2011年2月21日、ペイパルジャパン株式会社は2011年度に向けた同社の事業戦略説明会を実施し、新ソリューションの発表を行った。
説明会開始にあたり、ペイパルジャパンの今後の日本展開について積極的に取り組むことを誓ったペイパルジャパン株式会社代表取締役 Andrew Pipolo氏
2015年にオンライン決済市場は5,000億市場へ、EC市場は12兆円まで拡大
事業戦略発表に先立ち、株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部情報・通信コンサルティング部主任コンサルタント 田中大輔氏より、「 国内決済サービス市場の環境変化」と題したプレゼンテーションが行われた。
田中氏は「加速するスマートフォンの普及・浸透」「 ソーシャルゲーム内での課金ビジネスの拡大」「 電子書籍・VOD(ビデオオンデマンド)市場への期待」という要因から「現状はクレジットカードの利用が多いが、今後はオンライン決済にシフトしていく」とコメントした。また、幅広い世代でのEC利用が増えている点についても触れ、NRI IT市場ナビゲータ2011年版資料をもとに、2015年にオンライン決済市場は5,000億市場へ、EC市場は12兆円まで拡大すると予測した。
「とくにスマートフォンの市場に注目したい」と述べる株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部情報・通信コンサルティング部主任コンサルタント 田中大輔氏。さらに、NFC(Near Field Communication)の世界的普及の兆しが見えていることにも触れ、世界標準での携帯電話経由によるネット決済が広がっていくと予測した
2010年の総決済額は2009年比で50%増
続いて、ペイパルジャパン株式会社代表取締役 Andrew Pipolo氏から、同社の2010年度の振り返りおよび2011年に向けた事業戦略について発表された。
2010年に関しては、2010年末の段階で日本のPayPalアカウントが150万存在しており、そのうち60万アカウント(約40%)が過去1年間に1度以上利用している「アクティブユーザ」となっていた。こうした実績に基づき、日本におけるPayPal経由での総決済額が2009年比で約50%増となったことを発表した。
日本への展開については、後述する売り手向けの新ソリューションの他に、すでにユーザ(買い手)向けに、「 HopShopGo 」や「PayPalプラザ 」「 バイヤープロテクション 」などのサービスを展開していることを説明し、ペイパルジャパンとして売り手・買い手両方の立場のユーザに向けて取り組んでいる点を強調した。
スマートフォン、電子コンテンツを意識した新ソリューションの提供を発表
事業戦略の発表の後、ペイパルジャパン株式会社マーチャントサービス部長 大橋晴彦氏より日本市場に向けたソリューションについても発表された。
新ソリューションを発表するペイパルジャパン株式会社マーチャントサービス部長 大橋晴彦氏
今回発表されたのは、
モバイル エクスプレス チェックアウト
PayPal for Digital Goods
ウェブ ペイメント プラス
の3種類。これらはすでに2010年10月に開催された「PayPal X Developer Conference Innovate 2010」で発表されているソリューションで、日本国内での展開が期待されていた。本日付けでサービスが開始するのが「モバイル エクスプレス チェックアウト」 、残りの2つについては近日サービス開始予定となっている。
なお、昨年のイベントの様子については、gihyo.jpの記事「インターネットが変える世界通貨の考え方―PayPal X Developer Conference Innovate 2010レポート 」を参照してもらいたい。
モバイル エクスプレス チェックアウト
本日からサービス開始した「モバイル エクスプレス チェックアウト」は、同社の「エクスプレス チェックアウト」のスマートフォン版で、iPhone/iPad、Android端末に最適化したインターフェースを実装している。
モバイル エクスプレス チェックアウトの画面フロー
スマートフォンのUIに最適化しており、最短で2クリックによるスマートフォン上での決済を実現する。ユーザはあらかじめ情報を登録しておくことにより、端末内に財務情報を含む個人情報を残すことなく、安全に決済を完了できる。
この他、マイクロペイメントにも対応しており、売り手にとってメリットのある手数料となっている。
PayPal for Digital Goods
PayPal for Digital Goodsは、デジタルコンテンツのために最適化された決済ソリューションで、オンラインサイト上での利用が可能となる。ユーザは最短3クリック(Remember Me機能を利用すれば1クリック)で決済を終えることができ、売り手にとってはコンバージョンレートを下げにくくするメリットがある。
PayPal for Digital Goodsの一番のメリットは、売り手にとっての決済手数料の自動選択が行われる点。PayPal for Digital Goodsを利用することにより、売り手が操作することなく、少額決済用の手数料(マイクロペイメント)と通常の手数料が自動で比較され、売り手にとって最適な手数料が適用されるようになる。
これにより、少額でダウンロード可能なコンテンツ(電子書籍や画像、動画、ゲームコンテンツなど)の販売がしやすくなる。
ウェブ ペイメント プラス
3つ目の「ウェブ ペイメント プラス」は、PayPal独自の決済プラットフォームで、中小規模のショッピングサイトに向けたソリューションとなっている。このソリューションの特徴は、
(導入サイトの)決済ページのデザインに手を加えずに、PayPal決済システムが導入できる
電話やFAXを利用してPayPalの決済を受け付けることができる
という2点。OSSによるECサイトを運営している個人事業主や、自営による店舗展開とECを連携している場合などに最適なソリューションと言えよう。
APIを利用した開発が可能
PayPalの各種ソリューションについては、現在APIの形で提供されているものが多い。そのため、アカウント作成後、エンジニアの手により、自分のサービスへ組み込むことも可能となっている。さらに、企業アカウントの取得、口座開設などを行うことにより、自社のサービスに対して短期間での決済システムの実装が可能となる。
これらの技術情報を提供しているのが、「 PayPal X Developer Network 」だ。
gihyo.jpでは、3月からPayPalの各種APIを利用する方法、独自システムの開発に向けた技術情報をまとめた新連載を開始するので、併せてご覧いただきたい。