ですね。

庄司氏:そうですね。非常に多岐にわたるテクノロジ分野を内包していると思います。A-BANKは私がCEOを務めるインキュベーション事業会社Automatist(オートマテイスト)のAI事業ラインから生まれた会社で、Automatist-Bankの略称です。Automationのプロフェッショナルを糾合した人材バンクという意味です。そのような背景から、まずはAI分野からスタートします。現在、他分野も速やかにリリースできるよう準備をしています。

今後、A-BANKのサイトには多様なDXの分野がアイコンで表示されるようになります。仕事を探している方は、まず自分のキーワードに合致するアイコンをクリックしてエントリしてください。複数でも結構です。ご自身のキーワードを積極的にどんどん増やしていただきたいですね。

――働き方の多様化に伴いフリーランスも増えていますね。

庄司氏:A-BANKではフリーランスの方々も歓迎いたします。ただし、右から左へご紹介するということは行わず、転職を希望する会員の方と同じプロセスを踏んでいただきます。ご自身を証明して適切な評価を得て良い仕事と出会ってほしいですね。

――A-BANKではIT系人材以外も対象としていると伺いましたが、どのような人材ですか?

庄司氏:(プラス)DX人材です。

――+DX人材?

庄司氏:はい。製造業、サービス業問わず、あらゆる産業ドメインに存在する専門性豊かな人材に加えてDXのスキルと知識を取得された方々のことをさします。A-BANKでは+DX人材と定義して、積極的に市場に紹介していきます。

この+DX人材ですが、Googleでは⁠未来のバイリンガル⁠と呼んでいるようです。特定の産業ドメインの専門性に加えて、たとえば機械学習の基礎力がある方、このような方はこれからの日本の経済社会でとても求められる人材だと思います。今例に挙げた機械学習は、おそらく基本的な素養として産業ドメインの壁を超えて幅広く受容されていくと考えます。

――+DX人材の具体例を挙げていただけますか?

庄司氏:たとえば素材産業ではマテリアルズ・インフォマテイクス(Materials Informatics)と言って、素材開発に機械学習が使われ始めています。特許が大変重要な分野ですが、新素材の開発のスピードを上げるためにAIが世界的に活用され始めています。材料開発の経験があり機械学習を理解し実装できる方、非常に魅力的ですよね。

――ほぼすべての産業ドメインが+DX人材を必要としている、という理解でよろしいですか?

庄司氏:はい、その理解で良いと思います。A-BANKではDXの中でまずは+AI人材から募集を始めます。エンジニアだけではなく、ビジネスパーソンも高い需要があるでしょう。A-BANKでは、AIの基礎から応用まで、⁠学びのアドバイス」「評価テスト」を一体運営して、ご自身の付加価値をつけていただきたいと考えています。もちろん、フリーランスの方も同様です。年齢は問いません。

――A-BANKのサイトを訪れる人たちへ贈るメッセージとは?

庄司氏:そうですね、非常に不透明で予測が難しい時代になりましたが、正解を探すのではなく、自分で創り上げていきましょう、と言いたいですね。そのためにはまず自分を証明することから始めよう!です。

採用企業のDX人材技能評価を任せられる存在に

――DX人材を採用する企業にとってのA-BANKとは?

庄司氏:まず今ご説明したA-BANKの仕組みそのものが良質な人材のフィルタになると思っています。

A-BANKが目指す+DX人材を核としたエコシステム
A-BANKが目指す+DX人材を核としたエコシステム

次に、人を採用するということは、とくにDX分野においては、経年で比較的大きな投資になると思いますが、A-BANKは企業の人材投資リスク、フリーランスでいえば業務委託契約リスクを逓減するパートナーでありたいです。テストやオンライン面談を通じて可能な限り有用なデータを候補者から受け取り、DX人材の採用活動を行なっている会員企業の皆様が設定したタスクに最適な候補者に出会えるよう尽力して参ります。

――DX人材の採用活動をしている企業はA-BANKにとって大切なお客様であり、同時にパートナーでありたい、ということですね?

庄司氏:はい。これはA-BANKの基本コンセプトなのですが、クライアント企業のDX人材の採用活動において、技能評価をおまかせいただく、ということがあります。そのためには、会員企業の皆様とコミュニケーションを密に取らせていただきながら、評価ベクトルを市場動向にマッチした内容にブラッシュアップしたり、取得すべきデータ項目を常にレビューしたり、私たちには多くのやるべきことがあります。でもやり切った後に見えてくるものが必ずあると思います。

――DX分野の人材を評価するのは大変ですね。

庄司氏:そうですね。先ほどDXは多様と仰いましたが、それぞれの分野が独立して存在しているケースは稀で、相互補完性や依存性があるものです。A-BANKでは会員企業が人材に求めるタスクを複合的な観点からしっかりと分析し、会員に対しての評価方法に反映していきます。

――KaggleやGitHubなどオープンな環境で活躍しているエンジニアも多いですが、どのようにお考えですか?

庄司氏:KaggleMasterを保有されている方、GitHubで注目されるエンジニアはたしかに優秀な方々だと思います。A-BANKではこういったオープンコミュニテイでの活動から得られるプロファイル・データに注目しつつも、人材市場から顕在化してくるタスクとのバランスを考慮しながら独自のアプローチで固有の人材分析データを持つ会社になります。そしてそれが求職者、求人企業に最も貢献できることだと考えています。

――本日はありがとうございました。

庄司氏:ありがとうございました。

株式会社A-BANK Webサイト
https://automatist-bank.ai

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