世界からアプリをPublish!~Microsoft主催のグローバル開発イベント「//Publish/」レポート

2014年5月17、18日の2日間(※一部の国・会場では16、17日⁠⁠、Microsoft主催のグローバルイベント「//Publish/」が開催されました。

このイベントは、世界に散らばった60会場で同時開催となった、イベントとコンテストを組み合わせたもので、名前のとおり、ストアアプリを「Publish(申請⁠⁠」することを目的に、実際に企画を考え、アプリを実装するために用意されました。

日本では、日本マイクロソフトが中心となって、天王洲にあるサムライスタートアップアイランドにて、総勢34名が集まって行われました。ここでは、その模様をお届けします。

とにかくPublishをすること

日本の開催時間は、5月17日朝10:00から、翌5月18日夕方16:00まで。この間に、個人で、あるいはチームに分かれて、各々が真剣に開発に取り組みました。

今回のイベント全体の進行を務めた日本マイクロソフト株式会社テクニカルエバンジェリストある武田正樹氏
今回のイベント全体の進行を務めた日本マイクロソフト株式会社テクニカルエバンジェリストある武田正樹氏
//Publish/イベントのサポート役の1人、MVP(エキスパート)の初音玲氏より開催にあたっての挨拶が述べられた
//Publish/イベントのサポート役の1人、MVP(エキスパート)の初音玲氏より開催にあたっての挨拶が述べられた

この「//Publish/」は、Windows関連のソフトウェア(Windows 8.1向け/Windows Phone向け/クロスプラットフォーム向け)の質と量の向上を目的に、世界で同時開催されるもので、とくにこの週末に関しては集中して開催することを目的として、ハッカソンをふくめたプログラムが用意され、オンラインでのセミナーに加えて、各地域ごとでのプレゼンテーションやコンテスト、また、地域をまたいだ共同開発などが行われました。

会場となったSamurai Startup Islandでは、参加者が各々のスタイルで開発を進めた
会場となったSamurai Startup Islandでは、参加者が各々のスタイルで開発を進めた 会場となったSamurai Startup Islandでは、参加者が各々のスタイルで開発を進めた

集中して開発、初心者でも参加できるようなさまざまなプログラムも用意

ここ日本では、日本マイクロソフトの社員に加えて、各テクノロジーのExpertやMSP(Microsoft Student Partners)など、多彩な顔ぶれが参加し、みんなで開発をする他、初心者向けにはExpertによる集中セッションが行われたり、その場でのアドバイスなど、リアルイベントならではのプログラムが用意されていました。

定期的にMVPによるショートプレゼンやワークショップが行われ、初心者にとっても参加しやすい内容となっていた
定期的にMVPによるショートプレゼンやワークショップが行われ、初心者にとっても参加しやすい内容となっていた

開催中は、昼食や夕食も同じ会場内にて。多数の弁当や飲料、菓子などが用意され、自分たちのタイミングで食事をし、開発をし、議論をし……と、まさにアプリ開発に集中できる空間となっていたのが印象的です。

昼や夜には食事の用意がされ、飲料はつねに飲みたいときに飲めるようになっていた
昼や夜には食事の用意がされ、飲料はつねに飲みたいときに飲めるようになっていた 昼や夜には食事の用意がされ、飲料はつねに飲みたいときに飲めるようになっていた

ケニアとコラボレーション

今回、日本マイクロソフトとMicrosoft ケニヤチームとのコラボレーションも実現しました。グローバルイベントならではということで、⁠時差を意識したタスク管理ツール」の開発を共同で行ったとのこと。ただ、残念ながら現地のインフラの問題から(インターネット回線の不通により⁠⁠、コミュニケーションがうまくとれず、完成には至らず。

本プロジェクトに参加していたMSP松原氏は次のようにコメントしており、//Publish/を機に、今後も現地とのコミュニケーションや共同開発に取り組みたい意向を示しました。

⁠もともとのきっかけは、ケニアのMSPと会ったことでした。そこで、共同で何か制作しよう、というところから始まったのです。このとき、自分たちが何かを作るときに課題と感じていた、

  • 複数メンバーの参加
  • タイムゾーンの差異
  • 上記を前提としたときのタスク管理
をそのまま解決できるものを作ったら良いのではということで、アイデアが決まりました。ただ、今回残念ながらケニア側の気候の問題で、電力関係のインフラが不安定となり、通信がとれなくなってしまったのです。また、時差が会ったことで、//Publish/内で十分に時間が取れなかったのも残念でした。

とは言え、何度かはやりとりできましたし、これをきっかけに定期的にMTGをセットするなどが決まり、モチベーションが高まったのは事実です。これからが楽しみですね。

少ない中でのやりとりで気づいたポイントとしては、サーバのデータセンターのリージョンをどこに置くかなど、そういった離れた地域で意識するポイントを体感できたことは大きかったと思います⁠

ケニアとのやりとりをしている様子
ケニアとのやりとりをしている様子
公式ページを通じ、全60地域の様子がストリーミングされていた。真ん中の数字(344)が世界各地でPublishされたアプリケーションの数を示している
公式ページを通じ、全60地域の様子がストリーミングされていた。真ん中の数字(344)が世界各地でPublishされたアプリケーションの数を示している

優勝は?

2日間にわたる開発を終え、18日夕方には全チームによる発表会、そして、審査員によるコンテストが行われました。

今回のコンテストでは、以下4つの賞が用意されており、それぞれ1、2位、計8つのアプリが表彰されることとなりました。なお、Windows Phoneアプリに関しては、日本でのデバイス販売状況をふまえて、エミュレータ上での稼働を審査対象として行われました。

  • Best Windows 8.1 App(ストアアプリ)
  • Best Windows Phone 8.1 App(Phoneアプリ)
  • Best Cross-Platform App(ストア/Phone共通アプリ)
  • Breakthrough in App Innovation and Design(革新的かつデザインに優れたアプリ)

日本では合計24アプリのPublishが行われました。//Publish/が終わったタイミングで60地域で約350アプリがPublishされていたことを考えると、その7%を1つの地域から生み出せたというのは、とても素晴らしい結果だったのではないでしょうか。

昼や夜には食事の用意がされ、飲料はつねに飲みたいときに飲めるようになっていた
昼や夜には食事の用意がされ、飲料はつねに飲みたいときに飲めるようになっていた 昼や夜には食事の用意がされ、飲料はつねに飲みたいときに飲めるようになっていた

以下、各賞の1位をご紹介いたします。

Best Windows 8.1 App:だるぼーる

Best Windows 8.1 App1位に輝いたのは、五十嵐祐貴さんが開発した「だるぼーる」。だるやなぎというキャラクターを、いかに落とさずに転がすかだけを楽しむアプリです。タブレットの加速度センサーも利用するなど、従来のデスクトップの枠にとらわれなかった点が評価されました。
だるぼーる
だるぼーる

Best Windows Phone 8.1 App:ずぼらな私の小遣い帳

次に、Best Windows Phone 8.1 App1位に輝いたのは、大塚信拓さんが開発した「ずぼらな私の小遣い帳」です。個人向け家計簿になっていて、コインを使ったUI、とくにスマートフォンでの操作性の高さなどが評価されました。
ずぼらな私の小遣い帳
ずぼらな私の小遣い帳

Best Cross-Platform App:Metro Traffic Simulator

Best Cross-Platform Appは、増谷修さんの「Metro Traffic Simulator」です。その名のとおり、交通の混雑シミュレーションを行うアプリで、OSM(Open Street Map)による地図との連携など、かなり実用性の高いアプリケーションとなっています。

Metro Traffic Simulator
Metro Traffic Simulator

Breakthrough in App Innovation and Design:KAMIGRA

すべてのアプリを通じて、Breakthrough in App Innovation and Designに選ばれたのは、宮坂雅彦さんが開発した「KAMIGRA」です。本アプリは、先だって開発が進められており、今回の//Publish/でさらにブラッシュアップされ、Publishされたものになります。

手書き風のメモが取れ、さらにそれがベクターデータとして保持されるため、管理しやすい点や共有しやすい点、また、文字認識に関してはWindowsの機能を利用している点など、実用度をかなり意識して作り上げている点が高く評価されました。

今回、ユニークなアプリが多数開発されました。また、この//Publish/で初めてアプリを開発したという参加者がいるなど、今まで以上にアプリ開発に対する意識が高まったイベントになったのではないかと思います。

審査の講評では、日本マイクロソフト株式会社Microsoft Ventures Tokyo代表の砂金信一郎氏から、⁠今回、非常に魅力的なアプリが多数開発されました。こういう形で、日本からもたくさんのアプリ開発者が生まれることを嬉しく思うとともに、これからのWindowsアプリ/Windows Phoneアプリのさらなる向上につながっていくことを期待しています」と、参加者への賛辞と今後の期待が述べられました。

審査を行った3名。右が砂金信一郎氏、左が日本マイクロソフトデベロッパー&プラットフォーム統括本部マーケティング部部長米野宏明氏。中央は筆者
審査を行った3名。右が砂金信一郎氏、左が日本マイクロソフトデベロッパー&プラットフォーム統括本部マーケティング部部長米野宏明氏。中央は筆者

これからますます求められるWindowsアプリ

2日間にわたって、非常に内容の濃い、そして充実したハッカソンが開催されました。参加者は、社会人だけではなく学生も多数参加し、さらに、東京以外の地域から参加するなど、日本全国幅広い世代が参加したことは、これからの日本の開発分野にとって、大変期待が持てる結果になったのではないでしょうか。

なお、この//Publish/は、2日間で終わりではなく、このあと2週間、2014年6月1日まで開発を行い、締め切りまでにPublishされたものが、評価・審査対象となります。グローバルでの審査や実際の申し込みに関しては、下記公式サイトをご覧ください。

2014年は、これまで多くのユーザを獲得してきたWindows XPのサポートが切れ、今後、Windows 8/8.1への乗り換えを含めた、新OSの普及が見込まれています。OSの普及のカギを握るのが、その上で動くアプリケーションです。ぜひ多くの開発者のチカラを発揮して、より良いWindows 8/8.1アプリケーションが生まれてくることを楽しみにしています。

//Publish/
http://online.publishwindows.com/

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