読むウェブ ~本とインタラクション

第15回 書籍をEPUBフォーマットの電子書籍にするプロセスを公開!(1)

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先月(6月11日),自著Webデザイン標準テキスト(技術評論社)が発売されました。これからWebデザインを学ぶ初心者を対象とした解説書です。この度,プロモーションの一環として,本書の一部がEPUBフォーマットの電子書籍として配布されることになりました。

今回と次回の2回に渡り,この書籍を電子化するプロセスを公開したいと思います。今回(第15回)はプランニングについて,次回(第16回)はオーサリングについて紹介します。

マッシュアップ可能な電子書籍の可能性

『Webデザイン標準テキスト』は,掲載されている図版に対してクリエイティブコモンズのライセンスを適用しており,非営利であれば図版を自由に複製・改変することができます。

図版データ(Adobe Illustrator形式)は,専用サイトからまとめてダウンロードできますので,たとえば,学校の先生が授業でこの書籍を教科書として使った場合,配布ドキュメントや授業用のテキストなどに図版データを使うことができます。

図1 図版にクリエイティブコモンズのライセンスを適用した書籍Webデザイン標準テキスト(2010年6月11日発売)

図1 図版にクリエイティブコモンズのライセンスを適用した書籍『Webデザイン標準テキスト』(2010年6月11日発売)

この分野の実用書は,マッシュアップ可能な電子書籍として提供しやすく,購入者にとっても利用価値の高い本になる可能性があります。今回発売されたのは,(紙の)書籍のみですが,「使う本」(ユーティリティブック)を意識して編集されています。

権利処理をクリアしなければいけませんが,理想はクリッピング,マッシュアップ可能で,ソーシャルネットワークとの連携機能を組み込んだコミュニティベースの電子書籍です。違法コピーは阻止しなければいけませんが,読者間のコミュニケーションが広がるような仕組みは重要だと思います。たとえばDRMフリーにすることで伝播を促進し,セールスにもつながるような,新しい発想が必要です。実用書の電子化で何が求められているのか,時間をかけてじっくり考えていきたいと思います。

図2 ソーシャルネットワーク機能を搭載した電子書籍「ユーティリティブック」は読者によって拡散していくコミュニティウェア

図2 ソーシャルネットワーク機能を搭載した電子書籍「ユーティリティブック」は読者によって拡散していくコミュニティウェア

図3 iPhone, iPadのリーダーアプリ「Stanza」には,アノテーション機能やソーシャルネットワーク対応の共有機能が搭載されている。画像はEPUB化した「Webデザイン標準テキスト」に注釈を付け加えて,共有機能を使用している画面

図3 iPhone, iPadのリーダーアプリ「Stanza」には,アノテーション機能やソーシャルネットワーク対応の共有機能が搭載されている。画像はEPUB化した「Webデザイン標準テキスト」に注釈を付け加えて,共有機能を使用している画面

電子書籍化のプロセス

マッシュアップ可能な電子書籍についてはいずれ特集したいと思っていますが,今回はiPhoneなどのスマートフォンやiPadなどのスレートデバイスで読める文字主体の電子書籍を作成する試みです。作成するのは一章分だけですから,商品として販売するのではなく,サンプル公開と書籍プロモーションを兼ねたプロジェクトです。

ただ,サンプルとはいえ,電子書籍にして配布するには計画が必要です。書籍をそのまま再現できるのか,再現が困難ならどのようなリ・デザインが必要か,そもそも書籍と同じものを電子化する意味はあるのか等,さまざまな視点で検討していきます。

書籍のページデザイン仕様とコンセプトを確認しておく

まず最初に確認しておかなければいけないのは,書籍の仕様です。スマートフォンやスレートデバイスで快適に読めるかどうかの検証を実行するときに,ページデザインなどの仕様を把握しておく必要があります。

『Webデザイン標準テキスト』のページフォーマットは見開き仕様になっており,左ページに見出しやポイント,本文(二段組),右ページに図版や用語などが配置されています。これが,すべての章の共通フォーマットです。

図4 見開きでワンテーマを解説するページ構成になっている

図4 見開きでワンテーマを解説するページ構成になっている

読者は,本文を読みながら,適度に図版を参照することができます。一節(ワンテーマ)を見開き仕様にしたのは,「一覧性」を確保するためです。版面設計で難しかったのは,ワンテーマ・ダブルページのスペースを使って簡潔にわかりやすくまとめることでした(担当のデザイナーさんがうまくレイアウトしてくれました)。各ページの情報量コントロールが,テーマの理解度に影響するため,もっとも時間がかかった作業になったと言ってよいでしょう。

電子書籍にする場合も,この仕様を可能な限り生かすことが大前提となります。

図5 本文を読みながら必要に応じて図版を参照できる「一覧性」を重視したページレイアウト

図5 本文を読みながら必要に応じて図版を参照できる「一覧性」を重視したページレイアウト

著者プロフィール

境祐司(さかいゆうじ)

インストラクショナル・デザイナー[Instructional Designer]として学校,企業の講座プラン,教育マネジメント,講演,書籍執筆などの活動をおこなう。2000年より情報デザイン関連のオンライン学習実証実験を始める。現在,教育デザイナー育成を目的としたフォーラムを立ち上げるため準備中。著書に「速習Webデザイン Flash CS4」(技術評論社),「Webデザイン&スタイルシート逆引き実践ガイドブック」(ソシム)などがある。

URLhttp://admn.air-nifty.com/monkeyish_studio/

著書

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