JavaOneの世界が帰ってきた~日本最大級のJavaカンファレンス「Java Day Tokyo 2014」開催

2014年5月22日、日本オラクル株式会社主催のテクニカルカンファレンス「Java Day Tokyo 2014」が品川(東京)にて開催されました。ここではキーノートの模様をお届けします。

今年で2回目、日本独自のJavaカンファレンス

Java Day Tokyoは、日本オラクル株式会社が主催する、日本独自のJavaカンファレンスで、今年で2回目となります。

キーノートのホストを務めたのは日本オラクルFusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部シニアマネジャーの伊藤敬氏。

ホスト役の日本オラクルFusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部シニアマネジャーの伊藤敬氏
ホスト役の日本オラクルFusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部シニアマネジャーの伊藤敬氏

オープニングでは再びJava Dayが開催され、会場に集っていただい来場者への感謝の気持ちを述べた後、⁠今回の目玉は、今春リリースされたJava SE 8です。Java SE 8に注目し、ぜひ新しいJavaの世界を開いてください。そして、最もホットな分野となっているIoT(Intenet of Things)におけるJavaの可能性について楽しんでもらいたいです」と述べ、キーノートがスタートしました。

IoTとJavaの世界

キーノートのトップバッターを務めたのは、Vice President, Java & IoTのNandini Ramani氏。Nandini氏は、今のJavaを支える3つの柱として、

  • コミュニティ
  • テクノロジ
  • Oracleの責務(リーダーシップ)

を挙げました。

コミュニティに関しては、OpenJDKによる開発やJCPでの議論、そして、何よりも世界に散らばる900万人のデベロッパーの存在の大きさについて改めて紹介し、⁠Javaは世界一の開発プラットフォームである」と表現しました。

Vice President, Java & IoTのNandini Ramani氏。Nandini氏。次の革命と言われているIoTにおけるJavaの価値をさまざまな面から紹介した
Vice President, Jav

IoTの世界におけるJavaの存在感

技術面に関しては、これまで(Java 8以前)は、Java SE 7とJava ME(CDC 1.1、CLDC 1.1)でAPIはそれぞれ異なる関係で互換性が取りにくく、言語仕様としてJava SE 7に、CDC 1.1やCLDC 1.1が含まれる状況だったものが、Java 8が登場したことにより、Java SEとJava MEの関係がよりシンプルになり、将来的にはJava SEの技術の中に小型デバイス対応の技術が含まれ、開発や運用が今まで以上にしやすくなっていく、という展望を述べました。

これは、今後のインターネットを支えていくであろうIoTに向けた戦略であり、⁠Javaの重要性がますます高まっていく」とアピールしました。

この他、Java SE8のJavaScriptエンジン「Nashorn⁠⁠、10年以上前から取り組んでいるJavaの並列処理の向上に向けて、今、最も期待しているものとして「Project Sumatra」を紹介しました。このProject Sumatraは、並列コンピューティングによる処理速度向上を実現させるための技術で、GPUによる演算とマルチコアCPUの組み合わせによって、高いパフォーマンスを実現するものです。Nandini氏は、現在、AMDと協力しながら開発を進めていると紹介しました。

また、Java SE 8ではコンパクトプロファイルがより小さく、また、目的に応じてフルサイズ以外のものが用意されるといった利便性の向上について触れられ、こちらもIoTにおける(容量制限のある)小型デバイスでのJava活用がしやすくなったことを取り上げました。

人口と一人あたりのデバイスの数を比較したもの。2003年には0.08台/1人だったものが、2015年には3.47台/1人、2020年には6.58台/1人になると予測されている
人口と一人あたりのデバイスの数を比較したもの。2003年には0.08台/1人だったものが、2015年には3.47台/1人、2020年には6.58台/1人になると予測されている

Java SE 8日本語ドキュメントリリース

そして、この日は、Java SE 8日本語ドキュメントがリリースされました。これにより、今まで以上に日本の開発者が開発しやすい環境が整備されたと言えるでしょう。

Java Platform Standard Edition 8ドキュメント
http://docs.oracle.com/javase/jp/8/

Javaを通じたパートナーシップ

技術面の紹介がひと通り終わった後、2組の企業とのパートナーシップが紹介されました。1つはNEC、もう1つはパナソニックシステムネットワークスです。それぞれが取り組んでいるプロダクト、その中におけるJavaの活用を紹介しました。

NEC石黒氏は、同社が開発しているクラウド連携型ロボットPaPeRo⁠左の2台)を紹介した
NEC石黒氏は、同社が開発しているクラウド連携型ロボット「PaPeRo」(左の2台)を紹介した
パナソニックシステムネットワークス虻田氏は、同社が取り組むJava ME搭載電子マネー決済端末を紹介し、今後の流通におけるJavaの実用性を紹介した
パナソニックシステムネットワークス虻田氏は、同社が取り組むJava ME搭載電子マネー決済端末を紹介し、今後の流通におけるJavaの実用性を紹介した

最後に、Javaのロードマップが発表され、Nanidini氏のセッションが終わりました。

Javaのロードマップ
Javaのロードマップ

エンタープライズとHTML5とJava EE

続いて、⁠Java Strategy Keynote」と題して、Senior Vice President, Product Developmentを務めるCameron Purdy氏が登壇。

Senior Vice President, Product Developmentを務めるCameron Purdy氏
Senior Vice President, Product Developmentを務めるCameron Purdy氏

同氏は、

  • Java EE
  • HTML5
  • エンタープライズ

について、取り上げました。とくに、Java EEとHTML5、なかでもWebSocketsの有用性を紹介しました。Java EE 8に関しては、2014年第1Qにアーリードラフトレビューが発表され、2015年第3Qにパブリックレビュー、2016年第3Qにリリースが予定されているとのことです。

Java EEのロードマップ
Java EEのロードマップ

The Toy Showが戻ってきた!

次は、組み込みJavaの登場です。ここでは、技術解説だけではなく、実際に組み込みJavaを使用して開発された3種類のデモンストレーションが行われました。

MCを務めたのは、Java Technology Ambassadorでもあり、JavaOne Content Chairも務めるStephen Chin氏。

Java Technology Ambassador兼JavaOne Content Chairも務めるStephen Chin氏
Java Technology Ambassador兼JavaOne Content Chairも務めるStephen Chin氏

Stephen氏は、

  • LEGO Mindstorms
  • DukePad
  • Chess Robot

を実演付きで紹介しました。

LEGO Mindstorms

まず最初に登場したのはLEGO Mindstorms。LeJOSを搭載しLEGOでつくったDukeが、Javaを介した制御で壇上を駆けまわりました。

LEGOでできたDuke。LeJOSを搭載し、EV3のモータ、センサ、ジャイロスコープなどを制御。SSHログインでセグウェイアプリケーションをコントロールするデモが行われ、また、途中分解して、その仕組みを詳しく解説した
LEGOでできたDuke。LeJOSを搭載し、EV3のモータ、センサ、ジャイロスコープなどを制御。SSHログインでセグウェイアプリケーションをコントロールするデモが行われ、また、途中分解して、その仕組みを詳しく解説した LEGOでできたDuke。LeJOSを搭載し、EV3のモータ、センサ、ジャイロスコープなどを制御。SSHログインでセグウェイアプリケーションをコントロールするデモが行われ、また、途中分解して、その仕組みを詳しく解説した

DukePad

続いて、Raspberry PieでつくられたDukePadが紹介されました。JavaベースのOSで、JavaFXを利用したアプリケーションやゲームのデモが行われました。

DukePad。DIYのコンセプトで開発されているタブレットデバイス。OpenJFXのプロジェクトの1つとして開発が進んでいる。右は対戦型チェスゲームを実演している様子
DukePad。DIYのコンセプトで開発されているタブレットデバイス。OpenJFXのプロジェクトの1つとして開発が進んでいる。右は対戦型チェスゲームを実演している様子 DukePad。DIYのコンセプトで開発されているタブレットデバイス。OpenJFXのプロジェクトの1つとして開発が進んでいる。右は対戦型チェスゲームを実演している様子

Chess Robot

最後に登場したのが、組み込みJavaで制御されるアームを持つ、Chess Robot。なんと、このロボットは先ほどのDukePadで動いていた対戦型チェスゲームと連携しており、DukePad上で動かしたとおりに、ロボットが駒を動かすことができます。さらに、1つのアームで白・黒両陣営の操作が行えるといった、高機能なロボットになっています。

Chess Robot。DukePad上のアプリと連携し、ネットワークを介した操作ができる他、1つのアームで複数自由度を持たせている点が特徴となっている
Chess Robot。DukePad上のアプリと連携し、ネットワークを介した操作ができる他、1つのアームで複数自由度を持たせている点が特徴となっている Chess Robot。DukePad上のアプリと連携し、ネットワークを介した操作ができる他、1つのアームで複数自由度を持たせている点が特徴となっている

これら3つのデモを観終わった後、JavaOneのThe Toy Show(JavaOne最終日のキーノートでJavaの生みの親、James Gosling氏が行う、Java技術を利用したデモの展覧会。毎回盛り上がります)の雰囲気を感じ取った参加者は筆者だけではなかったはずです。

Javaを支えるコミュニティとエコシステム

キーノートのトリを務めたのは、Head of Technology EvangelismのSimon Ritter氏。Simon氏は「Javaの強さは、Java独自のコミュニティと、コミュニティから生まれるエコシステムである」という点を、シンプルに、そして力強くアピールしました。このコメントから、Javaは単に技術的に優れているだけではなく、開発者・利用者に向けた思想がしっかりしている点を強調したように感じました。

Simon氏は、Javaの強みはコミュニティである点を強く強調した
Simon氏は、Javaの強みはコミュニティである点を強く強調した
日本Javaユーザーグループ(JJUG)会長の鈴木雄介氏も登場した
日本Javaユーザーグループ(JJUG)会長の鈴木雄介氏も登場した

JavaOneの世界を思い出させる構成だったキーノート

以上、駆け足でしたが今年のJava Dayを紹介しました。先ほども述べたとおり、The Toy Showのようなデモンストレーションが行われるなど、かなり本家、そしてかつてのJavaOneを意識した構成だったように思います。

今年のJavaOneは、海の向こうサンフランシスコにて、9月28日~10月2日の期間で開催されます。Javaの現在・未来、そして、Java開発者との交流やコミュニティを肌で感じたい方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

今年のJavaOneは9月28日~10月2日、サンフランシスコにて開催
今年のJavaOneは9月28日~10月2日、サンフランシスコにて開催

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