レポート

テックカンパニーとして世界を目指し,テクノロジーで世界をEvolutionさせる――Mercari Tech Conf 2018開催

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機械学習という関数が生み出すもの

次に登場したのは,Mercari USのCTO,Mok Oh氏。名村氏のトークが,組織の観点から技術に迫ったのに対し,Oh氏のトークは,技術領域の,さらにコアの部分について,まるで大学講義のような内容で専門性の高いトークが繰り広げられました。

Mercari US CTO,Mok Oh氏

Mercari US CTO,Mok Oh氏

Oh氏のトークの中心はMercari USが取り組む⁠機械学習⁠について。Oh氏は⁠データと機械学習という関数で生み出されるもの⁠(Data×fML)という切り口で,今現在のMercari USの開発状況や,実際のデータ分析について解説を進めていきました。

メルカリでは,出品物間の相関であったり,ユーザ同士の相関,似たユーザの抽出を,機械学習をもとに予測しています。この⁠予測⁠という,インターネットエコノミーの分野において重要項目の1つについて「予測とは質問することである」とOh氏は定義しました。さらに,質問するための要素として,ビッグデータの活用,データサイエンスによる分析を行うわけです。

トークの最中,売れやすさと時間の相関関係やキャンセルの予測に関して,実際のMercari USのデータとともに説明し,さらに売りやすさを上げるためのアドバイスをメルカリから提案しているといった事例が紹介されました。

最後に改めて,Data×fMLの重要性と,メルカリではその技術を使って文化を醸成し,発見と交換を実現し続けていると強調し,締め括りました。

NEXT Mercari~Merpay&Mercari X

キーノートの最後は,2017年11月に設立されたばかりの株式会社メルペイ取締役CTOの曾川景介氏が登壇しました。メルペイは,メルカリの金融部門として

  • 信用を創造してなめらかな社会を創る
  • 新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る

をミッションに設立した子会社で,曾川氏は「お金がなくても使えるメルカリを作りたい」と,より具体的な目標を掲げ,トークをスタートしました。

株式会社メルペイ取締役CTO 曾川景介氏

株式会社メルペイ取締役CTO 曾川景介氏

曾川氏のトークで,何度も登場したのが⁠信用⁠という言葉。メルカリ経済圏において,信用≒貨幣として流通する一方で,⁠信用はとても抽象度の高い言葉」であるとし,どのように信用を創造するかがメルペイに求められていることと説明しました。現在,具体的な実現方法として,取引データを元にしたスコアリングの作成を挙げました。

曾川氏はもう1つのキーワードとして⁠価値交換⁠を取り上げました。二者間での価値の交換は困難な問題だとしながらも,⁠前述の)⁠信用⁠⁠価値交換⁠は非常に密接な関係にあり,それらを具現化するテクノロジーの1つとして,ブロックチェーンがあります」と,⁠信用⁠⁠価値交換⁠の解として,メルペイでは今,ブロックチェーンに取り組んでいるとのこと。

それが,現在,メルカリ内でのクローズドなプロジェクトとして取り組まれている「Mercari X」です。Mercari Xは同社内でのコンセプトモデルのため,ユーザ向けに公開されてはいませんが,信用創造,価値交換のためのプロトコルとして,開発が進められており,将来の実サービスに反映していきたいそうです。

Mercari Xとともに,もう1つこれからのプロダクトとしてメルペイが取り組む次世代決済インフラMerpayについても触れました。まだ具体的に公開できるものはないとしながらも,⁠少しでも早く皆さんに紹介できるよう開発を進めていきます」と,開発者サイドからのNEXTメルカリへの期待感を込めたコメントで,キーノートを終えました。

◆◆◆

以上,MTC2018からオープニングおよびキーノートの内容をご紹介しました。2017年のテーマである⁠NEXT⁠⁠,そのテーマを受ける形で今回設定された⁠Evolution⁠というテーマ。わずか1年ながらも,サービスとしてのメルカリ,企業としてのメルカリの進化の裏側を垣間見ることができました。

登場した4名のトークを聞く中で共通して筆者が感じたのが⁠テクノロジーの重要性⁠⁠,そして,⁠テクノロジーは人のために使うもの⁠というブレない理念です。ここで言う人とは,メルカリユーザでもあり,また,メルカリを開発するエンジニア,さらに,その関連テクノロジーに触れるすべての人を指します。

だからこそ,冒頭の濱田氏が述べていたように,メルカリはテックカンパニーを標榜し,目指し続けているのではないかと感じました。

最後に紹介されたMercar Xをはじめ,この先,既存のサービスの改善をはじめ,メルカリから生み出されるテクノロジーやプロダクト,文化に期待しましょう。

なお,キーノート後に,メルカリCTO名村氏,執行役員VP of Engineering是澤太志氏に別途インタビューする機会を得ました。その模様は後日お届けします。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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