2012年4月4日、7年ぶりとなるJavaOne Tokyoが六本木アカデミーヒルズ49で開幕しました。
7年ぶりのJavaOne Tokyo
Java Strategy Kenote、MCを務めたのは、JavaOne Tokyo 2012実行プロジェクトリーダーの伊藤敬氏。オープニングの挨拶では「JavaOneが7年ぶりに東京に戻ってきました。これまでの変化、そしてこれからのJavaが見える2日間を楽しんでください」と述べ、JavaOne Tokyo 2012の幕が開きました。
「7年ぶりの開催をみんなで楽しみましょう。これから2日間はずっとJavaのことを考えてください」と、JavaOne Tokyo開催について、参加者とともに喜んだ伊藤氏
これからのJava、3つの柱―「技術」「コミュニティ」「投資」
7年ぶり、そして、OracleによるSun買収後初となるJavaOneということで、それぞれのアップデートの解説に入る前に「今のJava」のオーバービューが説明されました。担当したのは、Oracle、Java Product ManagemetのDirector、Naveen Asrani氏。
Naveen氏は、「 Oracleのもと、「 技術」「 コミュニティ」「 投資」の3本柱により、これからのJavaが進化します」と力強く語った
Naveen氏は現在のJavaについて、「 3つの柱として、技術、コミュニティ、そして、Oracleによるプラットフォームへの投資があります。これらがJavaの進化を支えているのです」とJavaの現状を俯瞰し、それぞれの最新動向について説明を続けました。
Javaは3つの要素が支えている
技術に関しては、JDK 7 for Mac OS X Developer Preview、JavaFX 2.1 for Mac OS X/Linux Developer Previewが注目したいポイントとのこと。また、コミュニティに関しては、「 オープンソースプロジェクトとして推進されているOpenJDKに、IBMやApple、SAPに加えて、Twitterが参加したことが大きなインパクトを与えていくでしょう」と、従来のITベンダに加えて、ここ数年急激に成長を続けているソーシャルメディアの雄、TwitterがJavaコミュニティの仲間に加わったことを強調しました。
そして、Oracleによる投資、リーダーシップとして、JavaOne参加者が毎年30%伸びている点やJDKのダウンロード数が伸びている点、Java Magazineの発行など、裏側から支えている状況を紹介しました。
見えてきたJava SE 7、そして8の展望
次に登場したのは、Java ME/SE Product Management、Sr DirectorのHenrik Stahl氏です。Henrik氏からは、
Java開発者の規模
JDK 7の今
JDK 8の展望
に関する説明が行われました。
Java開発者こそがJavaの価値とする、Java ME/SE Product Management、Sr DirectorのHenrik Stahl氏
現在、全世界には900万人のJava開発者がいるそうで、Henrik氏はこれを「東京で言えば、朝の通勤をする会社員全員が開発者と言えるぐらいの規模になりました。Javaの開発者数は、いまやそのぐらいまで拡大しています」と、例えを用いながら開発者が増えていること、その規模が年々増えていることを紹介しました。
JDKは現在バージョン7が最新となっていて、この4月にJDK 7u4がリリースされるとのこと。併せて、JavaFXの最新版、JavaFX 2.1もリリースされることが発表されました。
そして、2012年中にJDK 7u6のリリースが予定されており、Mac OS X向けのJREのポート、複数OS間の自動アップデートなどが行えるようになるとのことです。
そして、次期バージョンJDK 8は2013年夏ごろリリースとなっています。
JDKの今後のロードマップ
JDK 8で実現されること
JDK 8のアップデートで注目したいのは、
Project Lamda
Project Jigsaw
の2つ。以前から開発が進められているプロジェクトで、この2つにより、Javaのモジュール化、そして、クロージャの実装が行われることになり、Javaアプリケーション開発の効率化、パッケージングおよびデプロイの簡易化が実現されることになります。
JDK 8のアップデート項目
Herik氏のパートの最後では、OpenJDKに加わったTwitterから、Engineering Infrastructure、DirectorのRob Benson氏がゲストとして登壇し、TwitterとしてのJavaへの期待、参加の目的を述べました。
Twitter、Engineering Infrastructure、DirectorのRob Benson氏。「 現在、TwitterではJavaとScalaを利用した開発を進めています。その中で、コミュニティの中に入ることがとても大事で、自分たちにとって何が必要なのか、そのためにどのように貢献していくかを考えています。オープンコミュニティの価値は、参加することにあります」とコメントした
最後にHerik氏は「JDK 6のアップデートは今年11月で終了します。ぜひ早いタイミングでJDK 7へ移行し、来たるべくJDK 8に備え、また、先進的に進められる開発者にはフィードバックを戻してもらいたいです」と述べ、締めくくりました。
JDK 7
http://oracle.com/java
http://java.com/
JDK 8
http://openjdk.java.net/projects/jdk8/
JavaFX―UIデザイン、そしてフィジカルコンピューティングの実現まで
続いて、昨年OpenJFXとしてオープンソース化も行われたJavaFXに関するアップデートが発表されました。担当したのは、Client Side Development、VPのNandini Ramani氏。
Client Side Development、VPのNandini Ramani氏
冒頭で「OracleのもとでもJavaFXの開発が進み、そしてオープンソース化したことは大変喜ばしいことです」と、これまでのJavaFXの開発が順調に進んでいること称えました。
「まず、直近の話題としては、4月末にJavaFX 2.1 for Mac OS X/Linux Developer Previewがリリースされます」と、アップデートを報告しました。そして、OpenJFXがリリースされてから、オープンソースコミュニティの中で開発が進められ、そして、将来的にJavaFXがJDKの一部で統合されていくこと、JDK 8ではランタイムの中にも含まれることなどが説明されました。
JavaFX Scene Builder Public Beta、リリース
そして、本日「JavaFX Scene Builder Public Beta」のリリースが発表されました。
JavaFX Scene Builder Public Betaは、JavaFXアプリケーション開発のためのUIデザインツールで、さまざまなUIコンポーネントやCSSテンプレートが用意されています。WindowsおよびMac OS Xに対応し、NetBeansをはじめとした主要なJava IDEと連携させることもできます。今後は、このUIデザインツールを利用することで、機能面だけではなく、デザイン面からも高品質なJavaFXアプリケーションの開発が可能となります。
今回は、その一例としてカラーチャートバーのサンプルアプリケーションの開発デモンストレーションが行われました。
JavaFX Scene Builder Public Betaのデモ。さまざまなUIコンポーネントが用意されており、ほんの数分でアプリケーションができあがった
次に、JavaFXのロードマップが発表されました。JavaFX 2.1のWindows/Mac OS X対応のGAは2012年前半、Linux GAおよびScene Builder GAは後半に、また、2013年中に、JDK 8に搭載される次期バージョンJavaFX 3のリリースが予定されているとのことです。
JavaFXのロードマップ
JavaFXの未来――フィジカルコンピューティングの世界まで
最後に、JavaFXの未来として、現在開発が進んでいるいくつかのデモンストレーションが紹介されました。ポイントとしては2D→3Dの世界へ、そして、3Dとリアルの連携、フィジカルコンピューティングの実現までをJavaFXが実現することを目指すそうです。
このデモでは、プレゼンターの動きをカメラで取り込み、その動きに合わせてJavaFXアプリケーションで表示されたDukeが動いている
また、Nandini氏は昨年のJavaOneで紹介されたiOS向けJavaFXにも触れ、「 これからiOSなどタブレットデバイスに向けた最適化はますます重要になっていきます。ぜひ日本の優秀な開発者の皆さまにも参加してもらい、たくさんのフィードバックをいただけたら嬉しいです。その声を元に、より高い品質のJavaFXを目指していきます」と、開発者と一体となって開発をすすめる姿勢を示しながら、JavaFXセッションを終えました。
iPadをはじめとしたタブレットデバイスとJavaFXの相性は最適と紹介し、開発者の協力を呼びかけた
M2M(Machine to Mashine)の世界の主役、Java ME
JavaFXに引き続き、Nandini氏がJava MEの動向を紹介しました。組込みの世界でのJava普及率は非常に高く、「 全世界において、コンシューマ製品から産業用品まで、さまざまなシーンにJava MEが使われています。これからも、M2M(Machine to Mashine)の世界において、Java MEの存在意義は高いものとなっていくでしょう」と、組込み業界におけるJavaの存在感について改めて紹介しました。
すでにさまざまなシーンで利用されているJava ME
今後のJava MEでは、
最新APIの実装
CDCおよびJava SE 8への対応
といったところを重点的に行う他、「 JDK 8のリリースにシンクさせていくことも重要」と、周辺技術とより一層連携してくことを強調していました。
来たるべくクラウドの世界に向けた標準的なPaaSを目指すJava EE
Java SE、JavaFX、Java MEに続き、Enterprise Development、VPのCameron Purdy氏から、エンタープライズ向けJava EEの最新動向について紹介されました。
Enterprise Development、VPのCameron Purdy氏
すでにエンタープライズシステムの多くに利用されているJava EEにおいて、ここ数年とくに取り組まれているのがクラウドへの対応です。現在、Amazon EC2をはじめ、さまざまなIaaSがある中、PaaSに関してはベンダロックインな状況が多く、企業内の導入の障壁になっているとCameron氏は述べます。そこで「Java EEがセキュリティや伸張性(Elastic) 、そして、プロビジョニングに関してさらに対応していくこと、そして、マルチテナンシーをサポートすることで、複数の企業が利用できる、横断的なPaaSを実現できるはず」と、Java EE 7のリリースに向けて、“ 標準的なPaaS” を目指していることを説明しました。
Java EE 7に向けて
また、最初のバージョンのリリースから13年経っていることから「これからのリリースでは、使えないもの、あるいは使わなくてよい機能を外せるようなアーキテクチャにし、その上で、下位互換を実現できるシステムにしていきます」と、技術進化のジレンマでもある古い機能に関する対応を表明しました。
最後に、Java EEを含めた、GlassFishのロードマップが発表されました。
次期バージョン、GlassFish 4は2013年のリリースが予定されている
HTML5に対応する“Project Avatar”
さて、これまでのJavaOneでは、ここまでの紹介でひと通り終わったことになります。しかし、今、クライアントサイドでの開発というのが1つのトレンドになっており、その標準化技術であるHTML5に向けたサポートもJavaでは行われています。それが、“ Project Avatar” です。
Java EEに続いてCameron氏がProjectの概要を紹介しました。
これまでJSPのようにサーバサイドでのUI開発が主流だったJavaにおいて、クライアントサイドで開発をできるようにするのが、このProject Avatarです。今後、PCやサーバ以外に、スマートデバイスが増えていく中で、新しいプログラミングモデルを提供することを目的としているとのこと。
Project Avatarのスコープ
最後に、これまで発表を行った3名が再び壇上にあがり「コミュニティへの参加、Java開発への貢献」をメッセージとして残し、最新Java動向に関するプレゼンテーションが終了しました。
最後に、一層のJavaコミュニティへの参加を訴えた
3段階で用意されたJava資格
続いて、日本オラクル株式会社執行役員オラクルユニバーシティ本部長岩田健一氏から、日本オラクルが提供するJava関連製品とサービスが紹介されました。
日本オラクルが行うさまざまなアプローチでのJavaサポートについて紹介した、日本オラクル株式会社執行役員オラクルユニバーシティ本部長岩田健一氏
注目したいのは、今回のJavaOneに合わせて発表された「Java SE 7」に対応した新しい資格体系です。
Oracle Certified Java Programmer, Bronze SE 7
Oracle Certified Java Programmer, Silver SE 7
Oracle Certified Java Programmer, Gold SE 7
の3段階での資格を用意し、今後は日本だけではなく世界展開も目指していくそうです。
コミュニティが拓く「Javaの近未来」
次に登場したのは、Japan Java Users Group会長の丸山不二夫氏。「 Javaの近未来」と題して、これまでの技術進化、これからのJavaの展望について語りました。
JJUG会長の丸山氏。これまでの技術の歴史、これからのJavaについて展望を述べた
丸山氏は、JavaOne Tokyoが開催されなかった2006~2011年を「Javaの空白の5年間」とし、これがSun消滅によること、またそのダメージについても触れた上で、これから生まれる「新しいネットワークメディア」「 新しいネットワークマーケット」において、改めてJavaが必要とされると、持論を展開しました。
その理由として、「 大規模なエンタープライズシステムやオープンソースシステムにおいて、すでにJavaが使われていること」「 新しいネットワークマーケットへの対応は既存のシステムの拡張として行われること」「 エンタープライズシステムのクラウド化にもつながる」といった点を挙げ、その中心的技術にJavaがあるとしました。とくに、Java EE 7のリリースに注目しているそうです。
また、そのためにはコミュニティの力が必要であり、参加者のさらなるコミット、貢献を期待して締めくくりました。
なお、JJUGの次のイベントが2012年5月27日開催されるそうなので、Java開発者の皆さんはぜひ参加してみてください。詳しくはJJUGのサイト で更新されていくとのことです。
このあと、ベンダセッションとしてNEC ITソフトウェア生産技術・品質保証本部本部長 岸上信彦氏から「長期運用を実現するNECのEnterprise Java」と題したプレゼンテーションが行われ、初日のStrategy Keynoteが終了しました。
技術進化のスピードが激しいITにおいて、10年単位で稼働させなければいけないエンタープライズシステムの運用はどうすべきか、同社のこれまでの経験と実績をもとに説明を行ったNEC岸上氏
MOVING JAVA FORWARD
以上、大変濃密な2時間のセッションが終了しました。一部、昨年サンフランシスコで開催されたJavaOneからのアップデートも含まれつつ、今回に合わせて発表された新技術など、日本のJava開発者にとっては有意義な時間になったのではないでしょうか。
朝早くから超満員となったKeynote会場
今回7年ぶりのJavaOne Tokyoということで、アツい2日間の幕が開けました。これをきっかけに、イベントコンセプトにもある“ MOVING JAVA FORWARD” が意味するように、Javaの次のステージを、開発者みんなで盛り上げていけることを期待しています。
今年は、ロシア、インドでもJavaOneが開催される。また、9月30日~10月4日には16回目のJavaOneが開催されることが決まっている