プロジェクト管理に関わるすべての方のための祭典「Backlog World」レポート

後編:Good Project Award 2017,結果発表~田舎の木材工場で起きた奇跡,株式会社diffeasyが最優秀賞に輝く

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クライアントとベンダをつなぐプロジェクトマネジメント(株式会社mgn 福嶌隆浩)

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クライアントとベンダ3社のうち,Gitのリポジトリがベンダ側1社にあり,その1社に対してクライアントから進捗や課題,ファイルのコントロールが非常にしづらい状態になっていて,現状がどうなっているかわかりにくいということが発生していました。また,Gitリポジトリのない他のベンダ2社は,都度,Gitリポジトリのある1社に作業して貰う必要があり,大変,やりづらい状況になっていました。

課題解決として,クライアント自身でGitを管理するようにし,効率化を図っていこうとしましたが,今までの経緯があり,クライアント主導で進めにくい関係性にもなっていたそうです。そこで,株式会社mgnは,Gitのリポジトリーを移動することを取りまとめ,Backlogの運用のレクチャー,Gitの研修の実施,さらに混乱しにくい環境づくりを開始しました。

クライアント自身がGitを管理でき,Backlogを活用できるようになったことで,クライアントとベンダ側での作業分担が明確化され,タスク管理で進捗状況や様々な事象の原因理由が共有化されたそうです。さらに,その結果,クライアント自身の問題解決できるスピードと能力が向上し,また,不明瞭になっていたコストも見直すことができたそうです。

受注者と発注者という立場で,どちらにも言い分があり,上手く動けていなかったプロジェクトでしたが,その関係をGitとタスク管理システムでつなぎ,本来の大きなプロジェクトに対して,1つのチームとして働くことを目標に置くことができたそうです。

建設業での設計図面の新旧比較をするツールを開発(株式会社TRIART本田康信)

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医療の現場で使われる「レントゲン写真⁠⁠。2枚のレントゲン写真を比較してガンの場所を見つけるツールがあるのですが,その技術を建築現場の図面を比較するのに使ってみるプロジェクトの紹介です。周囲の2人ほどに相談したら「画像を重ねるだけなんて,面白くないんじゃないか?」と口を揃えて言われたそうですが,⁠これは絶対イケる」と確信があり,クライアントのいない,完全に自社製品としての開発に踏み切ったそうです。

建物の製造過程は頻繁に図面が変更されます。例えば,何かの間違いで図面の意図しない部分が変わってしまっていることに気づかずにそのまま発注して,そのまま施工されてしまうようなケース。場合によっては数億円の発注ミスにつながるそうです。その対策として新入社員や事務員に図面の比較をさせているケースがあり,確認のための人件費や,ミスした施工のやり直しなど,多くのコストがかかります。

はじめは簡単に画像比較だけだと考えていたんですが,それだけでなく,青図,CADデータ,3DCADデータ,そしてFAXで送られてくる図面など,全て重ねるようにしました。また,比較する図面が2枚のときもあれば,5,000枚にもおよぶときもあるそうです。

社内で開発していくのと同時に,九州工業大学の先生に画像解析の技術協力を仰ぎ,現在は,大手建設会社を始め300社に導入されており,角度の違う建物の写真でさえも自動補正でバッチリと重ねることができるまでになったそうです。契約書なども比較するユーザなども現れ,今後は,更に歪んだ画像も解析できるようにしていきたいとのことでした。

エッジな技術を扱うプロジェクト運営の話(ピクシブ株式会社川田寛)

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インターネットでは「ライブ配信」が大流行,そこで,⁠イラストレーターのライブ配信需要にも,なんとかして答えたい!」と作り始め,4ヶ月で完了したプロジェクト。クリエイターのためにエッジな技術を躊躇なく使っていくチャレンジがいくつもあったそうですが,その結果,潜在ユーザをしっかりと掴み,お絵かき配信で,⁠おそらく)世界シェアトップのプラットフォームになったそうです。

体制は,プロジェクトの統括が1名,運用広報のチームが11名,プロダクトマネージャー1名,プロトタイプ開発チームが3名,そして,リリース向け開発チームが17名。主に,運用広報のチーム,プロトタイプ開発チームとリリース向け開発チームが要になっていました。

エッジな技術を躊躇なく使っていくプロジェクトの課題は,調達の困難性。インフラの内訳がコロコロ変わり,また,頻繁に発生する稟議の承認に時間がかかり機能しないので,稟議を辞めるまでに至ったそうです。新規性の高いことをやろうとした場合,会社のルールが邪魔することが多いので,マネージャーは絶対逃げてはダメ。絶対に会社と向き合って,会社のルールを変えていくことが大事で,プロジェクト中はずっとそれをやってきたとのことです。

また,進捗管理も上手く機能せず,⁠あとどれくらいで終わりそう?」と尋ねても「3日か,3ヶ月ぐらい」と言われる。そこで,進捗管理も辞め,100%計画されたものを作ることが重要ではなく,⁠リリースしたら一番盛り上がる時期にあわせてイケてる機能を選ぶ」というタスクの優先度を管理する運用に変えたそうです。

また,定例ミーティングが大嫌いなので,ステークホルダとのミーティングは初期段階でしっかりと議論をし,途中からはリアルタイムなコミュニケーションが重要になるので,定例ミーティングは減らしていき,チャットツールでコミュニケーションをするようにしたそうです。

新技術を扱うプロジェクトにおいては,⁠ユーザのコンテキストにあわせていくほど,汎用的な道具に頼らない攻めの姿勢が必要」と話す川田さん。また,⁠会社都合のルールで縛ったことでプロジェクトの質を 下げてしまうのを防ぐ努力は重要」⁠進捗管理ではなく,優先度管理」⁠100%を狙うのでなく,どうすれば最高に近づくか」⁠ステークホルダコミュニケーションは定例報告をやめて,リアルタイム性を上げる」といったことが大事になるとのことでした。

著者プロフィール

橋本正徳(はしもとまさのり)

1976年福岡県生まれ。福岡県立早良高等学校を卒業後上京し,飲食業に携わる。劇団主催や,クラブミュージックのライブ演奏なども経験。1998年,福岡に戻り,父親の家業である建築業に携わる。2001年,プログラマーに転身。2004年,福岡にて株式会社ヌーラボを設立し,代表取締役に就任。現在,福岡,東京,京都,シンガポール,ニューヨーク,アムステルダムに拠点を持ち,世界展開に向けてコツコツ積み上げ中。

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