Ubuntu Weekly Topics

2013年1月11日号Ubuntu for phones、Full Circle #68、UWN #297と#298

2008年のお正月に開始したUbuntu Weekly Topcisも6年目に突入です。同じように毎週連載しているUbuntu Weekly Recipeや、Software Designで連載中のMonthly Reportともども、今後ともよろしくお願いいたします[1]⁠。

Ubuntu for phones

既にRecipeでもネタになっているように、スマートフォン向けUbuntu for phonesアナウンスされました[2]⁠。

「Ubuntu for phones」は、ARMもしくはx86のスマートフォン上で動作するOSとOSやアプリケーションの開発キット一式の総称となります。インターフェースはUnityをベースに、スマートフォンの画面サイズ向けにカスタマイズしたもののようです。Ubuntu for Phonesの主なソフトウェアはQt5+QMLとHTML5によるもので、アプリケーション募集中、というフェーズにあります。ただし、ユーザーランド部分はPC向けUbuntuを改変したものなので、既存のLinux用ソフトウェア資産をある程度動かせる可能性もゼロではありません[3]⁠。

Trailer動画

ただし現在はあくまでデモという形です。実際に製品が発表されたわけではありません。PC用のOSと異なり、スマートフォンの場合はどうしてもメーカーや各国の携帯電話事業者の協力がないと店頭に並ぶことはありません。

ただ、Ubuntu for Androidとは異なり2月後半にはGalaxy Nexus向けのイメージやソースコードが公開されるということなので、個人でも試せるようになる可能性はあります。実際に現在開催中の家電見本市であるInternatinal CESでデモが行われているように[4]⁠、Galaxy Nexus上で動作するイメージは存在しており、かなり軽快に動作するようです。

このUbuntu Phoneの登場で、一年と少し前にUbuntuプロジェクトの指導的立ち位置にいるマーク・シャトルワースが発表した「Ubuntu on phones, tablets, TV’s and smart screens everywhere」は、ようやく一通りの役者が揃った形になります[5]⁠。

動作環境

Ubuntu for phonesの事業者とOEM向けのページでは、必要環境が掲載されています。

スマートフォンスーパーフォン
プロセッサー1GHz Cortex A9クアッドコアA9 or Intel Atom
メモリー512MB - 1GB最低1GB
ストレージ4-8GB eMMC + SD最低32GB eMMC + SD
マルチタッチ必要必要

ここでいう「スーパーフォン」とは「Ubuntu for AndroidのUbuntu版[6]⁠」が動作するスマートフォンです。つまり通常はUbuntuスマートフォンとして使いつつ、適切なドックとケーブルとディスプレイとキーボードがあれば、PCレスでもフルデスクトップ版のUbuntuを使えるという仕組みです。

インターフェース

既存のUbuntuがスマートフォン上でどういうインターフェースに変わっているかは、CES会場で撮影された動画などを見るのが一番でしょう[7]⁠。

マーク・シャトルワース本人によるデモ

アプリケーションの起動は、通常のUnityと同じLauncherを使います。ただし自動的に隠れているために、画面左端からスワイプインして表示させます。複数のアプリケーションを起動している場合は、画面右端からスワイプインすると、Alt-Tabを押すようにアプリケーションを切り替えることができるのです。

「ホーム画面」はUnityのDashに相当する画面で、よく使うアプリケーションが表示されたり、左右にスワイプすることでVideoレンズなどに切り替えられます。

画面上部にステータスバーが表示されているのはデスクトップ版と同じですし、下方向にフリックすることで詳細が表示されるのはAndroidと同じ動作になります。Ubuntu for phones特有の動作としてフリック中に左右に移動すると、詳細表示する内容を切り替えられるようです。これはデスクトップ版におけるインジケーターを表示中に左右のカーソルキーを押したときの動作に相当します。

アプリケーションの開発

Google PlayやApp Storeに代表されるように、スマートフォンに新規参入するならアプリケーションストアの充実は欠かせません。Ubuntuの場合、ソフトウェアセンターから数多くのソフトウェアをインストールできるとはいえ、大半はデスクトップやコンソール向け。スマートフォンのような小さな画面では使い辛い、場合によっては使えないというのが実情です。そこでUbuntu for phonesでもアプリケーション開発者の取り込みとエコシステムの構築が肝要になってきます[8]⁠。

そんなわけで早速アプリケーション開発者向けの情報が公開されました。Ubuntu Phone向けのGUIツールキットはQt5が採用されていますので、スマートフォンに特化したアプリケーションを作るならQML/Qt5を使うのが一番簡単です。また、Web Appsもサポートしていますので、ウェブアプリを作るのであればHTML5/JavaScriptを使うのも良いでしょう。

QMLを使った開発を行うなら、Qt5のインストールから始めてQt用のIDEであるQt Creatorを使った開発方法まで言及されているチュートリアルが存在します。Ubuntu Phoneに限らずUbuntuでのQML開発者向けのリソースも参考になるでしょう。

HTML5/JavaScriptを使ってウェブアプリを開発したいなら、こちらのチュートリアルを参照してください。

いずれも作成したアプリケーションは、デスクトップ版のUbuntuでも動作を確認することができます。

今後の予定

2月後半には、開発者向けのUbuntu SDKが公開される予定になっています。その際に、Galaxy Nexus用イメージやソースコードも公開されるそうなので、その頃にはUbuntu Phone用のUnityを含めた具体的な形が見えてくるでしょう。

Full Circle Magazine #68

Ubuntuを中心にした月刊Webマガジン、Full Circle Magazineの68号がリリースされています。主な内容は次の通りです。

  • コマンド操作入門:と言いつつ今回はNASの紹介です
  • Python入門:Web APIの利用方法です
  • LibreOffice入門:Baseにおける入力フォームの作成
  • HowTo:eeePC 701に12.10をインストール
  • HowTo:Blenderの使い方の第一回
  • HowTo:Inkscape入門
  • HowTo:Web開発入門

UWN #297と#298

Ubuntu Weekly Newsletter #297#298がリリースされています。

その他のニュース

今週のセキュリティアップデート

usn-1680-1:CUPSのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-December/001947.html
  • Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
  • AnyWikiDrawとTWikiDrawアクション時に正しく入力チェックを行っていなかったために、ウェブサーバーの権限で任意のファイルを書き換えたり、任意のコードを実行できる問題がありました。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1681-1:Firefoxのセキュリティアップデート
usn-1681-2:Thunderbirdのセキュリティアップデート

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