スマートフォンの普及などにより、ますます注目を集めるジオロケーション(地理位置情報)サービス。多くの位置情報アプリケーションで、地図やサーチなどの位置情報プラットフォームが使われるようになりました。
本イベントは、位置情報プラットフォームのキーマンたちに、最新の位置情報開発のトレンドを語ってもらいながら、ジオロケーションの未来を考えることを目的に開催されました。
ジオロケーションサービスの現状とこれから
ヤフー株式会社BS事業統括本部地域サービス本部 村田 岳彦 氏
オープニングセッションを務めたのは、ヤフー株式会社の村田氏。「 ジオロケーションサービスの現状とこれから」というタイトルのもと、ジオロケーションサービスおよび各種プラットフォームの歴史、ヤフーの現状と展望について説明がなされました。
5の付く年がターニングポイント
村田氏は、ジオロケーションの歴史は1995年、2005年と5の付く年に大きなターニングポイントを迎えているとし、「 今後、2015年に新たなターニングポイントを迎えるべく、今、まさに動きが見え始めてきています」とコメントしました。
ちなみに、1995年にはWindows 95の登場、NTTテレホーダイの開始、Yahoo!の設立などからインターネット時代が幕開けし、国内でも「インターネット」という単語が流行語大賞にノミネートされるなど、1つの現象として注目を集めました。一方、2005年と言えば、今のジオロケーションプラットフォームの主役の1つ、Google MapsおよびGoogle Maps APIの提供開始、Google Earthの誕生となった年でもあります。この点について「とくにAPIで提供することにより、( ジオロケーションを利用したソフトウェアやサービスの)考え方や作り方が大きく変化したことを感じました」( 村田氏)と、それまでの状況から大きくシフトしたことを体感したことを述べました。この年には「ケータイ国盗り合戦」や「コロニーな生活☆PLUS」などの携帯電話を利用したエンタテインメントサービス、そして、地域情報として多くのユーザを抱えている「食べログ」などがスタートした年でもありました。
2015、What's next?
こうした説明の後、「 では2015年に向けて何がくるのでしょう?」と会場へ問いかけながら、その答えのヒントとしてO'Reilly主催のイベント「Where 2.0 2011 」から8つのキーワードを紹介しました。
Where 2.0 2011からピックアップした8つのキーワード。HTML5などの技術的なものに加えて「Government & Humanitarian」といった、より人間の生活・社会に近づいてくるものも含まれていた
4番目の「ユーザ対機能」という考え方や5番目の「広告モデル対サブスクリションモデル」といった、普及・ビジネスに関する対立軸の他、HTML5(1番目)やインターフェース(6番目)など、基礎技術に関するもの、そして、パブリック対プライベートというユーザにおける心理的な障壁などを紹介しながら、「 これらのキーワードを取り込みながら次の時代を迎えるのでは」という見解を示しました。
また、8番目の「政治と人道主義」については、天災などの悲劇やトラブルに対して、ジオロケーションの技術が何かしらの形で貢献していける可能性を秘めている点についてコメントしました。
OSMへのYahoo! JAPAN地図資産の提供開始!
こうした未来を述べた後、直近のヤフーの展開について2つ発表がありました。
1つは、このあと登場するOpenStreetMap に対し、ヤフーが持っている地図資産を無償ライセンスにて提供することが発表されました。
もう1つは、1月に発表されたYahoo!ロコ のリリースがいよいよ4月に近づいているというものです。
以上、村田氏は歴史や現在から未来展望、さらに新発表と、非常に盛りだくさんの内容でジオロケーションについて語り、オープニングセッションを締めくくりました。
最後に3つ目の発表として、本日、自身の結婚式で参加できなかったヤフー株式会社佐藤氏(YOLPのプロダクトマネージャー)の結婚の報告がありました
ヤフー発、オープンローカルプラットフォームの設計思想
ヤフー株式会社 R&D統括本部 プラットフォーム開発本部 開発部長 服部 典弘 氏
続いて、ヤフー株式会社にてYahoo! Open Local Platform(YOLP)を中心としたプラットフォーム開発を担当する服部氏から「ヤフー発、オープンローカルプラットフォームの設計思想」と題したセッションが行われました。
YOLP=地図+検索+ストレージ
まず、YOLPについて「YOLPとは、( ヤフーが持つ)地図と検索とストレージを組み合わせたものです」と服部氏は定義付けしました。
YOLP=地図+検索+ストレージ
現在、地図APIにはさまざまなデザインが用意されており、全部で22種類あります。これらおよびPOI(Point Of Interest)パートナー28社が持つ1,100万レコードからの検索、そして、YOLPギャラリー への蓄積を含めた形でYOLPが形成されています。そして、YOLP Data Format(YDF)によりデータを扱うことが可能になっています。「 ヤフーで提供するすべてのAPIがYDFに対応しているため、各種サービスを横断的に、横串で検索できるのがYOLPの特徴でもあり強みです」と、服部氏はYOLPについて説明しました。
その他、店舗名寄せAPI や、オンデマンドラスタライズ地図など、ヤフーならではの技術についても紹介されました。
YOLP Roadmap sneak peek――Check-in API、略地図API、AR SDK
最後に、これからのYOLPについて展望とロードマップが語られました。
今回紹介されたのは、
Check-in API
略地図API
AR SDK
の3種類。
Check-in APIはその名のとおり、最近ユーザが増えつつあるチェックイン系サービスを手軽に作れるというもの。ヤフーが持つ他のAPIとの組み合わせにより大きな可能性を持っています。
次の略地図API。これは、たとえば案内板に使われているダイアグラムなどのように、スタート地点から目的地までの地図を、規模感に応じてシンプルにカスタマイズできる機能を持っています。
最後のAR SDK。これはAR(拡張現実)を利用するための開発キットなっており、地図上にAR機能を実装できるもので、各種サービスやサイネージのような広告を含めた展開に期待が持てます。
AR SDK。Yahoo!地図上にARを取り入れることで多様な表現を実現できる
最後に服部氏は「ヤフーのビジョンはライフエンジン、YOLPがターゲットにしているのは日常の世界、地域生活圏です。ここはまだインターネットの進出が遅れている分野でもあります。YOLPはまず、そこで使ってもらえるものを目指しています。
そして、これはヤフー一社ががんばっても広がらないと認識しています。ここにいるデベロッパーの皆さんをはじめ、全員で盛り上げていきましょう」と、オープンなスタンスを表明し、セッションを締めくくりました。
イベント開催中は、会場の聴講者およびUstreamの視聴者から「#geoconf」をつけたつぶやきが多数投稿されました。その内容が、Togetterにまとめ られているので、そちらも併せてご覧ください。