Ubuntu Weekly Recipe

第260回 Nexus 7でUbuntuタブレット生活

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今年4月にリリースされるUbuntu 13.04の目玉の一つは,タブレットであるNexus 7の対応です。今年の新春特別企画では,Nexus 7のAndroid上にDebianをインストールする方法を取り上げましたが,今回は直接Ubuntuをインストールする方法を紹介します。

Nexus 7でUbuntuを使うメリット

Nexus 7は昨年Googleから発売された7インチ型のタブレットです。安価でそれなりのスペック,そして何よりAndroidタブレットのリファレンス機として最新バージョンのAndroidが搭載されていることもあって,2012年のヒット商品となりました。

Android端末としてのNexus 7については,Androidケータイの歩き方第92回からのシリーズが参考になります。また,Ubuntuとの連携はSoftware Design 2013年1月号のUbuntu Monthly Reportでも紹介していますし,前述のとおりRecipeの新春特別企画ではAndroid上にもう一つの環境としてDebianをインストールして使う方法を紹介しています。

今回はそれらの方法とは異なり「Nexus 7上のAndroidを削除して,Ubuntuをインストールする」方法を説明します。つまり既存のAndroidは使えなくなります注1)。

注1
あとからAndroidを再インストールすることで,購入直後の状態に戻すことはできます。なお,Androidとのデュアルブートや,内蔵フラッシュではなくUSBメモリーにUbuntuをインストールして使うような,Androidと共存する方法も存在します。

なぜわざわざUbuntuを使うの?

Androidではなく,あえてUbuntuを使う意味は何でしょうか。

まず,タブレットを省電力で長寿命なポータブルPCとして使えるということがあげられます。ノートPCに比べると画面サイズや性能に見劣りはするものの,それを補って余りある携帯性とバッテリーの持ち時間は魅力的です注2)。

さらにデスクトップで使用していたソフトウェアが「そのまま」利用できるのもメリットの一つです。単純に「ソフトウェア資産」と考えた場合,Androidのマーケットは十分に充実してきましたので,必ずしもUbuntuに優位性があるわけではありません。しかしLibreOfficeや各種エディタ,スクリプトやプログラムの実行環境として見た場合,Ubuntuのほうがはるかに自由度があります。母艦となるPCと同じソフトウェアを動かせるというのは,Androidにはない魅力でしょう。

Ubuntuの開発者の観点から見るとNexus 7のような,PCと比べて動作が遅くメモリーが少ない環境で「きちんと動く」ようにすることは,フットプリントの削減などの作業において格好のベンチマーク対象となります。事実,Nexus 7対応の過程で,いろいろなサービスのメモリー使用量の調査や削減策が実施されてきました。この恩恵は,デスクトップユーザーも次のリリースで享受できるのです。

と,がんばってそれらしい趣旨を列挙してみましたが,一番の動機は「興味本位」です。

注2
いわゆる「仰向けコンピューティング」の簡易版を実現できるデバイスでもあります。

Ubuntuできちんと動くの?

マルチタッチディスプレイやWiFiについては問題なく動くので,必要最低限の作業は可能です。それ以外のデバイスについては今のところ動作がまちまちです。

図1 実際のUbuntu on Nexus 7の画面

図1 実際のUbuntu on Nexus 7の画面

以下は,カーネルのバージョンが3.1.10-9-nexus7 #25,ubuntu-defaults-nexus7パッケージのバージョンが0.50の時点での状況です注3)。

注3
ubuntu-defaults-nexus7にはNexus 7用のスクリプトや設定が含まれています。カーネルがデバイスに対応したとしても,ubuntu-defaults-nexus7でそのデバイスを操作するスクリプトが入らないと認識されないこともあるので,こちらのバージョンや変更履歴も確認しておくと良いでしょう。
電源管理とバッテリー

サスペンドと復帰は問題なく行えます。たまにカーネルパニックするという報告もあがっていますが,あまり頻度は高くないようです。電源ボタンを押すと,自動的にサスペンドに移行します。画面が消えるまで3秒ぐらいかかっていますが,それほど問題にはならないでしょう。もう一度電源ボタンを押すと2,3秒で復帰します。

システム設定の「電源」で,バッテリー動作時の「次の時間アイドル状態が続けばサスペンドする」「サスペンドしない」から変更しておけば,放置してもディスプレイがオフになるだけでなく自動サスペンドにも移行します。

ただしロック画面では,まだソフトウェアキーボードでうまく入力できない問題があるため,システム設定の「Brightness & Lock」「ロックする」をオフのままにしておきましょう。

バッテリーの持ちもAndroidほどではないにしろ,悪くないようです。バッテリーステータスの値がたまにおかしくなる問題は先週解決しました。

図2 FirefoxでYouTubeのマークの演説を1時間再生し続けた状態。20%弱減っている

図2 FirefoxでYouTubeのマークの演説を1時間再生し続けた状態。20%弱減っている

サウンド

音は鳴ります。ただし一度サスペンドへの移行と復帰を行わないと音が鳴らないという問題はあります。

もちろん,ヘッドフォンジャックも動作しますし,ジャックに接続するとメインスピーカーはオフになる動作になっています。またサウンドの設定から,スピーカー,ヘッドフォン単位で独立にボリュームコントロールすることも可能です。

図3 接続単位のボリュームコントロール

図3 接続単位のボリュームコントロール

USB端子

Nexus 7には充電,データ通信用のMicro-BのUSB端子が存在します。これをPCのUSB端子に接続すれば自動的に充電状態になります注4)。

USBホストとして動作するため,USBキーボードなどの周辺機器をつなぐことも可能です。Micro-BオスとUSB Aメスの端子がついた変換ケーブルを用意しましょう。例えばLogicoolのUnifyingレシーバーをつなげることで,無線キーボードやマウスも使用できました。

ちなみに,Nexus 7にUbuntuをインストールした後は,PCとUSBケーブルをつなぐとPCからシリアルコンソールログインできます。例えば接続ソフトウェアとしてscreenを使うなら,PC側で次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install screen

$ sudo screen /dev/ttyACM0 115200

コンソールを閉じるのは,Ctrl-Aを入力したあとにKを押します。一般ユーザーでscreenを実行したいなら,あらかじめPC側でユーザーをdialoutグループに追加しておきましょう。

$ sudo gpasswd -a $USER dialout

グループに追加後,ログインしなおせば一般ユーザーで/dev/ttyACM0にアクセスできます。

注4
出力が1.5Aの場合はそれなりに充電できましたが,基本的に何もしていない状態にしておかないと供給力を上回り,バッテリーの電力を消費してしまうようです。
Bluetooth

Bluetoothも使用できます。例えばBluetoothキーボードをペアリングして使うぐらいであれば,特に問題なく動作しました。

加速度計と照度計

加速度計と照度計は動作しています。このため,タブレットを傾けると自動的に画面が回転します。ソフトウェアキーボードの位置もそれにあわせて調整されます。照度計が動いているので,周囲が暗いところでは画面も暗く,明るいところでは画面が明るくなります。

図4 横画面で使用した状態,今回はキーボードを常時表示しているが,隠すこともできる

図4 横画面で使用した状態,今回はキーボードを常時表示しているが,隠すこともできる

照度計については,システム設定による明るさ調整が機能しなくなるため,使用形態によっては切っておいたほうがいいかもしれません。動作を止めたい場合は次のコマンドを実行すると良いでしょう。

$ sudo stop luxd
カメラ,NFC,GPS

いずれも動作しません。作業は行われているようで,NFCとGPSはめどがたってきた雰囲気です。

ソフトウェア

カーネルはAndroid用のTegraカーネルをベースに,いくつかのUbuntuの修正を加えてビルドしています,このためデスクトップ版とはバージョンからして異なります。

その他のソフトウェアは,デスクトップとほぼ同じです。例えばLibreOfficeChromiumもデスクトップ版と同じものが使えます。ただしARM用のAdobeのFlashプラグインは存在しません。

図5 LibreOfficeを起動した画面,ただしウィジェットが反映されていない

図5 LibreOfficeを起動した画面,ただしウィジェットが反映されていない

インストールも同じくソフトウェアセンターから行えますが,ソフトウェアセンター自体が動作が重いアプリケーションなので,ARM版の場合は端末を開いてapt-getコマンドでインストールした方が楽かもしれません。

Ubuntu自体は開発版である13.04を使います。このためリリース版に比べて安定度に問題があり,アップデートによって起動しなくなる可能性もあることは覚えておいてください。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。

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