書籍『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』の補講

第10回 アインシュタインの論文の原文に挑戦!物体の慣性はそのエネルギー量に関係するか? Ist die Trägheit eines Körpers von seinem Energieinhalt abhängig?

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読後感

「ピタゴラスの定理でわかる相対性理論」でも書いたのですが,アインシュタインはユークリッド幾何の論理展開に感銘していました。現在でも,多くの中学生や高校生の中に同じような感銘を受ける少年はいると思うのですが,アインシュタインの理解力というか吸収力は並外れたレベルではなかったかと思われます。それはユークリッドレベルだったかとさえ感じます。ユークリッド幾何は「当たり前」の公理から,当たり前とは思えない定理を導いていく凄さを教室で感じさせることができます。

マイケルソン-モーレイの実験から,アインシュタインが時間や距離に関して当たり前ではない結論を導いて6月論文を書き,その後も思考と計算に没頭してさまざまな理論的帰結を得ながら,当たり前ではない公理から驚くべき物理の法則を導いたのです。

この論文はきわめて短く,序論のようなものはほとんどありません。単刀直入です。しかし難解なのが定数Cに関係する論理です。本来なら丁寧に書きたいあるいは書くべきものがあったと思うのですが,省いています。その部分について彼の思考をどのように推察してよいのかわかりません。ここが詳しく記されていないのが残念というより悔しい思いがします。しかし幸い宇宙物理学者の林先生がなるほどいう解釈をなさっていました。

アインシュタインのこの論文の最後の1文は意味深長だと思います。

余談「質量とMasse」

Die Masse eines Körpers is ein Maß für dessen Energieinhalt. ⁠ある物体の質量は,その物体のエネルギー量の一つの尺度である。)

ßはスイスのドイツではssになります。ガウスとボヤイの文通の資料(ガウス書簡集:「ピタゴラスの定理でわかる相対性理論」の参考資料22)でもそうなっているので,MasseとMassの区別がうっかり判然としません。

Masseは女性名詞で質量(英語のmass)でありMaßは中性名詞で度量とか軽量で英語ではmeasureです。Einは英語のaにあたるのですが,日本語として一つのと強調すべきかどうか迷います。

これら2つの単語が語源を共通にするのかどうか,筆者にはわかりません。 ちなみに中国語の質量は,物理学では日本語と同じ意味ですが,通常は品質の意味に使われます。

参考資料1 マックスウェル方程式のローレンツ共変性

資料 マックスウェル方程式のローレンツ共変性