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セッション2:パブリッククラウドを活用したメール配信成功事例
汾陽祥太氏(株式会社HDEソリューション推進部部長)
メールソリューションの開発を続けるHDE
「株式会社HDEはこれまで数多くのメールソリューションを開発・提供してきました。現在,約6,000社への導入実績を持ちます。私たちHDEはメールの会社です」,こう自社の説明を述べるのは株式会社HDEソリューション推進部部長 汾陽祥太氏です。
「今回のテーマはメールなのですが,メールと一口に言っても非常に多岐にわたります。今回は,メールの中でもアウトバウンドメールにフォーカスを当て,現状のクラウドサービスとの関わり,今後についてお話しします」と,セッションのテーマであるパブリッククラウドとメールソリューションの関係について話が進みました。
パブリッククラウドと相性の良い企業メール
アウトバンドメールについて,汾陽氏は大きく2種類あると言います。1つはDMやメルマガなどの一斉同報メール,もう1つは企業や組織が配信するThanksメールやアラートメール,などのシステムメールです。そして,これらのメールを配信するには
- パッケージソフトウェア
- ASPサービス
- SI(開発)
- パブリッククラウド
の4つの手法があり「中でもパブリッククラウドを使うことに多くのメリットがある」とし,その理由について説明を始めました。
メール配信とシステムリソースの関係
瞬間的なトラフィックが生じるアウトバウンドメール
実際にアウトバウンドメールを配信するには,配信頻度や配信先のデータ,配信したいメールの数といった条件が必要になりますが,汾陽氏がこれまで配信したメールに基づくデータを調べてみたところ,多くのケースで平常時と配信時(ピーク時)の差が大きい一方で,時間軸で見るとほとんどの時間帯が平常時になっているとのこと。たとえば,毎日夕方1回だけに送るメルマガだったり,不定期に開催されるメールの告知やThanksメールなどのようなものです。
これはつまり,アウトバウンドメールの特性が,瞬間的なトラフィックに対応しやすいパブリッククラウドの特性に非常にマッチしており,ASPなどを使うよりコストパフォーマンスが格段に向上すると仮定できます。
さらに,汾陽氏の調査によれば,
- 約29万円/月(都内データセンターを利用する場合)
- 約21~26万円/月(大手ASPを利用する場合)
- 約12万円/月(ニフティクラウドを使う場合)
というような予測値(※5年間でならした場合)が算出されており,この数字からもメール配信システムにパブリッククラウドを適用するメリットが見て取れます。
ASPとパブリッククラウドの違い
また,ASPの提供を行っているHDEの立場から見た,パブリッククラウドと比較した場合のASPのデメリットも指摘されました。それは「ASPサービスでは,機器のリプレース費用が月額料金に含まれている」「ASPサービスでは,通数やレコードによる課金のため,サービスが拡大すると費用がかかる仕組みである」という点です。こうした分析をもとに,同社が提案するのが,次のようなクラウドメール配信システムです。
HDEが提案するクラウドメール配信
理想的なパブリッククラウド型メール配信システムは「クラウド上にメール生成エンジンとMTAサーバを構築し,配信規模の拡大・縮小によってスケーリングを行っていくもの」だそうです。ただし「この構成の場合,現在のインターネット環境では問題が生じる」と課題点についても述べられました。
「システムが構築できたからといって,やみくもに大量のメールを配信するとメールの未達や遅延が発生したり,大量のエラーメールを受信してしまいます。加えて,現存する多くのパブリッククラウドの場合,サーバに付与できる固定IPアドレスは1つです。この点については,とくに携帯キャリアに対して問題を抱えてしまうことになります。なぜなら,携帯キャリアの場合,ユーザ数が莫大に多いことに対して,ドメインが少なくなるため,1ドメインあたりのユーザ数が大きくなります。その結果,スパムメール業者に狙われやすくなるのです」と,パブリッククラウドから生じてしまう技術的な状況課題を指摘しました。
しかし「これは今の技術動向で考えられる問題ではありますが,解決策もあります」と,今の状況に対応した解決策が提示されました。それは「メール生成エンジンのみパブリッククラウド上に構築し,MTAサーバやエラー処理についてはHDEのメールリレーサービスを利用する」という技術を複合したシステムです。
最後に汾陽氏は「クラウドが普及することにより,さまざまなメリットが考えられますが,デメリットもあります。HDEでは最後に提案したHDE型パブリッククラウドメール配信システムのように,技術的バックグラウンドともにメリット・デメリットを把握した,その時々に最適なソリューションを提供していきます。将来的には,もっと他のサービスと組み合わせることでメリットが増えていくと考えています」と,セッションを締め括りました。