無関心な現場で始める業務改善

第8回 業務改善はスピードが全てか?―安易な解決策を作らないために

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前回は現場から少し視点を変えて,トップの腹くくりと改善の位置づけについて話をしましたが,予想外に反響が大きく,我々も業務改善に関する諸問題の根は,決して現場だけではなく企業活動全体の課題であると,再認識した次第です。

今回は,再度,場面を現場に戻して,原因分析について考えてみましょう。

急がば回れ!

第3回の図1 業務改善の流れを思い出してみましょう。

下記のように3つのステップがありました。今回は,⁠2nd. Phase:考える」を扱います。

  • 「1st. Phase:現状を知る」
  • 「2nd. Phase:考える」
  • 「3rd. Phase:変える」

「考えるプロセス」は,業務改善に早く着手したい,早く改善効果を出したいと思っていると,省略されたり,十分な時間が取られないこともあります。⁠1st. Phase:現状を知る」において,現状の業務プロセスが業務フローとして可視化できた段階で,⁠仕事の流れもわかったことだし,さぁ,これから改善に入ろう!」となりがちです。

スピードは大事だが省いてはいけない「考えること」

業務改善の重要な成功要因の1つにスピードがあります。

現状調査・分析にやたら時間がかかって,調査をしている間に事業や経営環境が変わってしまい,それに伴って業務プロセスもつぎはぎ状態に変更されて,ぐちゃぐちゃになってしまう場合も少なくありません。

かといって,早く現状調査を終えて,業務改善に向けた具体的行動を取りたいがあまり,よく原因分析を行わずに改善を実行すると,的外れなことをやらかしたり,必要のないシステムを導入してしまいます。結果,さっぱり効果が上がらずということもあります。

業務改善は環境変化が激しい現在において,もたもたしているわけにはいきません。着手は1日でも早いに越したことはありません。しかし,改善が必要な背景には問題があり,その問題を起こしている原因を取り除いてやらなければ,いつも火消状態のモグラ叩きとなります。

スピードは大事ですが,「考えること」は短縮できないプロセスです。それが,今回お話する「原因分析」です。

問題を見つけて即解決,にはならない

業務改善において,

  • 業務上の「問題を発見する」⁠⁠問題を解決する」

現実に,このような2つのステップで解決するほど,企業内の問題は単純ではありません。問題の解決策を見出すためには,問題を引き起こしている原因を突き止め,この原因をつぶすための対策を打ち出し,解決に臨むはずです。したがって,何が原因なのか?原因が見つかったら,どうやって解決するのかと,あれこれ考えるプロセスが必要となります。

たとえば,皆さんの会社の中で,⁠職場の問題を出してみよう」と上司に言われた場合に,どのような言い回しで問題が出てくるでしょうか?簡単な例で,月末の請求締めを見てみましょう。

  • Aさん:「締め作業ができません」
  • Bさん:「各部門からの請求データに未入力の部分があるから,締め作業ができません」
  • Cさん:「未入力がある請求データを受け付けないようにシステムを改修すれば,締め作業はできます」

Aさんは,⁠問題⁠のみを言っています。Bさんは,どうやら⁠原因⁠がわかっているようなので,⁠問題⁠⁠原因⁠を同時に言っています。Cさんは,具体的な解決策までイメージできているようなので,⁠解決策⁠まで言っています。

この段階で,上司が,⁠じゃあ,Cさん。早速,システム改修に取り掛かってくれ」と言うのも早すぎるでしょうし,⁠解決策がわかっているなら,サッサとやれ!」と言われたら,⁠言わなきゃよかった」となるかもしれません。

ここで考えたいのは,⁠問題は何か?」ということです。問題は締め作業ができないということでしょうか。締め作業ができない結果,どのような困ったことが起きるのかまで考えると,締め作業ができないことは,もしかするとまだ⁠原因⁠の1つかもしれません。

もしCさんが不在で,AさんとBさんだけの話だけで,上司が「では,どうしたらいいんだい?」と聞いたら,このように答えるかもしれません。

  • Aさん:「各部門の責任者から担当者に注意をしてもらいます」
  • Bさん:「未入力をなくします」

これを聞いた上司が,じゃあ,⁠早速それで問題解決をしてくれ」となったら,それは軽薄な上司でしょう。では,Aさんに対しては「注意だけで直るの?」⁠Bさんに対しては「どうやってやるの?」と突っ込んでいたらどうなるでしょうか?

問題の解決策が変わってきませんか?問いと答えの繰り返しによっては,Cさんと同じような解決策が出てくるかもしれません。

安易な解決策を作らないために

我々は以前,あるメーカーの電話受注業務を受託しているコールセンターから,⁠毎回,同じミスが発生し,どうやっても直らない」と責任者の方から相談をもらったことがあります。

このような受託業務でセンターを運用しているベンダーは,ミスが多発すると,メーカーのほうから契約を解除されたり更新を打ち切られたりすることも珍しくありません。当然,大勢いる電話のオペレータのうち,正社員はまだ配置転換できるものの,パートやアルバイトはほとんど解雇です。派遣であれば打切りとなります。ベンダーとしては死活問題であり,オペレータも職を失います。

我々が責任者から「ミスを起こした場合,再発防止策として何をしているんですか?」と聞いたところ,⁠ミスをしたオペレータから始末書を取ります。再発防止として,オペレータ教育を徹底させます。これらを業務改善報告として顛末書と一緒にメーカーに提出します」とのことでした。本人の始末書と教育だけで,解決できると考えているこの責任者にはあきれましたが,意外とこのような「本人に言って聞かせます」という安易な解決策は,あちこちで見られます。

たとえば,いつもミスを犯す人が同じなら,その人の資質や仕事に対する姿勢の問題かもしれません。この場合は,言って聞かせても,効果がないのは目に見えています。同一プロセスでほかの人も同じミスを犯すのなら,原因は人に起因するものではなく,何かプロセスや仕組み的な問題があるのではないかと疑います。

このように書くと,⁠そんなの当たり前じゃん」と思う皆さんも多いでしょうが,最近は残念ながらこのように「何も考えていない人」が増えてきています。要は問題を問題として認識できず,問題を掘下げたり,切り分けたりすることも苦手。できれば自分は関わりたくない……そう,本連載が対象としている無関心状態な現場では,どうせ「言ってもムダ」なので,表面上のその場しのぎの安易な解決策を打ち出します。そして,これがほとんど解決策にならないまま,業務改善に着手してしまうので,同じ失敗を延々と繰り返してしまいます。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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