2012年3月3日、第29回WebSig会議「効率化だけではない!中小~中堅ECサイトの成果を上げる「メディア編集力」とは」が開催されました。ここではその模様をお届けします。
それぞれの立ち位置で考えるEC
今回の会議は、楽天やAmazonなど巨大化ショッピングモールが台頭する中、年商数千万~数億の中小~中堅ECサイトが増えてきている状況において、そういった規模のECサイトが今後どうあるべきか、EC事業者・Web制作者両方の視点から考えていくことを目的に実施されました。
そこで、メインスピーカーとして「北欧、暮らしの道具店」運営する株式会社クラシコム青木氏を迎えて、前半はプレゼンテーションによる座学形式のセッションが、後半は聴講者も参加するグループワーク形式のセッションが行われました。
第一部:クラシコムのノウハウ大公開!~メディア編集力で集客アップして脱楽天を実現しても売上アップ
プレゼンテーションの構成は以下のとおり。
- 事業紹介とこれまでの実績
- ECのメディア化とは何か?
- なぜECのメディア化が有効なのか?
- いかにメディア化するのか?
脱楽天を実現した2011年
まず、「北欧、暮らしの道具店」でどのように事業展開を行なってきたかについて、実績値とともに紹介されました。まず、2010年6月当時、35%を占めていた楽天市場店の売上構成比率を、18ヵ月かけて10%以下まで引き下げたそうです。その意図として、楽天市場での展開に対してビジネス的なデメリットがあること、また、大手ECに対して、自社が狙った顧客へのアプローチがしづらかったことなどを挙げられました。そして、その結果として、2011年末に脱楽天を実現したそうです。
ECサイトって?ECのメディア化の意味
次のテーマ「ECのメディア化とは何か?」に進むと、青木氏は「そもそもECって何でしょうか?」という問いかけを会場に投げかけました。「“ECサイト=買い物する場所”という印象がるかもしれませんが、本来はオンライン経由で買い物ができるというのは並列的な意味の1つで、他にも買い物ができる宅配便であったり、ネットで見られるカタログでもあるわけです」と、ECサイトの本質に触れました。その上で「これからは買い物ができるメディアを目指すこと、それが未来のECサイト戦略で重要になります」と展開しました。
つまり、メディア(明確な編集方針があり、見たり読んだりする事自体が目的になり得る。そして、常に新しいコンテンツを提供するもの)が先に来ることで、顧客を呼べるという考え方です。そして、クラシコムとしては「カートボタンの付いた雑誌のようなものになりたいです。それが自分たちの目指しているECサイトの姿です」と、ECサイトのメディア化の考え方と意図について説明しました。
買い物できるメディアになるための「メディア編集力」
そして、今回の本題である「メディア編集力」に関する説明に入りました。
メディア編集力とは、
からなるもので、これらを兼ね備えることで、メディア編集力、ひいてはECサイトのメディア化を実現できるとしました。
前半のまとめとして「メディア編集力とは、楽しむ場所を作る力と楽しませ続ける力のこと」としました。
ECのメディア化が有効な理由
後半は、ECのメディア化が有効な理由を仮説立て、それを実践する事例を紹介しながら解説が進みました。
今のECサイトビジネスでは、プラットフォーマーの支配力が強い市場環境であり、また、加藤な価格・販売・新製品競争に巻き込まれやすい状況であること、(中小~中堅ECサイト事業者にとって)自社のリソースが少ないことといった問題が明確になっています。この問題に対して、青木氏は「ハッピーに生き残れる可能性がある方法が他に見つからないから!」と、ある意味開き直りとも取れる判断をし、ECサイトのメディア化を進めているそうです。そして、それを裏付ける理由として、これまでのECサイトでは、最高(の品物)か最安(の価格付け)というところにフォーカスされがちで、その部分は大手ECサイトの独壇場でもあります。そこに対して、独立系の非大手ECサイトがどうあるべきか、青木氏は「最愛」戦略を狙うべき、と述べました。
「最愛には、「面白さ」×「敬意」×「信頼」×「共有」の掛け合わせが必要としながらも、自分たちで取り組めるポイントは「面白さ」のみで、それを実現するのがメディア編主力でもあります」と、最愛戦略におけるメディア編集力の重要性を解説しました。
さらに、メディア化することで、
- 来店動機の複線化
- ロイヤリティ向上
- 話題の提供によるバイラル効果
などの効果が狙えるとのこと。そして、これらを実現することこそが、非大手ECサイト事業者として生き残りを果たせると考えているそうです。
いかにメディア化するか
最後のパートでは、「いかにメディア化するか」をテーマに話が進みました。
ポイントとして、編集方針や企画制作・ノウハウの蓄積、仕組み/組織づくりなどを挙げた上で、「誰に、どんな切り口で伝えるか」を決めたコンテンツを、継続して増やしていくことが大事としました。
そして、そのコンテンツを作るのはヒトであり、ヒトにヒトが集まってくることについて説明を続けました。また、これを実現している例として、糸井重里氏がプロデュースする「ほぼ日手帳」を題材に取り上げ、クラシコムが使っている「拡張商品価値マトリックス」を例にしたコンテンツ制作方法を解説しました。
まとめとして、「ヒトは(物事を)“知っているヒト“を信じます。ですから、コンテンツを作る上で人格とエピソードをどう含めていくかを考えていきましょう。さらに、みんなに気に入られようと考えるのではなく、好きになれるヒトを見つけて、まずはその人に気に入ってもらうことを最優先に考えることが大切です。そこでこころを動かすことこそがECサイトのメディア化であり、本来の目的である最愛戦略を実現することになります」と締めくくり、プレゼンテーションを終了しました。
第二部:グループワーク「ルイ・ヴィトン(新品)のバッグをテーマに考える」
第二部のグループワークでは、第一部のプレゼンを受けて「ルイ・ヴィトン(新品)のバッグ題材にしたEC戦略」をテーマに、参加者全員で5~6名のチームを作り、チームのメンバー全員で考え発表を行う形でのグループワークを実施しました。
- 編集方針1「だれに」
- 編集方針2「どんな切り口で」売るか」
という方針と、「小規模EC事業者」であるという前提の中、約1時間のディスカッションの後、各チーム4分間での発表を行いました。
スピーカーの青木氏の好評では「ターゲティングの部分への意識が強いチームが多かったように思います。もちろんそこは大事なのですが、お客さんの視点に立ってみて、実際に買いたくなるかどうか、説得力のある提案が必要です」といった、自身の経験に基づいたアドバイスが行われました。
大阪&福岡サテライト情報
今回、WebSig会議としては初となる東京以外の2地域(大阪&福岡)のサテライトを用意しました。いずれのサテライトも、前半の青木氏のセッションはUstream.tv経由でのパブリックビューイングを行い、パブリックビューイング終了後、大阪ではグループワークを、福岡ではパネルディスカッション&ワールドカフェを実施し、各地域、それぞれで盛り上がったとの報告を受けています。
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