2013年11月21、22日の2日間、グランドプリンスホテル新高輪(東京・品川)にて、日本マイクロソフト株式会社主催の総合カンファレンス「The Microsoft Conference(以降MSC)2013」が開催された。ここでは初日のVision KeynoteおよびGeneral Sessionの模様をお届けすします。
デバイス&サービスカンパニーとして
Microsoft InternationalでPresidentを務めるJean-Philippe Courtois氏が登場。
過去最大規模(申し込みで9,400名、初日の参加者数で4,000名超)となったMSC、これを受け、Courtois氏は「Microsoftとして日本は大きな市場として期待しています」と述べ、さらに今同社がグローバルで掲げている「デバイス&サービス カンパニー」であることを強調し、これからの日本市場での同社のデバイス&サービスのさらなる普及への期待とともに、オープニングの挨拶を締めくくりました。
Microsoft International、Presidentを務めるJean-Philippe Courtois氏
日本経済の盛り返しとこれからの多様性に向けて
Courtois氏に続き、午前のホストを務めた日本マイクロソフト代表執行役社長 樋口泰行氏が登場。
日本マイクロソフト代表執行役社長 樋口泰行氏
Courtois氏のコメントを引き継ぐ形で、「 2013年、日本はアベノミクスの効果もあり、景気が上向いてきました。また、2020年のオリンピック・パラリンピックの招致を実現し、良い方向に回り始めてきたと思います。この流れを活かして来年度に向けて期待を寄せたい」と、状況の変化に対するポジティブなコメントをする一方で、「 ただし、これらはすべて環境要因であり、自助努力で変えていくべきことはたくさんあります。1つは世の中の多様化に向けた、モダナイズ、生産性向上およびそのための戦略の立て方が必要です」と、環境要因だけではなく、当事者となる企業が意識的に(自身の)変化をし、( 外部の)変化に対応していくことがさらなる進化、イノベーションにつながると述べました。
ここで樋口氏が注目したのが、技術の多様化。この10年を見ても、クライアントサーバモデルがインターネット化し、そして、今はクラウド化していること、さらにモバイルデバイスの進化によってフロントサイドへの意識、とくにセキュリティの確保が求められていくこと、また、モバイル&クラウドにより、ソーシャルネットの価値が高まり活用されたことによるデータの肥大化、いわゆるビッグデータの扱いと言った点について、トータルの整合性 を考えることが求められていくとしました。
この一連の流れについて、冒頭で述べられた「デバイス&サービスカンパニー」のコンセプトに加えて、樋口氏からは「クラウドOS 」というキーワードが紹介されました。これは、WindowsやAndroidといった固有のOSを指す用語ではなく、クラウド時代に適したOS(オペレーションシステム)という概念で、この先、全体最適のできるIT基盤として求められるプラットフォームの総称として説明されました。
そして、「 Microsoftはデバイスからクラウドまでを一貫して提供していきます」と改めて、次の戦略を説明し、本日最初の大きな発表が行われました。
Windows Azureデータセンター、2014年に日本国内で稼働スタート
Microsoftが提供するIaaS・PaaSのクラウドサービス「Windows Azure」のデータセンターがいよいよ日本国内でも稼働することが正式発表されました。現在準備しているのは、関東と関西の2拠点で、2014年前半に稼働開始予定とのことです。
「2拠点のデータセンターを同時に開設することで、国内でのディザスタリカバリを実現します」( 樋口氏)と、国内におけるレイテンシー問題やメンテナンス対応問題がクリアできることに加えて、非常時における安心の担保ができることが、今回の特徴として説明されました。
デバイスとサービスとクラウドOSをが広げる未来
Windows Azureの発表に続き、日本マイクロソフトエバンジェリスト西脇資哲氏が登場し、今のMicrosoftが提供するデバイスとサービスが生み出す価値について、実際のデモンストレーションと合わせて紹介しました。
医療分野におけるテクノロジーの最適化
まず最初に紹介されたのは、同社のゲーム端末の最新版Xbox OneとKinectを利用したデモンストレーション。Kinectのセンサーを利用して手話による会話をデータ化し、銀行窓口の対応業務をサポートするというものです。
写真のように、手話を話す人の手の動きを認識・解読することでそれを言語化します。
左の女性の腕の動きを認識し、それを文字情報へ変換
また、肌につなげたセンサーから心拍数を図るなど、バイタルデータの取得、その後のデータベース構築、CRMとの連携など、今後の医療分野における実用性の向上がかいま見えたデモンストレーションとなりました。
左下の74というのが心拍数。他にもバイタルデータを取得
ビデオ会議ツールを経由して、各種データを活かした遠隔治療につなげることもできる
リアルの入口・出口として
続いて、2つのリアルとつながるデモンストレーションが行われました。
1つ目は、最近注目を集める3DプリンタとWindows 8.1搭載タブレットをつなげたもの。西脇氏は、Microsoftが11月15日に無料でリリースした3Dプリンタ向けデザインアプリ「3D Builder 」を使い、タブレット経由で操作して3Dプリンタへ出力したサンプルを紹介しました。
3D Builderでモデリングしている様子
これまで3Dデータを実際の形に落とし込むには専用の機械や産業用機器が必要でしたが、各種デバイスの進化とコモディティ化によりかなり身近なものとなりました。
もう1つのデモは、クラウド型オーダーシステムQOOpa です。このシステムは株式会社セカンドファクトリーが開発したもので、すでに導入実績がいくつかあります。このシステムの特徴は、端末非依存でのオーダーが取れる点。iPhoneやWindows 8タブレットなど、さまざまなデバイスからのオーダーを行うことができ、クラウド側で一元管理ができる他、オーダーしたデバイスからサイン入力・認識が行えレシートプリンタを使えばレシート出力まで行えます。
オーダーから注文、支払いまでがタブレットなどのデバイス上で行える
このように、セールスの現場でもPC、やタブレットを利用することで顧客満足度を高めることができるようになったのです。まさにデバイス&サービスの組み合わせが、日常生活に近づいてきたと言えるでしょう。
General Session~クラウドOS時代への変革
そのまま、General Sessionがスタートしました。このセッションを担当したのは、米国Microsoft Corporationにて、サーバー&ツール マーケティンググループのコーポレートバイスプレジデントを務める沼本健氏です。
Microsoft Corporation、サーバー&ツール マーケティンググループコーポレートバイスプレジデントを務める沼本健氏
沼本氏は自身が1997年にMicrosoftに入社してからのこの20年弱に関して、「 とにかく技術進化がすごい」と冒頭述べました。とくに、
の4つに注目し、今は革命的な進化・変化がまさに起きている時代だとしました。
このまま最新のテクノロジーに関する発表が行われるかとおもいきや、ここで沼本氏が取り出したのは「モデム」でした。モデムを片手に、当時は99%のインターネットがモデムを通じてつながっていたこと、それが今はインフラが進化し、クラウドでつながり始めた時代の変化を例に挙げ、「 クラウドの登場は革命です。そして、今こそ選択する時代となりました。とくにストラテジックな会社をパートナーとして選べるか どうか、これが(クラウド時代における)ビジネス成功のための必要条件です」という持論を展開しました。
さらに、2000年と2012年のFortune 500のトップ10企業を比較し、10年で生き残ったのは3社、そのうちの1社がMicrosoftであること、選択の条件として永続性のあることを強調し、「 It's time~今こそ、選択を」と題したプレゼンテーションが始まったのです。
クラウドOSと3つのポイント
沼本氏のセッションの中核は、これまでの登壇者からも何度も取り上げられていた「クラウドOS」 。クラウドOSの活用には、
エンタープライズグレードのプラットフォーム
ハイブリッド設計
ユーザー中心のアプローチ
の観点で考えることが大切として、それぞれの観点について事例を紹介ました。
そして、先ほどの永続性の話とつなげて、「 世界有数のサービスをいくつも運営してきたMicrosoftのスケール+経験から得られた実績によって、Microsoftのインフラはどんどん大きくなりました。そして、これからもパートナーの皆様にはそのスケールメリットを還元できるはずです」と同社のビジョンと強みについて力強いメッセージを発信しました。
沼本氏から中期ビジョンをふまえた同社の展望も紹介された
これからはデバイスとソフトウェアとインフラの組み合わせが求められる
以上、MSC2013のVision KeynoteおよびGeneral Sessionから見えた、Microsoftの次の一歩、デバイス&サービスカンパニーとしての進み方について紹介しました。また、たとえとして何度も挙がっていたクラウドOSの考え方は、基盤を支えるインフラ部分と、ユーザに提供するサービスの核となるものであり、ここの形を作っていくこと、作る自力を持っているこそがMicrosoftの強みなのではないかという印象を受けました。
また、来春には開発者向けの大規模イベントが予定されているとのことなので、これからも引き続き注目していきたいと思います。