2012年9月8日、HTML5 Conference 2012が慶應大学日吉キャンパスにて開催されました。
今回の参加者は昨年開催された「Chrome+HTML5 Conference ~第20回記念HTML5とか勉強会スペシャル~」の5倍にあたる1,000人の方に参加していただいたイベントで、主催コミュニティである「html5j.org」にとってもはじめての規模でした。
同イベントでは、22のセッションが行われ、どのセッションもWeb業界の著名人によって講演されました。
本稿では、同イベントの最初のセッションである基調講演についてレポートします。
基調講演
今回の基調講演の構成は、最初にイベント概要の紹介、次にHTML5に関わる過去現在未来についてをコミュニティの視点からと技術的な視点からの話に分けて行いました。
イベント概要
まず最初に、html5j.orgコミュニティの管理人である白石俊平さんから本イベントの概要を改めて説明しました。
今回のイベントは参加者1,000人にも関わらず、応募開始から30時間でいっぱいになるほどの大盛況ぶりだったと振り返ります。
そして今回のイベントのテーマは「Web技術者の祭典」であるとしました。セッション数は22セッション、スピーカーは25名。また今回は28社の企業に協賛、8社のメディアにも協力をいただいてイベントを行っています。
なお、今回のイベントのテーマは祭典ですが、白石さんはこのイベントを「通過点」としたいと言います。通過点とは線に点を打つことだとし、参加者すべての人のスキルアップや、コミュニティの人数の増加等、様々な点で角度を変えるきっかけになってほしいという意味を含んでいると話します。
通過点になるため、今回の基調講演は過去を振り返り、現在の状況を知って未来につなげていくことを目的としたいと結びました。
コミュニティ視点でみる、HTML5のこれまで
イベント概要の後は、そのまま引き続き白石さんがコミュニティの過去と現在について講演しました。
html5j.orgは毎月「HTML5とか勉強会」を開催しています。その結果、2012年8月までに31回の勉強会を開催し、この1年で11回行いました。また、昨年のイベントからコミュニティの人数は、3,785人(2011年8月21日)から4,956人(2012年9月6日)へと増加したことを示しました。
コミュニティの人数や本イベント申し込みの勢いから、HTML5の盛り上がりがよくわかるものになっていると述べていました。
技術視点でみるHTML5のこれまでとこれから
白石さんの話の後は、技術的な面から見る過去・現在・未来についてをGoogleの及川卓也さんが講演しました。
HTML5の最初の流れが出てきたのは2004年頃。WHATWGというグループが結成され、HTMLをマークアップ的な観点ではなく、アプリケーションとしてWebの標準を考えていこうとなった年だと言います。この年は、GmailやGoogle Mapsなど当時では考えられないようなものがWebアプリケーションとして登場し、Webでもローカルアプリケーションに負けないものが提供できると思われるようになりました。
HTML5という単語が出てきたのは2009年頃で、世界的にも普及したのが2010年。奇しくもAppleがiOSでFlash対応をしないと発表があったことにより、HTML5への注目が高まったそうです。その後も、様々な仕様が検討され、実際にブラウザに実装されていくにつれ、Webでできることは非常に多くなっていきました。
このようにHTML5は、できないことをできるようにすることで、ネイティブアプリに追いつくように進化してきました。そして現在は、できるようになったものが妥協なく動くようにしていると言います。一例としては、GPUアクセラレーションです。これはCSS3やCanvas、WebGLなどの描画に関する機能を速く動作させようとする試みです。
さらに今後のHTML5の展開としては、WebIntentsやWeb Componentsを利用した、Webアプリケーションのコンポーネント化を促進し、より簡単に、より広がるようになっていくと考えていると話します。
しかし広がるというのは良いことだけではないとのことです。たとえば、ブラウザベンダごとに提供している独自のAPIや、仕様提案中のRaw Socket APIなど、Webの領域を超えるようなものにも波及していて、利用方法の複雑化やセキュリティ面での不安なども同時に発生してきています。これらの技術をコミュニティが協力して、複雑なところや、セキュリティの不安なども吸収しながら、きちんと使われる技術としてブラッシュアップしていってほしいと話をまとめました。
コミュニティの未来
技術面からの過去・現在・未来の後は、白石さんが再登壇し、コミュニティの未来について講演しました。
Web技術の広がりや深まりにあわせて、コミュニティ活動も増えて、盛り上がっていく必要があると考えると同時に、勝手に広がっていき、盛り上がってもいくだろうと考えているそうです。
現在、html5j.org開催のイベントは、毎月の「HTML5とか勉強会」だけではなく、「Web先端技術味見部」や「HTML5とか勉強会番外編」などのスピンオフ勉強会も開催し、コミュニティ活動の活発化に関わっています。これらのイベントを通して、本コミュニティの未来は、日本が世界のWebシーンをリードしていくようになるためのハブになっていきたいと言います。そして最後に、これからのhtml5j.nextにもご期待くださいと述べて、基調講演を締めくくりました。
基調講演の動画はこちらにあがっています。また、及川さんのスライドはこちらになります。ぜひご覧ください。