“プロジェクト管理の知見をシェアしあう一日に。”~橋本氏による基調講演
基調講演を務めたのは橋本氏。「プロジェクト管理に詳しい方によるステージセッションをメインコンテンツに、プロジェクト管理の知見をシェアしあう一日に」と、Backlog World主催者としてイベントへの想いを込めながら力強く開会宣言をしました。
イベント開催の背景や趣旨に続いて、昨今日本国内で注目を集める「働き方改革」について取り上げ、そもそもとして働き方改革が生産性を改善ずるための手段なのかどうかという疑問を投げかけたうえで、「実際に労働生産性を上げるには、成功した良質のプロジェクトが増えていくことが大事なのではないでしょうか」と、自身の考えを提示しました。つまり、働き方改革=プロジェクトマネジメントの成果であるというわけです。
こうした前提とともに、自身が代表を務めるヌーラボは、コラボレーションツールを通して「働く」を楽しくし、チームの生産性を挙げていると、実際に取り組んでいる内容を紹介しました。その中には、先日1月25日に発表された九州朝日放送とのコラボレーション企画「野望研究所」についても触れられました。
この紹介とともに、Backlog Worldが「プロジェクト管理に関わるすべての方のための祭典」であることを改めて強調し、イベント参加者に、今日1日を楽しみ、そして、何かのきっかけを掴んでもらいたいとして、基調講演を締め括りました。
大小さまざまなプロジェクトに関わるキーマンたちによるセッション
基調講演のあとは、A/B、2つのトラックに分かれて、キーマンたちによる多彩なセッションが行われました。
国籍・職種・働き方の違いを乗り越えよう!ハカルス流プロジェクト管理術
染田 貴志 / 株式会社ハカルス
元ヌーラボ所属で、Backlogの開発に関わっていた株式会社ハカルスの染田貴志氏は、現在同社で取り組んでいるプロジェクト管理術の事例とともに、プロジェクト管理のノウハウを紹介しました。同社は、ヘルスケアと機械学習を軸とした事業展開をするスタートアップ企業です。
ハカルスは国内だけではなく、海外からリモートワークで参加しているメンバーがいるため、国籍・職種・働き方が異なる多様なメンバーによるチーム構成で業務を行っています。こうした差異と向き合いながら、当初はシンプルなプロセスを心がけてサービス開発を行っていたそう。そして、会社が成長期に入るにつれコミュニケーションが活発になった結果、Backlogを導入し、タスク管理を明瞭にしたことが、プロジェクト管理をスムーズに行えるようになったと言います。
現在はさらに成長を目指すべく、チームメンバー間の情報の透明性を担保し、メンバー同士で気づきを伝えられる、いわゆるツッコミあいの空気を醸成することを心がけていると、染田氏が同社で得た知見からのノウハウを共有しました。
Mackerelのクライアントワークから学ぶ情報共有の成功と失敗
粕谷 大輔 / 株式会社はてな
株式会社はてなからは、直感的なUIでサーバ監視が行えるサービス「Mackerel」の開発ディレクターを務める粕谷大輔氏が「Mackerelのクライアントワークから学ぶ情報共有の成功と失敗」と題し、発表を行いました。
MackerelはSaaSのため、ユーザ個別のカスタマイズなどは行っておらず、認証や通知先連携、あるいはクラウド事業者との連携などが主たる開発内容になっています。その1つとしてコラボレーション開発を実施しているとのこと。具体的には、ヌーラボが提供するコミュニケーションツール「Typetalk」との連携で、Typetalkの新しいAPIのリリースに合わせ、両社間でリリース前から開発に取り組んだそうです。
粕谷氏が企業間コラボレーション開発をするうえでとくに意識したのがコミュニケーションで、コミュニケーションの属性を明確にした上で、使用するツールを選択した結果、円滑な開発を実現できたと言います。このセッションでは、特定の事例ではなく、より汎用的な観点から、企業間コラボレーション開発のポイントについて丁寧に解説され、企業間で開発を行うエンジニアやディレクター、デザイナーには大変参考になる内容でした。
仕事と子育ての両立を支援するプロジェクト管理ツール活用術
平 愛美 / Linux女子部
Backlogをはじめ、プロジェクト管理ツールは企業や組織のためのものだけではありません。個人で自身の活動を円滑にすすめるためにも活用されています。
Linux女子部をはじめITコミュニティで活躍される平愛美氏は「仕事と子育ての両立を支援するプロジェクト管理ツール活用術」にて、自身のプロジェクト管理ツールの活用ノウハウを発表し、共有しました。
平氏は2006年頃までは力技で業務を遂行し、何かあったら残業でカバーするというスタイルで日々を過ごしていたとのこと。しかし、本当にこのままで良いのか?という疑問が湧き上がり、その後、結婚・出産を経て、ライフスタイルが大きく変わりました。その結果、それまでの役割だったインフラエンジニアからクラウドエンジニアへ転身、さまざまな状況の変化があり、仕事と子育てが両立できないという悩みに苛まされたと言います。
しかし、家族のため、そして家族の協力があり、「諦めずに試行錯誤している中で出会ったのがBacklogだった」と当時を振り返りました。
Backlogと出会ってから一番変わったのが、「タスク管理からプロジェクト管理」への意識変化と平氏はコメントしました。つまり、1つ1つのタスクに追われるのではなく、プロジェクトとしてまとめて管理することで、時間を効率的に使えるようになったのです。加えて、Backlogで自身の生活を一元管理した結果、過去の履歴の検索や家族間でのルールの明文化など、日常的に起こりうるディスコミュニケーションが減り、生活内でのストレスが激減し、逆に、夫婦間の雑談が増え新しいアイデアもたくさん生まれたとのこと。
こうした経験から、自身の生活だけではなく、外部の活動などもBacklogを使って管理することで、さらに幅が広がったと、Backlog導入の効果を説明しました。
最後に改めて、家族のため、じぶんのためを考え、そのために時間や健康を第一に考え、無理をしない意識が高まったとのことです。
今回の内容は、まさにITが人間の生活を豊かにしてくれた、非常に有益な事例の1つであり、Backlog Worldが目指しているゴールとも言えるのではないでしょうか。
ヤッホーブルーイングのチームづくりと熱狂的ファンづくり
原 謙太郎 / 株式会社ヤッホーブルーイング
「ビールが大好き!」と言うITエンジニアも多くいるのではないでしょうか。かくいう筆者もビールが大好きです。最近、日本国内でも注目を集めるクラフトビール業界から、株式会社ヤッホーブルーイング 原謙太郎氏が登壇し、「ヤッホーブルーイングのチームづくりと熱狂的ファンづくり」というタイトルからして魅力的な講演を行いました。
ヤッホーブルーイングは「よなよなエール」のメーカーとしても有名で、実際に呑んだことがある方も多いでしょう。原氏は自分が所属するチームのことを「ビールを愛する"知的な変わり者"集団」と表現します。
さて、今回の発表ではヤッホーブルーイングが国内全300社の中でどうやってシェアトップを獲得したのか、そして、13年連速増収増益を続けられているのかについて、虎の巻とも言えるノウハウを公開しました。
たとえば、ヤッホーブルーイングの主力商品の1つ『水曜日のネコ』の場合、リーダー戦略・フルラインナップ戦略などを行い、ファンづくりを行いました。この商品を含め、同社がつねにブランド開発で意識しているのが「明確なターゲティング」「コンセプト・引用ベネフィット」、そして「デザインや名前はその表現手段として扱う」ということでした。
そして、魅力的な商品づくりの基盤となるのがチームづくりです。同社では「経営理念浸透への執着」を最も最重要課題として、チームづくりを行っていると言います。そのために、価値観の共有、フラットな議論、フラットな組織、コンセンサスによる意思決定など、優良なチームには欠かせない要素をしっかりと準備・整備しているのが特徴的です。
その中で特徴的なのがUD(ユニットディレクター)と呼ばれる、ユニットごとのリーダーの確立でした。こうした組織から新しいプロダクトが生まれ、そして「プロダクトにとって最も大切なのが"ファン"です」と原氏は力強くコメントします。
このファンをいかにして熱狂的なファンに変えるか、この一連の流れをYPP(よなよなピースプロジェクト)と命名して、さまざまな企画に取り組んでいます。たとえば、実際にファン同士のミーティングをつくったり、試飲イベントを開催したりと、ファンの気持ちを掴み、ファンの真理にあるロイヤリティを高めているそうです。
このように、チームづくりとファンづくり、この2輪があって今のヤッホーブルーイングがあると、同社ならではのユニークな戦略を聞くことができたセッションとなりました。
I BELIEVE THE POWER OF TEAMWORK!!
小久保 祐介 / 株式会社ヌーラボ
主催者であるヌーラボからは、2017年6月にジョインしたばかりの小久保祐介氏が、「I BELIEVE THE POWER OF TEAMWORK!!」という、まさにBacklog Worldの世界観を体現したタイトルのセッションを行いました。
小久保氏は現在名古屋に在住で、リモートワークを中心に(週2~3日)、残りをヌーラボの事業所のある福岡・京都・東京で働いているとのこと。このような働き方を実現している点からも、ヌーラボ自身が働き方の多様性を受け入れている企業であることが伺えます。
小久保氏は入社後はBacklogのバグ修正や機能改善を担当するチームに配属され、そこでまず感じたのが「あまりうまくまわっていない雰囲気」だと述べました。その理由として、ヌーラボの成長とともにチームメンバーが増えた結果、コミュニケーション流量が増大し、そのため、プロジェクト管理が煩雑になり、また、コミュニケーションコストの増加を生み出し、円滑に回らなかったのではないかと分析しました。
そして、この状況に合わせた仕組みとマインドセットを整備することを目標に取り組んだとのこと。とくに、メンバー間で「知る」意識を高めるための仕組みづくりを強化し、その中には、「Product Ownerチーム」の結成や、Backlogメンバーを福岡本社に実際に集める機会として「Backlog Gathering」を企画するといったように、お互いを知る環境を順を追って整えました。その結果、とくに「メンバー同士、肩の力を抜いて話し合える和やかな雰囲気」を生み出せたという点がとくに印象的でした。
そして、改めてプロダクトの成功が最も大事だとし、そのためにはユーザ・チーム・企業、すべてが適正なバランスで関係を保つことが必要とし、セッションを締め括りました。
BacklogとTypetalkでリモートワークを快適にする方法
小賀 浩通 / 株式会社デジタルキューブ
株式会社デジタルキューブ代表取締役社長の小賀浩通氏は、リモートワークの快適化に焦点を当てた「BacklogとTypetalkでリモートワークを快適にする方法」について話しました。
デジタルキューブと言えば、WordPressを中心とした受託開発業務が有名ですが、現在、同社内では100%リモートワークを実現しているとのこと。ここ10年の間に多くのIT企業が実践してきているリモートワークですが、同社は前述の働き方改革に注目が集まる前の早い段階から実践してきています。
小賀氏は「10年分の失敗を一挙公開します!」と、2006年創業時からの同社での働き方について紹介していきました。現在のBacklog+Typetalkのスタイルになったのは2013年からで、その前の2011年頃からBacklog+Gtalkという、「プロジェクト管理ツール」+「チャットツール」の原型での働き方が整備されたとのこと。ここに至った経緯は、円滑なコミュニケーションに加えて、さまざまな情報の記録(ログ収集と共有)など、業務の目的に合わせた結果だと小賀氏は説明しました。
そして、Backlogが持つ高いタスク管理機能と、Typetalkが持つ流動性の高い情報収集機能の2つを合わせやすかったことが、この2つのツールを選んだ理由だと述べました。
今回のセッションでは、失敗を含め同社がこれまで取り組んできた働き方およびワークフローの整備について赤裸々に公開されました。こうした知見のシェアこそが、このイベントの本質でもあり、また、参加者にとって大変役立ったのではないでしょうか。
レガシーな新聞社が本気でテクノロジーメディアを目指す開発プロジェクト
西馬 一郎 / 株式会社日本経済新聞社
Backlog Worldには、IT企業だけが登壇したわけではありません。その1つが日本経済新聞社です。同社のデジタル事業BtoCユニットに所属する西馬一郎氏は、「レガシーな新聞社が本気でテクノロジーメディアを目指す開発プロジェクト」と題し、日本経済新聞(日経)が取り組んだデジタル化の動きについて、舞台裏から紹介しました。
日経と言えば、140年の歴史を持つ新聞です。その伝統的なメディア企業がなぜテクノロジーメディアを目指すのか、その理由の1つに西馬氏は「外部環境の変化」を挙げました。この25年のあいだに、国内外問わず、日常生活へのデジタル化、そして、インフラとしてのインターネットが整備されたこと、それにどのように対応するかが、テクノロジーメディアを目指した理由になったと言うわけです。
最初に行ったのは日経電子版サービス開発で、開発をするにあたって、開発力や開発スピードを向上することを目指し、そのために組織や開発体制を変更したと言います。具体的な開発には、コード管理やテストの自動化、また、そのコミュニケーションインフラとして、Backlog/Slack/Qiita:Teamも導入したそうです。
「開発基盤を整備した結果、日経電子版サイトの表示速度改善や誌面ビューアのサーバレスなど、さまざまな部分でテクノロジーの恩恵を受けた成果が見えてきた」と、開発担当者ならではのコメントを述べました。
また、Backlogもさまざまなシーンで利用しており、とくに印象的だったのが、電子版プロモーション案件での利用事例でした。この事例では「メンバー間の情報共有ツールとして活用されているのですが、エンジニアなどの技術職以外にも浸透し始めている」と、レガシー企業の中に、ICT化が着実に目に見える形で現れている点に驚きを覚えます。
一方で、まだすべてをBacklogで管理しきれておらず、Excelなどこれまで活用していたツールと併用するシーンがあるため、コミュニケーションが鈍ってしまうなど、今後の課題についても触れながら発表を終了しました。
アジャイル開発とプロジェクト管理ツールの相性
中村 洋 / ギルドワークス株式会社
「アジャイル開発とプロジェクト管理ツールの相性」と題したセッションを行ったのは、株式会社ギルドワークスに所属し、認定スクラムマスターの肩書を持つ中村洋氏です。同社は「正しいものを正しくつくる」をミッションに掲げ、とくに「越境」を価値として提供することを目的としている企業です。
今回は、中村氏自身がこれまでも注力してきたアジャイル開発と、そこで利用されるプロジェクト管理ツールの相性について、考察と展望についてまとめた内容が発表されました。
アジャイル開発の肝であるアジャイル宣言の背後には「顧客満足を最優先にする」「変化を味方につける」「短い時間間隔でリリースする」「フェイス・トゥ・フェイスで会話をする」「持続可能な開発」などの特徴があります。こうした特徴のもと、XP(エクストリームプログラミング)やスクラム、リーンソフトウェア開発などのアジャイル開発手法が生まれました。
中村氏のセッションでは、このように「アジャイル開発とは」について非常に丁寧に説明が行われ、これからアジャイル開発に取り組みたいエンジニアはもちろん、すでに実践しているエンジニアやチームにとっても役立つ内容になったのではないでしょうか。
そして、実際に行うためのツールや手法として、インセプションデッキ・全員同席・ドラッカー風エクササイズ・顔を合わせての対話・振り返りと改善などの、具体的なステップを紹介しました。
まとめとして、「プロジェクト管理ツールを使うことが目的ではなく、これまで説明したような成果を出すことが重要です。その中で適正なツールを選ぶこと、ときにプロジェクト管理ツールを捨てるという選択も必要です」と、ツールはあくまでツールであり、プロジェクト管理の本質は、チームメンバー一丸となって成果を出すことであるという、もっとも重要な意識を、中村氏は改めて教えてくれました。
サーバーワークスが語る BacklogでAWS導入プロジェクトが捗る3つの理由
大石 良 / 株式会社サーバーワークス
株式会社サーバーワークス代表取締役 大石良氏は、「サーバーワークスが語る BacklogでAWS導入プロジェクトが捗る3つの理由」と題し、実際に同社が活用しているAWSとその導入プロジェクトにおけるBacklog活用事例を紹介しました。
サーバーワークスでは2007年からAWSのテスト利用を開始し、2008年には社内サーバの購入を禁止しました。そして、2009年にAWS専業インテグレータに転換し、新規案件はすべてAWSを採用し、今に至ります。今回は、これまでのAWS導入プロジェクトの実績に基づいた内容で発表が進みました。
現在のクラウド市場が急激に立ち上がったのは、2011年、東日本大震災が1つのきっかけでした。同社はそのタイミングで、今後のビジネス拡大に必要になることとして「セキュリティ強化」「ISMS取得」に注目したのです。
セキュリティ強化およびISMS取得に向けて、実際の案件にもさまざまなクラウドサービスを導入した結果、プロジェクトごとのチケット管理が必要となりました。大石氏は数あるプロジェクト管理ツールの中から、それまで使っていたツールを捨ててBacklogに移行した理由として「使い勝手の良さ」「心地良いUI」「運用負荷」「価格(コスト)」を挙げました。
6年後、その利用規模はさらに拡大している中で、oneloginによるシングルサインオンで、各種サービスを横断的に利用できる点も、Backlogを選んだ理由として挙げています。
また、クラウド化により、実際の案件でもさまざまな自動化が行われるわけですが、サーバーワークスではBacklogの運用も業務改善ツール「Questetra BPM」と連携して自動化しているとのこと。このあたりは、エンジニアリング企業ならではの強みとも言えます。この点について、大石氏は「Backlogは単なるプロジェクト管理ツールではなく、業務自動化の一基盤」と表現しました。
このような自動化推進の背景には、日本の少子高齢化もあるとして、働き方改革よりも関係性改革が必要(大石氏)とし、これまでの発表内容とともにサーバーワークスが目指す世界を「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」と表現しました。
この世界を実現するための選択肢の1つとしてBacklogを選んだとのことで、Backlogが実現する成果の可視化や理由の共有などが、同社が求める会社や環境を支える「カルチャー」の構築につながるとして、セッションを締め括りました。
“プロジェクト管理”の前に考えること
永野 英二 / 601works
福岡市中央区大名にあるシェアオフィス「601works」に参加し、チーム601worksのメンバーでもある永野英二氏は、他のスピーカーとは異なった視点から「“プロジェクト管理”の前に考えること」と題した発表を行いました。
永野氏が着目したのは、そもそもとしてプロジェクト管理をする前にもたくさん考えることがあるという点です。プロジェクト管理の目的は、言わずもがな「プロジェクトの完遂」です。そのために、プロジェクトが始まってからさまざまな管理が発生しますが、その前にも必要な事項が多々あります。
永野氏自身がプロジェクトをスタートする前に実際に行うこととして、「関わる人のリサーチ」「適切なツールの選定」「ツールの使い方の策定」「情報共有レイヤの策定」「注意喚起プレイヤーの策定」などを挙げました。言語化するとあたりまえな部分もありますが、これらの基本がしっかりと押さえられているかどうかは、その後のプロジェクト遂行、そして、プロジェクト管理の成功の鍵を握ります。
永野氏はこれらの具体的な手法をさらに汎用的な表現として、「面倒と思われることを先にやる」「リアルなコミュニケーション」「合意形成の場を作る」とまとめ、この先、1つでもより良い、そして、メンバーが幸せになるプロジェクトが増えることを願って発表を終えました。
初開催となるGood Project Award~働き方の多様性と向き合うために
基調講演・個別セッションと並行して、今回、初開催となる「Good Project Award」が開催され、同日選考と授賞式が行われました。
今日本では、働き方改革の流れで、働き方の多様性が求められるようになっています。また、以前から競争力を持つために、アウトプットの質の良さ、そして計画性の高さなども、継続して求められています。そのような背景の中、プロジェクトを成功へと導くマネジメントは着々と複雑化しているのが現状です。
「Good Project Award」はこうした背景を受けて、今の日本にある素晴らしいプロジェクトを表彰することを目的に企画され、実施されたアワードです。「働き方の多様性をはじめ、複雑なさまざまな要求をまとめながら、困難な課題を解決し、良い効果を発揮したプロジェクトが増えることが日本経済を活性化させる」という想いでスタートした本アワード、想定よりも多くの応募があったとのことで、主催者の皆さんも思わずウルっとくる感動ストーリーが多数あったと言います。
「国民性なのか、プロジェクトの成功は居酒屋で身内だけで祝うというスタイルが多いですが、今回のアワードで世の中に広く自慢したり、知見共有しあったりという機会を作れたことを、たいへん誇らしく思います」と橋本氏はコメントしました。
Good Project Award選考会および授賞式の詳細は後編でお届けします。
良いプロジェクトはこれからも生まれ続ける~Backlog Worldを終えて
最後にイベントを追えて、ヌーラボ代表橋本氏、そして、広報の五十川慈氏からコメントをいただいたのでそちらをご紹介します。
社会全体の大きな流れで「働き方の多様性」が重視されるなか、これまで以上に多様な場面で「プロジェクト管理」の必要性が増しているように感じます。一方で、“どうすれば「プロジェクト管理」がうまくできるか”、といった知の共有をされる場は、これまであまり多くなかったように思います。
「プロジェクト管理」というキーワードを軸に、さまざまな立場のスピーカー・参加者が集い、知見や事例、意見の交換を図ったBacklog World。単なるツールの使い方にとどまらず、チームマネジメント、コミュニケーション、組織づくりに至るまで、多くの知が共有されました。
日本が直面する「労働生産性の向上」という課題に対して、ヌーラボは、引き続きBacklogをはじめとしたコラボレーションツールの提供や、今回行ったBacklog Worldのようなイベント・ユーザーグループ支援を通じた知見共有の促進、お手本となるようなプロジェクトを表彰するGood Project Awardなどを通し、日本全体の「プロジェクト管理」の質を上げていくことで貢献していけたらと考えています。Backlog Worldで起きたさまざまなコラボレーションから、この取り組みに良い兆しを感じることができました。