Backlog World 2021で見えたこれからのプロジェクト管理とツールの未来

02:最も素晴らしいプロジェクトを表彰する「Good Project Award 2021」レポート

2021年3月13日、Backlogのユーザコミュニティ「JBUG」が開催した「Backlog World 2021」内で「Good Project Award 2021」のピッチコンテストが開催されました。開催史上、最も応募数が多かったアワードのピッチコンテスト当日の様子をレポートします。

Good Project Award 2021とは

Good Project Awardは、⁠困難に挑戦したプロジェクトのストーリーを共有することで、日本全体のプロジェクト管理・チームコラボレーションを一歩前進させたい」という目的で、株式会社ヌーラボ(以下、ヌーラボ)が2018年から開催してきたアワードです。

例年、アワードはプロジェクトの規模や目的、解決したかった課題、具体的な活動や成果などを尋ねるテキストによる1次審査と、1次審査を通過した「優秀賞」受賞プロジェクトによるピッチコンテストの2段階で行われています。なお、発表するプロジェクトについて、ヌーラボが提供しているサービスを利用しているかどうかは不問です。

新型コロナウィルス感染症の流行により、2020年は例年以上に多くのプロジェクトが予想外の困難に直面しました。⁠世界中が大変な状況に置かれた2020年こそ、困難を乗り越えプロジェクトを完遂したストーリーが溢れている」⁠その中には、プロジェクトを進めていくうえで活かせるヒントがたくさん隠されているに違いない」ヌーラボはそう考え、Good Project Award 2021を開催しました。プロジェクトへのエントリー(応募)は前回の6倍にものぼり、その規模や内容もさまざまでした。ヌーラボ社内の選考会は長時間に渡りましたが、最終的に優秀賞に選定された7つのプロジェクトが、ピッチコンテストに出場することになりました。

初のオンライン開催となったピッチコンテスト当日

Good Project Awardは、新型コロナウィルス感染症の影響により、昨年度の開催を見送っています。そのため今回が初のオンライン開催となりました。

当日の審査員には、株式会社CAMPFIRE 代表取締役 家入一真 氏、株式会社圓窓 代表取締役 澤円 氏、株式会社ベアーズ 取締役副社長 髙橋ゆき 氏をお迎えし、ヌーラボ代表取締役の橋本正徳も加わる形で4名が就任。お一人ずつコメントを頂き、Good Project Award 2021ピッチコンテストが始まりました。

Good Project Award 2021審査員の面々
Good Project Award 2021審査員の面々

優秀賞として選定されたのは、下記7プロジェクトです。企業だけでなく、市役所や大学など多様なプロジェクトが1次審査を通過したのは今年が初めてでした。Good Project Awardの注目度が高まっていることを実感しました。

  • 株式会社スターフライヤー:Starlight Flight produced by MEGASTAR
  • SOMPOホールディングス株式会社:「スマホカメラを使ったレジャー・娯楽サービス産業の従業員向け健康チェック⁠⁠ に関する実証実験
  • 大成建設株式会社:建設プロジェクトデータ管理フレームワークX-grabの構築
  • FUNBEST(ファンベスト⁠⁠:進路漫才プロジェクト~お笑い芸人が中高生に伝えたい⁠激動の時代を生きるキャリア選択”
  • 別府市役所:別府市のシステム開発および運用保守業務など全12プロジェクト
  • LINE Fukuoka株式会社:SmartCity戦略室LINE Smart City x 西鉄 混雑情報発信プロジェクト
  • 龍谷大学:政策学部 今里ゼミナール UKAWAカレーPJ

ピッチは、各プロジェクト7分間ずつ、団体名の50音順で行われました。

最優秀賞は株式会社スターフライヤー:Starlight Flight produced by MEGASTAR

最優秀賞は株式会社スターフライヤー:Starlight Flight produced by MEGASTAR
最優秀賞は株式会社スターフライヤー:Starlight Flight produced by MEGASTAR

「感動のあるエアライン」であり続けることを理念に飛行機の運行をしているスターフライヤー。世界で初めて機内で光学式プラネタリウムを投影した「Starlight Flight produced by MEGASTAR」プロジェクトは、フライト当日の星空とまったく同じ、約600万個の星を機内に投影しました。

プラネタリウム・クリエイターで太平技研代表取締役の大平貴之さんが開発した、1台で100万個の星を投影することができる超小型プラネタリウム「MEGASTAR」6台がエアバスA320型機に搭載されました。

過去に前例のない挑戦で、機内の照明をすべて落とした上で乗客の安全性を担保することが必須のなか、国土交通省交通局や航空機メーカのAirbus社など関係各所へ丁寧な説明を繰り返し、感染症対策も入念に実施。航空業界はコロナ禍で打撃を受けたが、⁠お客様になんとか夢と感動をお届けしたい」と社員一丸となり実現までこぎつけました。

約35組限定の搭乗に対し、約600組の応募があり、15倍程の倍率となったうえ、ロシア、ドイツ、イギリス、アメリカなどでも取り組みが紹介され、日本国内のみならず世界各国で話題となりました。

注目に値するプロジェクトが選ばれた優秀賞

以下、その他の優秀賞について紹介します。

SOMPOホールディングス株式会社:「スマホカメラを使ったレジャー・娯楽サービス産業の従業員向け健康チェック」に関する実証実験

イスラエルのスタートアップ企業であるbinah.ai社の技術を活用し、スマホカメラで顔を撮影するだけで心拍数や呼吸数を解析・記録することができる実証実験アプリ「ヘルスチェッカー」を開発したプロジェクト。専用機器不要、簡単に記録が残せる、共有しやすいバイタルチェックが可能になりました。

開発したアプリを医療機器認定デバイスとともにサンリオピューロランドにて実証実験をしました。また、レジャー・娯楽サービス産業の従業員のニューノーマルな生活様式に資する体験を提供できるかも検証されています。

大成建設株式会社:建設プロジェクトデータ管理フレームワークX-grabの構築

約7万人の社内外関係者と利用してきた各建設プロジェクトの情報共有システムをリプレースするプロジェクトです。

UIとサービス、そしてデータ管理と認証認可を全て分離し疎結合で構築することになりました。2019年に企画がスタートし、コロナ禍による緊急事態宣言後に参画したメンバーとは、CacooとZoomを組み合わせ活用することで、一度も会うことなくリモートで大規模なプロジェクトを滞りなく進行されました。

FUNBEST(ファンベスト):進路漫才プロジェクト~お笑い芸人が中高生に伝えたい”激動の時代を生きるキャリア選択”

「進路漫才プロジェクト」は、⁠お笑い芸人の新たな活躍の場を創る」⁠子どもたちに質の高いキャリア教育を与える」という2つの目的で2020年からスタートしたプロジェクトです。お笑い芸人が漫才やトークで進路に関する授業を楽しく展開することで、学生は最後まで集中して話を聞くことができている・お笑い芸人は自身のキャリアを生かした貢献ができているそうです。2021年3月までに43校で実施(見込み含む⁠⁠。

別府市役所:別府市のシステム開発および運用保守業務など全12プロジェクト

日本一の「温泉のまち」として有名な別府市は、⁠湯~園地」など尖ったプロジェクトを行うだけでなく、日本の市町村で一番早くデジタルファースト宣言を行ったまちでもあります。少子高齢化による生産年齢人口の減少に伴い、従来よりも業務の効率化、デジタル化が求められるなか、契約先とのコミュニケーションをBacklogに統一することで、職員減少に伴う忙しさを改善することに成功されています。

LINE Fukuoka株式会社:SmartCity戦略室 LINE Smart City x 西鉄 混雑情報発信プロジェクト

福岡における交通インフラである西鉄とともに行った、バスや電車の混雑状況をLINEで確認できるようにした取り組みです。コロナ禍において、密の回避や時差出勤がテーマとなるなか、感染拡大予防策の実践を促すために実施。すべてのコミュニケーションをすべてオンラインで行い、提案からリリースまでわずか8日間で実現しました。リリース後、10万回以上機能が利用されています。

龍谷大学:政策学部 今里ゼミナール UKAWAカレーPJ

人口減少、少子高齢化が著しく、インフラの撤退や雇用問題、獣害などの課題がある地域・京丹後市丹後町宇川地区の地域活性を目的とし、缶詰のジビエカレーを生産・販売したプロジェクト。地域住民と関わりながら、自然豊かな宇川をPRしつつ害獣に付加価値を見出し、資金集め・販売も実現しました。販売数はすでに200缶を超えています。

審査員による講評

すべての発表が終わった後、会場が休憩に入るとともに、最優秀賞を決める審査員協議が行われました。審査員の4名の意見はそれぞれで、審査は難航しました。

最優秀賞の発表の際、審査員の方々のコメントを書き起こしにてご紹介します(掲載は審査員のお名前の五十音順⁠⁠。

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株式会社CAMPFIRE 代表取締役
家入 一真氏

本当にどのプロジェクトも素晴らしく、悩みましたが、一番ロマンがあるということで最終的にスターフライヤーさんに一票投じさせていただきました。今回のプレゼンを通して学ばせていただいたのは、大企業や行政であっても、いろんなプロジェクトが立ち上がりやすくなっているんだなと。もちろん、スターフライヤーさん以外のプロジェクトも素晴らしかったです。企業の枠を超え、今後もガンガン良いプロジェクトをやっていただけたらいいなと思いました。本当にお疲れさまでした。

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株式会社圓窓 代表取締役
澤 円氏

今日はありがとうございました。7分間という時間、ものすごく緊張されたと思います。本当にお疲れさまでした。そして、おそらくピッチを作る段階で、これまでやってきたことが走馬灯のように思い出された方も多かったと思います。嫌なこと言われたり面倒なことがあったり……、そんな大変なことがどのプロジェクトもあったことでしょう。審査員もそれをみんな経験しているので思い入れがあって、1つを選ぶのがすごく大変なんですが、橋本さんに恫喝されて選ぶしかなかったんです(笑⁠⁠。

皆さん本当に素晴らしかったし、やってきたことは裏切らないので、プロジェクトからの学びを今後も生かし、さらに、その経験をもとに周りを勇気づけてくださるといいなと思いました。ありがとうございました!

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株式会社ベアーズ 取締役副社長
髙橋 ゆき氏

皆さん、お疲れさまでした。どのプロジェクトにも愛を感じ、審査員室で本当に甲乙つけがたく拮抗しました。最後はスターフライヤーさんに決まり、本当におめでとうございます。今後も、⁠感動の横展開」ということで、乗せていただく私も含め、周りの人の期待を超える感動フライトを。それができるのがスターフライヤーさんだと信じています。

全体的に思ったことは、どのプロジェクトも携わる人が信念を持っている・誰かを幸せにしたいというプロジェクトばかりだったようにお見受けします。特にこれからの時代、どういう心根、どういう思いでサービス・商品を開発していくかが消費者・利用者にとって大事になってくると思います。ぜひ幸せを作ることをテーマに「幸動」をしていきましょう!

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株式会社ヌーラボ 代表取締役
橋本 正徳氏

審査員たち、本当に悩みました。最終的にはスターフライヤーさんに決まったのですが、総意としてこの「感動を届けるフライト」を横展開いただければいいな、いろんな感動をお客様に与えてくれたらいいな、という話を審査員たちでしていました。

また最優秀賞の他にも、LINE Fukuokaさんは社会課題を解決されていて良いな、福岡市だけでなく他の市区町村にも同じ仕組みを広げていけるため素晴らしいな、というような話も出ました。どのプロジェクトも本当に良かったのですが、ここではスターフライヤーさんにみんなで決めさせていただきました。みなさん、お疲れさまでした。

日本のプロジェクト管理を前進させるアワード

Good Project Awardは、困難に挑戦したプロジェクトのストーリー、アクション、そこから得られた知見を共有することで、日本全体のプロジェクト管理・チームコラボレーションを一歩前進させることを目的としてヌーラボが主催しており、今回で3回目の開催でした。

オンライン開催のGood Project Awardは今回が初めてでしたが、ピッチコンテストの内容から得られる学びをツイートする方々の声をリアルタイムで知ることができ、リアルなプロジェクトの成功・失敗した取り組みから学ぶことがいかに多いのか主催者として実感しました。

また、Good Project Award 2021のエントリーが過去最高であったことから、プロジェクト管理自体やそのノウハウの共有に対する興味、関心が高まってきていることも分かりました。ヌーラボはGood Project Awardの開催を通し、日本のプロジェクト管理を前進させ働くを楽しくするため、今後も尽力していきます。

Good Project Award 2021 アーカイブ動画

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