Infinity Ventures Summit 2012 Fallレポートその1:LINEとLINE POPの躍進とそれを巡る競争へ

昨年12月11日から12日に経営者向け招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2012 Fall Kyoto(IVS⁠⁠」が京都にて開催されました。

IVSは毎年5月頃と12月頃に開催されるのが恒例となっており、IT業界の経営陣が一同に集まる数少ないイベントのため、その年の業界動向を総括したり占う上での格好の場となっています。

写真1 IVSの開幕を告げるインフィニティ・ベンチャーズLLP共同代表パートナーの小林雅氏
写真1 IVSの開幕を告げるインフィニティ・ベンチャーズLLP共同代表パートナーの小林雅氏

無料通話アプリ競争の行方

今回のIVSでの冒頭のセッション、⁠世界に打ち勝つ会社・サービスの創り方」でまず話題となったのが快進撃を続ける無料通話アプリの「LINE」と、10月にサービスを開始したDeNAの「comm」の両サービスでした。

2012年5月のIVSでは4,000万ユーザを突破したと発表されていたLINEは登録ユーザ数が8,000万人に到達し、NHN Japanが目標としていた1億ユーザも見えてきたようです。世界26ヵ国でAppStore 1位を獲得しており、以前からユーザが伸びていると語られていた台湾やタイなどのアジア圏に加え、南米などスペイン語圏でもユーザが増えているようです。

写真2 サービスリリース後から順調に成長を続けるLINEのユーザ数
写真2 サービスリリース後から順調に成長を続けるLINEのユーザ数

DeNAの守安社長は、⁠韓国でカカオトークが流行っている段階から検討していた。が、グローバルでイケルか不明で足踏みをしていた」と話し、参入するにあたってどう差別化するかを考え、通話の品質にこだわることとリアルグラフでも実名制ではないサービスを考えたとのことでした。

どうやってLINEに対抗することを考えているのか?との質問には「やるからには勝ちたいが、現実的には日本ではどこまで追いかけられるか? 韓国ではカカオトーク、中国にはWeChatが存在するので、ライバルがいないところで隙間をぬって勝てれば」と、まずは強力な競合がいない地域でユーザベースを獲得していきたいようです。

逆にDeNAの守安社長がNHN Japanの森川社長に「韓国では、LINEはカカオトークをどうやって倒しますか?」と質問をする場面も。森川社長は「韓国で投資するよりも他の国で投資するほうが効率的なので、今のところはその他の地域が優先度が高い」と答え、うまく質問をかわてしていました。

LINE POPはゲームを遊んでもらうための習慣付けに

2012年5月に開催された春のIVSのキーノートで「ゲームも本格的にやろうと考えているのでご期待ください」と語っていた森川氏。

Infinity Ventures Summit 2012 Springレポートその1:LINEはスマホ時代だから生まれた直感的なサービス

その言葉どおりLINEは無料通話アプリを軸にLINE POPなどに提供されるゲームや占いなどの提供にも力を入れ始めており、コミュニケーションツールからプラットフォームへと領域を広げ始めています。

森川社長は、⁠国によってはLINE POPがLINEよりも数字が伸びている。Facebookなどのリアルグラフでゲームをやっていると仕事をさぼっていると思われてしまうけどスマホでLINE POPを遊んでもそう思われないのかも?」と語り、会場に笑いを起こしていました。

森川氏は「LINE POPの売上っていくらだって言ってましたっけ?」というgumiの國光社長からのあえて答えを引き出すような質問をかわし、⁠LINE POPのようなパズルゲームはルールの説明がいらず、運の要素と実力の要素があるのでかなり多くのユーザに影響を与えることができる。まずはユーザがゲームを遊ぶという習慣ができるという意味で重要だと考えている」と答えていました。

写真3 中央:周りの登壇社からの鋭い質問に答えるNHN Japan代表取締役の森川氏
写真3 中央:周りの登壇社からの鋭い質問に答えるNHN Japan代表取締役の森川氏

明確な回答はなかったためアプリのダウンロード数に対するLINE POPの売上は一般的なソーシャルゲームほどまだ高くないとも推測できますが、まずは課金に繋がるゲームへユーザを習慣付けることに貢献していると考えているようです。

バーチャルグラフだから課金が進む?

LINE POPの売上げについて話が出たところで、DeNAの守安社長から「リアルグラフ向けのゲームの場合は、50~100人位の(限られた)ユーザの中で多くのユーザに遊んでもらわないといけないのでLINE POPのようなカジュアルなものが向いているのでは?コアなゲームはバーチャルグラフをいかしたものが向いてくると思う」と語りました。

写真4 左側:NHN Japan代表取締役の森川氏。右側: DeNA代表取締役の守安氏
写真4 左側:NHN Japan代表取締役の森川氏。右側: DeNA代表取締役の守安氏

LINEのリアルグラフ指向、commのヴァーチャルグラフ指向がここでも明らかになっていました。パズルのような誰でも遊べるカジュアルゲームならではの間口の広さがあるからこそ、リアルグラフの中でも多くのユーザに遊んでもらえるLINE POP。一方でよりコアなゲームへの動きもみられるソーシャルゲームではリアルグラフの中だけでは遊んでいる人が限られてくるため、ゲームをプレイしている人同士での繋がりが生まれるバーチャルグラフのほうが強みがでてきます。

2013年はこのリアルグラフとソーシャルグラフを巡る動きが興味深いものとなりそうです。

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