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キーノート:基幹システムのTCOを最適化する高密度エンタープライズ・クラウド・プラットフォーム実現の勘所
首藤聡一郎氏(日本オラクル株式会社クラウド&EA統括本部クラウド・エバンジェリスト)
クラウドが活かせるところはどこか?
オープニングキーノートを務めたのは,日本オラクル株式会社クラウド&EA統括本部クラウド・エバンジェリストの首藤聡一郎氏。「Oracleのものだけを使ってもらいたいのではない」という前提を述べた上で,今のクラウドブーム,そして,クラウドを活用するためにどうすべきか,話が進みました。
冒頭で,多くの企業の年間IT予算のうち,約7~8割をメンテナンスコストに当てている現実を指摘しながら,クラウド利用の目的の1つが「コスト圧縮」になっている点を説明しました。
こうした状況の中,クラウドコンピューティングを適用する領域は,大きく
- コア業務(業務の独自性の高いもの。ミッションクリティカル領域)
- ノン・コア業務(業務の独自性が低いもの。サイト構築や検証/開発環境)
の2種類に分かれ,コア業務にはプライベートクラウドを,ノン・コア業務にはパブリッククラウドを利用することが適していると述べました。
そして,パブリック/プライベートクラウド,さらにその2つを利用するハイブリッドクラウドの3種類の進化とともに,企業システムは以下のように進化していると説明しました。
図 クラウドコンピューティングを活用した企業システムの進化

このように,3つのクラウドの種類と企業進化に合わせた,クラウドコンピューティングの適用領域が存在しており,「システム領域の特性に合わせて最適な技術/サービスを採用しながらクラウド化していくことが最良の策である」と,首藤氏は述べました。
高密度化,自動化,シンプル化―Oracleが考える3つのキーワード
とくにミッションクリティカル領域においてクラウド・コンピューティングを活用するために,Oracleが注目している3つのキーワードとして挙げられたのが,
です。「この3つのキーワードが,高いサービス品質とコストの平準化を両立するための勘所になる」と首藤氏は言います。サーバ集約密度を向上させることは,複数システムの稼働に必要なサーバ・リソースの最小化に繋がり,結果としてサーバ資産(維持費),消費電力,サーバ設置スペースなどのランニングコストを抑制することに貢献できます。ただし,集約密度を向上させために,処理性能を犠牲にするわけにはいきません。そのためにはシステム基盤の性能ボトルネックを極小化する必要があります。
たとえば,データベース・サーバにおいては、キャッシュ・メモリの拡張領域としてフラッシュディスク(SSD)を採用することで,性能ボトルネックを解消しています。
「現在の企業システムにおいて,すべてのストレージ領域をSSDに置き換えることはシステムの高速化を実現できる一方で,コストが大幅に増加 してしまいます。そのため,データベースのキャッシュ・メモリの拡張領域としてSSDを利用する方法が最も費用対効果の高い活用方法ですが,そのためには多くのコーディング作業が必要でした。Oracleの場合,データベースのキャッシュ・メモリの拡張領域としてSSDを利用する 仕組みをソフトウェアの機能として用意しているため,容易にSSDを活用して性能ボトルネックを解消することを可能としています。
Oracleでは,こうした取り組みを通して費用対効果の高い高密度クラウドプラットフォームの実現に取り組んでいます」(首藤氏)。
Oracleが提供しているデータベース専用機「Oracle Exadata」では,今紹介したSSDをはじめ多くの革新的な技術を取り入れることで極めて高い処理性能を実現し,高密度クラウド・プラットフォームを 具体化しています。
クラウドコンピューティングに向けたJava実行環境の最適化
続いて,ミドルウェア層の話題に移りました。ミドルウェア層の高密度化を実現するためには,とくにJavaの実行環境を最適化する必要があるとし,Oracleはその解決策として,JavaのGC(ガベージコレクションコレクション)の影響を最小化したり,サーバ間通信のボトルネックを解消するためにInfiniBandを採用したりすることで,高い処理性能をコンスタントに実現できるようにしているそうです。
これらの技術を取り入れているのが,2010年のOracle OpenWorldで発表された「Oracle Exalogic Elastic Cloud」になります。
ITのその先へ
首藤氏はまとめとして「クラウド・コンピューティングを取り上げる際,内容がITの話題に終始しがちですが,本当に大事なのはITを使った変化察知,意思決定プロセスなどの企業活動の最適化です。Oracleでは,クラウドコンピューティングを利用して経営の変化対応力を強化するために,これまでお話ししたようなプラットフォーム・ソリューションに加えて,業務アプリケーションの近代化にも取り組むことで,アプリケーションの高い移植性と柔軟性を実現していきます」とコメントし,技術としてのクラウドではない,ビジネス領域に適用した,真のクラウドコンピューティングが目指す姿を掲げ,講演を締めくくりました。