ニコニコ動画のバージョンアップについても発表!日本の動画サービスの今がわかる―「CNET Japan Innovation Conference 2008~いよいよ本格化する動画ビジネス最前線~」開催

2008年11月11日、泉ガーデンギャラリー(六本木/東京)にて、⁠CNET Japan Innovation Conference 2008~いよいよ本格化する動画ビジネス最前線~」が開催された。同イベントは、現在、急速にユーザを獲得し、市場としても拡大し続けている動画サービスについて、マーケティング面と技術面の両方から解説するビジネスセミナー。

ここでは、午後の部を中心に、その模様をお届けする。

MSNで展開するオンラインマルチメディア戦略

午後の最初のセッションは、マイクロソフト株式会社の「オンラインサービスにおけるマルチメディア戦略⁠⁠。スピーカは同社コンシューマ&オンラインマーケティング統轄本部オンラインマーケティング本部 業務執行役員の浅川秀治氏が担当した。

マイクロソフト株式会社 コンシューマ&オンラインマーケティング統轄本部オンラインマーケティング本部 業務執行役員 浅川秀治氏
マイクロソフト株式会社 コンシューマ&オンラインマーケティング統轄本部オンラインマーケティング本部 業務執行役員 浅川秀治氏

外部企業と連携した展開

現在、マイクロソフトでは、MSNビデオチャンネルMicrosoft Live Searchによる画像/動画検索といった「エンタテインメント分野⁠⁠、ニコニコメッセニコニコアラートといった「コミュニケーション分野⁠⁠、MSN相談箱での「知識共有分野」の3つの分野において、マルチメディア展開を行っている。

鍵を握る「動画コンテンツ」

どのサービスにおいても、浅川氏は「鍵を握るのが動画コンテンツである」と述べ、また、ドワンゴやOKWaveなど外部サービスとの連携による機能の拡充について説明した。

最後には、これから予定されているMSN相談箱におけるマルティメディア化について、現在開発されているプロトタイプとして、Q&Aの投稿における静止画や動画、音声といったリッチコンテンツへの対応について、デモとともに紹介された。

Microsoft Excelの使用方法に関する質問に対し、操作手順を撮影した動画を含めた回答がアップされた様子。このように、視覚的・直感的に情報を伝えることができる。
ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm5224566

“シェア・話す”“調べる”ためのマルチメディア

最後に、浅川氏は「テキスト以外の画像や動画を使うことで、より多くの情報ができます。今後、動画やマルチメディアは、⁠見る・楽しむ⁠から⁠シェア・話す⁠⁠、⁠調べる⁠といった用途に展開されていくはずです」とまとめた。

日本初のYouTubeへの有償広告も実施、東芝が取り組む動画プロモーション

続いて、企業による動画プロモーション事例として、株式会社東芝の広告部国内広告担当部長代理/WEB戦略広告チーム 荒井孝文氏により、⁠東芝の動画プロモーション戦略」と題したセッションが行われた。

東芝では、自社製品のプロモーション手段として、Web、とくに動画を早くから積極的に活用しており、さまざまな展開を行っている。今回は、過去の事例と現在進んでいる企画について紹介された。

株式会社東芝の広告部国内広告担当部長代理/WEB戦略広告チーム 荒井孝文氏
株式会社東芝の広告部国内広告担当部長代理/WEB戦略広告チーム 荒井孝文氏

YouTubeの積極的な活用

最初に東芝がYouTubeを活用したのが2006年12月。このとき発売された、パソコン「Qosmio⁠⁠、携帯電話「910T⁠⁠、液晶テレビ「REGZA」のキャンペーンの一環として、マルコ・テンペスト氏が、YouTubeの他、iTunes、MyVideo、LIVEVIDEOに映像をアップした。このときの映像が、YouTubeの全世界でのエンターテインメント分野で2位、その後展開が始まったYouTube日本語版エンターテインメント分野では、1~3位を独占するなど、非常に大きな効果が見られたと説明した。

さらに、同社は、日本初となるYouTubeへの有償広告出稿を展開し、新しい広告プロモーションへ取り組んだ。このときの経緯について「YouTubeの視聴ユーザはTVの視聴ユーザと異なり、また、TV CMとは違った効果が狙えると考えました。とくに新たなファンの獲得やエンゲージメントの強化、また、YouTubeという注目されているサービスへの最初の広告事例ということで、⁠東芝⁠という企業の先進性をアピールすることを目指しました」と、荒井氏はコメントした。

このときの具体的な仕組みとして、toshiba note pcチャンネルという、PC向けの基幹サイトを準備し、YouTubeやネット広告など多面的な展開を実現した。

toshiba note pcチャンネルのキャラクター「ぱらちゃん⁠⁠。ぱらちゃんを中心としたさまざまな映像を準備し、ネット上でのクチコミ、幅広いユーザ獲得を実現している
toshiba note pcチャンネルのキャラクター「ぱらちゃん」。ぱらちゃんを中心としたさまざまな映像を準備し、ネット上でのクチコミ、幅広いユーザ獲得を実現している
動画広告出稿による効果:動画視聴者の態度変容
動画広告出稿による効果:動画視聴者の態度変容

また、荒井氏は「最近の事例としてニコニコ動画を活用したEMIコラボレーション企画である『太郎×東芝コラボ』配信のように、ニコニコ動画でブレイクした楽曲を活用し、さらにそれをYouTubeへ展開するといったような横断的な取り組みを実施しています」と、各種数値データや外部評価と合わせて紹介した。

さらに、自社ビデオカメラを訴求するために、YouTubeのコンテスト機能を活用した企画が実施され、商品接触の機会拡大およびブランドイメージの定着が実現できたことについても紹介された。

ヤッターマン×トウシバ

最後に、現在も展開が進んでいるプロモーションとして、テレビ番組『ヤッターマン』とのコラボレーション企画ヤッターマン×トウシバ」が紹介された。

これは、

  • 新しい東芝ファン層の獲得
  • 長期的かつ多面的な誘導展開
  • 東芝商品への興味関心の喚起
  • 東芝ブランドへの親近感の醸成

を目的に取り組まれたもので、エンターテインメントを中心に置いた企画となっているのが特徴である。

本格的な展開は2009年1月29日から開始、2009年3月までの展開が予定されている。

『ヤッターマン』でおなじみ「今週のビックリドッキリメカ」に、東芝製品を組み合わせる形で、アニメのカラーを損なわずに商品プロモーションを実現している
『ヤッターマン』でおなじみ「今週のビックリドッキリメカ」に、東芝製品を組み合わせる形で、アニメのカラーを損なわずに商品プロモーションを実現している

荒井氏は最後に「YouTubeなどのWeb動画配信を利用することで、東芝としての企業カラーを損なわず、新しいファン層の獲得や見込み客への訴求・接触機会を実現できました。これからもさまざまな取り組みを進めたいです」と、メーカ企業として先進的なプロモーションを続けていく意向をコメントし、まとめた。

動画コンテンツの効果測定への取り組み

休憩の後、続いてのセッションでは、株式会社ビデオリサーチインタラクティブ代表取締役 萩野欣之氏による「同画サイトの接触状況と動画コンテンツ・広告効果測定の考え方」と題した、動画ビジネスに関するリサーチ結果が発表された。

株式会社ビデオリサーチインタラクティブ代表取締役 萩野欣之氏
株式会社ビデオリサーチインタラクティブ代表取締役 萩野欣之氏

動画コンテンツの現状

まず前提知識として、動画サイトには「動画配信サイト」⁠動画共有サイト」の2種類があり、2007年1~12月の1年間に推定2,815万人のユーザが動画サイトを利用したと説明した。この数字は2008年に入り、さらに増えている傾向とのこと。

動画広告および動画広告効果測定

このようなユーザデータに続いて、動画広告の現状、そして、その効果測定に関して説明が行われた。

まず、同社の調査結果によれば次の写真のように、多種多様な業界で動画広告が利用されていることがわかったとのこと。この点について「IT業界に限らず、現在はさまざまな業種の企業がインターネット動画広告の効果・価値について評価してきています」とコメントした。

ビデオリサーチインタラクティブの調査による、おもな動画広告出稿企業
ビデオリサーチインタラクティブの調査による、おもな動画広告出稿企業

こうした流れの中、いままでの動画広告の効果は「ブランド確立」「リーチ数」という部分に注目されがちだったが、これからはメッセージの到達(リーチ数)に加えて、メッセージの増幅までを意識していくことが重要と述べた。また、そのためのメディア価値とは、リーチ数に固有価値(メディア・広告効果測定)を掛け合わせた数値であり、真の意味でのメディア価値を挙げるためには、きちんとした効果測定が必要であることを説明した。

そのために、基盤となる動画コンテンツ測定基準の統一や動画CMの効果測定の考え方を明確にすることが重要と述べ、現在、同社を始めとした数社で、インターネット広告に関する効果測定への取り組みが進んでいると述べた。

ビデオリサーチインタラクティブでの広告効果計測。図のように、行動レベル、到達レベル、認知レベルの3つの測定を行い、それぞれの数値を元に広告としての効果を計測する考え方である
ビデオリサーチインタラクティブでの広告効果計測。図のように、行動レベル、到達レベル、認知レベルの3つの測定を行い、それぞれの数値を元に広告としての効果を計測する考え方である

これからのカギは「コメント」「生中継」―ニコニコ動画最新動向

本カンファレンスのとりをつとめたのは、NTTドコモを退職し、現在、株式会社ドワンゴにて顧問を務める夏野剛氏。

株式会社ドワンゴ顧問 夏野剛氏
株式会社ドワンゴ顧問 夏野剛氏

「ニコニコ動画のビジネスについて」というタイトルの元、ニコニコ動画のこれまでの取り組み、さらに、同氏がニコニコ動画に参画した理由、今後のニコニコ動画の展開まで、幅広い内容が発表された。

YouTubeよりもメディアパワーを持つニコニコ動画

まずはじめに、⁠日本におけるメディアパワーはYouTubeよりもニコニコ動画のほうが持っています」とコメントし、現在のユーザ数など、数値情報を紹介した。

 ニコニコ動画の数値データ(2008年10月31日時点)
登録会員数980万人(2007年3月スタート)
有料会員数20万8,000人(2007年6月入会、2007年7月課金スタート)
モバイル会員数255万9,000人(2007年5月クローズドベータ、2007年8月一般入会スタート)

これらの数値とともに、⁠ニコニコ動画はYouTubeなど、他の動画共有サービスと比較されることが多くありますが、実は、完全なコンペチターではありません。他の動画サービスの強みは100%動画コンテンツにありますが、ニコニコ動画の場合、50%が動画コンテンツ、残りの50%は動画へのコメントにあるからです」と、ニコニコ動画ならではの特徴、強みについて熱く語りました。また、こうした展開から、現在は日本のコンテンツプロバイダとして、最も太いインターネット回線を用意しているといったことも紹介しました。

ニコニコ生放送―インターネットの強みを逆手に取る

続いて、ニコニコ動画の多面的展開としてニコニコ生放送」が紹介された。ニコニコ生放送は、従来の配信とは異なり、指定した時間に最大1万人にのみ配信される、ライブ形式の動画となっている。

「これまで、インターネットの強みとして、時間も場所も関係なくいつでも見られるというメリットの部分を逆手に取り、その場、その時間を共有している人しか見られないという世界観を実現したものです。これにより、ユーザの新しいアテンションを高められました」と、インターネット生放送について考察した。

選挙関係のものや商品発表、実際のライブ(音楽やスポーツ)を中継するものなど、さまざまなコンテンツが実現し、今後も拡充していきたいとのこと。

夏野氏は「今後、ニコニコ生放送で映画の試写会を実現したいと考えています。ニコニコ生放送はユーザを1万という数で区切れるため、ターゲティングなどの効果も狙えると考えています」とコメントした。

ニコ割アンケート―組織票を受け付けない大人数リアルタイムアンケート

もう1つの多面的展開として紹介されたのがニコ割アンケート」。これは、ニコニコ動画に接続しているユーザを対象とした大人数アンケートで、どんなコンテンツを視聴していてもいきなり割り込んでアンケートを実施するという革新的なスタイルを採用している。

「ニコ割アンケートの特徴は、とにかく誰がどんなコンテンツを見ていても、いきなり割り込んでアンケートを実施します。過去には、麻生新内閣やニコニコ動画(秋)に関する調査を行いました。

ニコ割アンケートの強みは、手間もコストもかからないという点です。質問さえ用意すれば、すぐに視聴ユーザにリーチできるからです。また、いつアンケートが実施されるかはユーザにわからないため、組織票のような結果にはつながらないのも特徴です。

これまでのアンケート結果を見ておもしろかったのが、たとえば麻生新内閣に関するアンケートを実施したときに、一般会員の回答が、大手メディアの世論調査に近い結果になったことですね。これは興味深い結果でした。一方で、プレミアム会員の結果は、大手メディアの結果とはまったくかけ離れていましたが(笑⁠⁠。

2008年12月4日に次バージョンをリリース

最後に、今後のニコニコ動画の展開として、2008年12月4日に次期バージョンをリリースすると発表した。このバージョンアップは、⁠現状の1,000万(980万)ユーザから2,000万ユーザに拡大するための大仕掛けを用意しています。今までのニコニコ動画とは趣向を変えるものになります。発表の様子は生放送をするので、ぜひそちらもご覧ください」と、期待感を伺わせるコメントでまとめた。

まとめ

今回は、動画コンテンツプロバイダ、動画コンテンツ採用企業、動画コンテンツリサーチ企業と、さまざまな角度から動画に関わる企業が参加し、それぞれの取り組み、今後の展望について述べられた内容だった。

2009年はこうした動きに加えて、さらに動画コンテンツへの注目度が集まり、普及をしていくことが期待される1日となった。

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